第十四話 熾烈なクライマックスシリーズ
今シーズンの成績は、打率2.83本塁打23打点75というルーキーとは思えない成績を残した。
ちなみに盗塁阻止率は巨人の小林のを抑え、4.63で十二球団トップの数字を出した。
そしてポストシーズンが始まった。
セリーグは広島が優勝し、二位にDeNA、三位に巨人でDeNAがファーストステージを突破した。
パリーグは二位が日本ハム、三位にロッテで日本ハムがファーストステージを突破した。
さぁ、クライマックスファイナルステージが始まった。
我らが楽天は日本ハムと対戦する。
日本ハムはロッテを下し、ファーストステージを突破した。
固い先発投手陣で楽天を倒すつもりだ。
楽天は最強投手、カーショーを中心に則本、岸の三本柱で戦った。
そしてクライマックスステージが開幕した。
楽天は第一戦に則本を投入した。
「プレイボール!」
球審が大声をあげた。
則本は一回の表にいきなり日本ハム打線に捕まってしまう。
西川、大田、近藤と連打を浴び、あっさり失点してしまう。
なおも無死一三塁だったが、四番の中田を見逃し三振、五番の清宮を併殺に打ち取り、一失点に済んだ。
イーグルス打線は日本ハム先発のイエラのクロスファイアーに苦戦し、五回まで無得点。
ゲンも2三振だった。
六回の裏にようやく爆発する。
死球と長打が相次ぎ逆転。
八回にはゲンの満塁ホームランで加点し、最終的に十三対一で大勝した。
アドバンテージを含め二勝0敗と、楽天がクライマックスファイナルステージを有利に進めていた。
試合の後、球場から出て寮に戻った。
野村克也さんの本を読んでいたら、寮監の人が入ってきた。
寮監「福浦選手、ロッテの森選手が呼んでいます。」
ゲン「あ、はい。わかりました。」
すぐに寮を出て、森と会った。
ゲン「おう、森。なんか用か?」
森「おう、ゲン。久しぶりだな。今日は銭湯でも行かないか?」
ゲン「いいぜ。」
二人は近くの銭湯に行った後、寿司店で食事をした。
寮へ帰る道の途中、松井裕樹に会った。
ゲン「あっ、松井さん。こんにちは!」
松井「おう、あまりここら辺に近づかない方がいいぞ、ヤクザがいるからな。俺もすぐにここを離れるつもりだ。早く寮に戻った方がいいぞ。早く逃げないとヤクザが追いかけてくるぞ!」
ゲン「わかりました。」
ゲンは怖かったので駆け足で寮へと帰った。
ゲン「あー、怖かったー。あれ…松井さんがいない…。」
そしてクライマックスファイナルステージの第二戦であったが、この試合から楽天は勢いを落とすことになる。
第二戦は先発カーショーが七回まで無失点に抑えるも、八回の投球の際、打球がカーショーの足に直撃し降板となった。
大事には至らなかったものの、延長の末に敗れた。
第三戦は岸が登板するも、日本ハム打線に配球を読まれ、二対七で敗れる。
第四戦は美馬が登板し、日本ハム打線を完璧に抑え、完封勝利になった。
第五戦は安樂が先発するも、中田に二本のホームランを打たれ、打線もイエラの前に完封負けを喫した。
そして運命の第六戦。
両チームともにクライマックスステージの突破に王手をかけていた。
楽天はカーショー、日本ハムは上沢と、先発の柱を投入した。
カーショーはシーズン途中入団だったものの、七先発六勝0敗の成績。
素晴らしい成績であった。
試合が始まった。
楽天の先発はクレイトン・カーショー、序盤から武器であるカーブで三振の山を築き、二回まで無失点であった。
三回に松本にヒットを許すも、ゲンが盗塁を阻止。
後続も抑え、三人で終わらせた。
打線は上沢のフォークに悪戦苦闘し、六回まで無安打に抑え込まれる。
しかし七回、ピッチャーが鍵谷に代わるとウィーラーが力強いストレートに力負けせず、バックスクリーンにホームランを叩きこんで、ついに均衡を破った。
投手陣は六回までカーショーが投げ、宋、ハーマンと繋げた。
九回はクライマックスシリーズ初登板の松井裕樹が守護神として登板した。
