第六話 一軍争奪戦
ニュースキャスター「さぁ、それではスポーツのコーナーです。まずは野球。昨日はドラフト会議でした。その時、柳田監督に奇跡が起きました。なんと六球団の競合で福浦選手の交渉権を獲得しました!一刻も早くイーグルスに馴染んでほしいですね~。」
十二月十三日、今日は入団会見の日だ。
始めて楽天のユニフォームに袖を通す。
ゲンのユニフォームの後ろに FUKUURA と刺繍された。
与えられた背番号は2。球団の期待も大きい。
記者「柳田監督に質問です。福浦選手は将来どのような選手になると思いますか?」
柳田監督「そうですね、将来的には打てて守れる正捕手になってほしいとおもいます。」
ゲンの二つ左の席はドラフト三位で指名された一塁手の森崎剛大だ。
会見後、森崎がゲンに話しかけてきた。
森崎「おい、俺プロの世界で活躍できると思うか?」
ゲン「なに心配してんだよ、自信を持っていけば何にも怖くねえよ。」
森崎「でもな…。」
ゲン「うん?なんか悩みがあるのか?」
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ゲン「なるほど...。わかった。それは引退した後に決めよう。」
明日は春季キャンプだ。
東北楽天ゴールデンイーグルスはアメリカのセントルイスでキャンプを行う。
メジャーのチームではセントルイス・カージナルスが拠点としている。
カージナルスの主力選手は、キューバの英雄ヤディエル・モリ―ナや、切り込み隊長のマット・カーペンター、元巨人のマイルズ・マイコラスといった選手がいる。
カージナルスは1926・1931・1934・1942・1944・1946・1964・1967・1982・2006・2011と十一回ワールドシリーズを制覇している。
セントルイスは夏は蒸し暑く、冬は非常に寒いため、寒暖の差が激
しい。
しかし選手たちは2019年シーズンの優勝のため、必死に耐えた。
そして三月上旬に仙台に戻り、本拠地のオープン戦が始まった。
オープン戦の第一試合は楽天生命パークで巨人との対戦だ。
この日、柳田監督はゲンをベンチに入れた。
試合は進み、八回、二点ビハインドの裏の攻撃。
満塁のチャンスでゲンが代打で送られた。
「バッター 嶋に代わりまして 福浦。」
そのアナウンスがコールされたとき、球場の雰囲気がガラリと変わった。
「ゲーン!ゲーン!ゲーン!ゲーン!」
球場はゲンコールでいっぱいだった。
巨人の菅野が投げた初球だった。
「バキ――――――――――――――――――――ン。」
それは木製バットで打った初めての感触だった。
そして打球はレフトポール際へと向かっていく。
しかし惜しくもファールになった。
3-1からの五球目だった。
「バシー―――――――――ン。」
打球はレフトのライン際でフェアになった。
ランナーは二人帰ってホームインとなった。
そして試合後柳田監督に呼び出された。
柳田監督「ゲン、お前をオープン戦に出し続ける。しっかり結果を残して来いよ。」
ゲン「はい、わかりました。」
ゲンはその後もオープン戦に出続け、全六試合に出場した。
六試合の成績は打率5.62 本塁打2 打点8という驚異的な成績を挙げた。
そして3月25日。今日は監督から開幕一軍のメンバーが発表される。
「はい、それでは開幕一軍メンバーを発表します。
則本、岸、美馬、塩見、安樂、松井裕、ハーマン、栄、高梨、菅原、戸村、嶋、伊志嶺、福浦、銀次、今江、藤田、茂木、三好、渡辺直、内田、ウィーラー、田中和、聖澤、島内、オコエ、以上。」