番外編 ドラフト
夏の甲子園が終わってから四カ月が経った。
ゲンの世代のドラフト会議が始まった。
メディアは高校を始め、大学、社会人の中でスター候補の選手を手探りしていたが、高校の中でスター候補をスカウトは二人挙げた。
一人目は森。
最速152キロの剛速球と110キロのチェンジアップで緩急を付け、打者を翻弄する。
さらに、代名詞と呼ばれる魔球「ひびきカーブ」は、切れ味鋭く武器である。
そしてスカウトの前では防御率0.92と安定している。
二人目はゲン。
強肩強打の捕手であり、捕手の高校通算ホームラン記録を塗り替えた。
リードにも優れており、ゲンが捕手をした試合は平均三失点。
プロ野球の全十二球団が注目している。
そしてドラフト会議の開始まであと三十分となった。
ゲンは校長先生の隣でドラフトの中継を見ることになる。
そして始まった。
「これより、ドラフト会議を始めます。司会は私加藤で進行致します。それでは各球団の入場です。」
(中略)
「全球団が揃いましたので、一巡目の落札を行います。」
ゲンの心臓はまだバクバクと鳴っていた。
「第一巡選択希望選手 東北楽天………福浦 源太 捕手 六面大学附属高校。」
なんといきなりゲンが指名された!
しかし、ゲンは記者団の前なので感情を抑えた。
「第一巡選択希望選手 東京ヤクルト………森 響 投手 大江戸工業高校。」
ゲンの盟友でもある森も選ばれた。
さあ、ゲンと森は何球団指名されるのか。
「第一巡選択希望選手 千葉ロッテ………森 響 投手 大江戸工業高校。」
「第一巡選択希望選手 中日………森 響 投手 大江戸工業高校。」
なんと森が早くも三球団目になった。
しかしゲンはおかしいと思った。
実はドラゴンズはゲンがケガをしていた時、ドラゴンズのスカウトが一番最初にゲンに目を付けた。
だから、ゲンはドラゴンズの指名は間違いないと思った。
不思議に思いながらもドラフト会議を視聴していく。
「第一巡選択希望選手 オリックス………福浦 源太 捕手 六面大学附属高校。」
やっとゲンに二球団目の指名が来た。
心の中でほっとした。
そしてその後
「第一巡選択希望選手 横浜DeNA………福浦 源太 捕手 六面大学附属高校。」
「第一巡選択希望選手 北海道日本ハム………福浦 源太 捕手 六面大学附属高校。」
「第一巡選択希望選手 阪神………福浦 源太 捕手 六面大学附属高校。」
「第一巡選択希望選手 福岡ソフトバンク………森 響 投手 大江戸工業高校。」
「第一巡選択希望選手 読売巨人………森 響 投手 大江戸工業高校。」
となり、今のところ森が五球団、ゲンが五球団と、ゲンと森しか指名されていない前代未聞の展開。
ゲンも森も共に緊張をしていることだろう…。
そして優勝球団の指名。
「第一巡選択希望選手 埼玉西武………森 響 投手 大江戸工業高校。」
先に指名されたのは森だった。
ゲンは最後の一つに懸けた。
「第一巡選択希望選手 広島東洋………福浦 源太 捕手 六面大学附属高校。」
よし!
ゲンは心の中でまた一つ喜びを感じた。
結果、ゲンは六球団、森が六球団と、ドラフト開始以降初の出来事が起きた。
そして抽選が始まった。
まずは森だ。
「東京ヤクルト、千葉ロッテ、中日、福岡ソフトバンク、読売巨人、埼玉西武は前に出て来てください。
(中略)
それでは札をお取りください。」
ゲンは静かな顔で見守っていた。
森と同じリーグにいれば、対戦ができる。
「それでは札を開けてください。」
手が挙がったのは……………千葉ロッテだった!
ロッテの監督は両手を挙げて喜んだ。
ロッテの優勝は間違いないと言うようにオーナーと手を組んで喜んだ。
そしてお待ちかねのゲンの抽選だ。
日本中が見ている。
ちなみにこのドラフト会議の最高視聴率は四十%超に達した。
「東北楽天、オリックス、横浜DeNA、北海道日本ハム、阪神、広島東洋は前に出て来てください。
(中略)
それでは札をお取りください。」
ついに来る…運命の瞬間が…。
ドクン、ドクン。
「それでは札を開けてください。」
「阪神当てろー――――!」
「らくて――――ん!」
「横浜に来て――――――!」
「お願い、お願い!」
実況「さあ、この運命の瞬間、どの球団が交渉権を手に入れるのか!札を開けた!どの球団が交渉権を獲得するのか!
手を挙げたのは……………楽天だ――――――――――――――――。」
やった―――――――――――――――。
ゲンの交渉権は楽天が獲得した。
オーナーは両手を挙げて喜んだ。
ゲンは冷静でいた。
しかし、ゲンは思い返してみた。
「楽天の監督って誰だっけ……………………….はっ!」