今シーズンは四十三セーブを挙げている。
セーブ失敗は二回のみだった。
松井裕樹が投球練習を始める。
ここでゲンは一つ気付いたことがある。
「あれ…松井さんなんか変だな…。」
ゲンが見るには、松井は毎回投球する際に右手で左腕を抑えている。
そして九回の表が始まった。
先頭は大田。
その初球のストレートだった。
「パカ――――――ン。」
150キロ近いボールが大田の腰に直撃し、デットボールになった。
大田は一塁に歩いていくが、松井は左肩をおさえていた。
コーチとトレーナーが駆け寄った。
球場の空気は一変した。
観客は騒然となった。
結局、松井は降板となった。
その後、戸村が緊急登板となった。
しかし、いきなりの緊急登板で、ブルペンではあまり投球練習ができなかった。
三番の近藤の打席。
投球前に一塁へ牽制をした。
しかし、そのボールは大きく逸れてしまった。
ランナーは三塁まで進んでしまった。
ゲンはマウンドへ向かった。
ファイターズファンの熱気が上がる中、戸村は近藤と相対する。
そして近藤との勝負が続き、七球目だった。
「カコ―――――――――――ン。」
引っかかったボールは無常にもライトスタンドへ伸びていく。
ライトスタンドからの歓声とスタンドからの悲鳴が球場を包みこんでいた。
実況「さぁ、高々と上がった…この打球はスタンドか…いや、取っていた!!!!!」
岡島が超ファインプレーでチームの危機を救った。
ライトに上がった打球を岡島がフェンスをよじ登って取った。
まさに神の手…いや、スパイダーマンと言っても良かろう。
三塁ランナーは帰ってきてしまって、同点になってしまったが、戸村は力を振り絞り、残りの打者を抑えた。
さぁ、九回の裏だ。
ここで得点すれば日本シリーズ進出が決定する。
日本ハムはサウスポーの宮西を投入した。
先頭バッターは銀次。
その先頭の銀次は13球粘り、ヒットで出塁した。
球場の雰囲気が一気に変わった。
そしてその球場はある男の登場を待っていた。
そう、待っていたのは…福浦源太だ。
この男は誰よりも強いパワーを持ち、誰よりも影響力がある。
ピッチャーがセットポジションに入った。
そしてサイドスローからその球を抛った。
「カコ―――――――――――――――――――ン。」
弾丸ライナーでボールは左中間へと伸びている。
やがてそのボールはレフトとセンターの間に落ちた。
そして銀次が走る。
二塁を蹴った…三塁も蹴った…そして銀次はホームベースを踏んだ。
サヨナラだ。
ゲンはチームメイトから手荒い祝福を受けた。
日本ハムベンチはがっかりだった。
楽天は五年ぶりの日本シリーズ進出を成し遂げた。
そしてゲンがクライマックスシリーズMVPに選ばれたので、ヒーローインタビューが始まった。
インタビュアー「放送席、テレビ、ラジオの前のイーグルスファンの皆さん、ヒーローインタビューです。今日はサヨナラタイムリーで日本シリーズ進出に貢献しました、福浦選手です。福浦選手、ナイスバッティングでした。」
ゲン「ありがとうございます。」
インタビュアー「九回の裏、ノーアウトランナー1塁で打席が回ってきたときどんな心境でバッターボックスに入りましたか?」
ゲン「まぁそうですね、銀次さんが…ウウゥワ――――!!!!!」
ゲンの顔面にウィーラーがパイ投げをした。
インタビュアー「今、パイ投げをされて、どんな気持ちですか?」
ゲン「最高でーす。」
インタビュアー「さぁ、これから日本シリーズが始まりますが、ファンの皆さんへ意気込みをお願いします。」
ゲン「これからの日本シリーズはさらに熾烈な戦いが始まりますが、僕たちも頑張るのでファンの皆さん、応援よろしくお願いします。」
インタビュアー「ありがとうございました。クライマックスシリーズMVPは福浦選手でした。」
果たして楽天は日本一の栄冠をつかみ取ることはできるのだろうか。