第一話 幼い日
お母さんがやって来た。
「まだ素振りしてるの?どうせプロ野球選手になれないんだから」
お父さんが言った。
「ゲンにいっぱい野球やらせたらプロ野球になれるだろう」
お母さんは一つため息を吐いた。
8月30日、 大分県大分市に産まれた福浦源太。
幼い頃から父に野球を教えられた。
父は元プロ野球の育成選手だったが3年目で戦力外になり、今は大工に就職している。
ゲンは野球への熱意は人一倍強かった。2歳ながら幼稚園に行かず
毎朝素振りを二百回していた。
小学校に入学した。
一年生のゲンは早速地元の強豪少年野球チームに入った。
そこには怖い怖い吉岡監督がいた。
ゲンは保護者同伴の入団懇談で吉岡監督に質問された。
「毎日何回素振りをしているのかな?」
ゲンは答えた。
「200回位だよ」
吉岡監督は言った。
「う~ん、たりないね。
うちでは一年生が600回、二年生が650回、三、四年生が800回、
五、六年生が1000回だね」
「ギクッ」
お母さんとゲンは額に汗をかいた
「じゃあ源太くん、これで入団決定ね」
「は、はい。よ、よろしくお願いします」
明くる日、ゲンは朝6時に市立の練習場に行った。
しかし、もうそこには30人40人ほどの小学生が汗を流してランニングしていた。
そして吉岡監督に会い、挨拶しに、行った。
「今日1日よろしくお願いします」
吉岡監督
「よし、気合いがあるならランニング30周してこい!」
ゲン
「はい!」
その道は過酷だった。一周で二百メートルもあり、おまけに山が5つある。
ゲンは息が続かなかった。
その後、ノック、ウェイトトレーニング、素振り、インターバル走などをして最終的に8時に朝練は終わった。
「はい集合!、よし、これで朝練を終わる。その前にみんな気になっただろう、今日から一年生が入る。じゃあ源太!自己紹介!」
「え...あ..はい!えーと今日からチームに入ります福浦源太です。えーとよろしくお願いします!」
「よし、これで朝練を終わる。気をつけ、なおれ、気をつけ。はい終わります」
「ありがとうございました」
その時、見たことがあるゲンと同じくらいの人がいた。
その人に話し掛けてみた。なんとその人は自分と同じ学校で同じ一年生だった、森だった。森はゲンのことを知らない。仲良くして行けそうだった。
このような練習が続いて2年がたった。
ゲンは体が大きくなり、初めてベンチ入りを果たした。
ポジションはキャッチャーだった。
夏の大会一回戦
近くの弱小チームと試合をした。
結果8-2で快勝。
夏の大会二回戦はまさかの全国トップクラスの強豪チーム。
エースが踏ん張れず3-4で惜敗。
四年の大会も勝てず、
五年も大会に勝てず、いつしか中堅チームと言われるようになってしまった。
そして六年の夏の大会直前、吉岡監督は選手を集めてミーティングをした。吉岡監督の口から衝撃的な言葉が出た
「今年も一回戦で負けたら私は強制的に解雇され、このチームは消えてしまいます。」
「ぅう!?」
「なので、最後だと思って試合をしましょう」
「そんなぁー」
「それではスタメンを発表する。一番ショート田中、二番ライト坂内、三番セカンド安倍、四番ピッチャー高木、五番キャッチャー福浦、六番サード森、七番ファースト佐藤、八番レフト三輪、九番センター近」
一回の表攻撃 ランナー二死三塁一塁、ゲンに打席が回ってきた。
3-2からの9球目を捉えてツーベース。ランナー二人帰って来て二点先制。
四回の表、高木がソロランニングホームラン。
六回の裏 エース高木が走者一掃のタイムリーを浴びて同点。
八回の裏 高木が押し出しフォアボールをあたえ、勝ち越し。
そして九回の表 相手ピッチャーは四回の高木のランニングホームランを最後にして四回以降一本もヒットを許さなかった。
先頭の近がセーフティーバントで出塁した。
田中が送りバントを決め、ランナー二塁。
そしてバッターは坂内。この時、予想外のことが起きた。
相手エースが投げた速球ボールが坂内の顔面に直撃した。
坂内は倒れてしまった。下から見ると鼻血が出ていた。
その後、坂内に代走が送られた。ランナー一塁二塁。
三番安倍が内角の厳しい球に見逃し三振。
ツーアウトと、この少年野球チームは追い込まれた。
バッター高木。今日ランニングホームランを打っている。
しかし、相手バッテリーは高木を怖がり、敬遠する。
そしてバッターは...ゲンちゃん。
ここで倒れるとこの少年野球チームはなくなってしまう。
その責任が、自分を邪魔する。心拍数は0.3秒くらいだろう。
その第一球。...外角きわどい球ボール
第二球...フォーク空振り
第三球...チェンジアップギリギリボール
バッティングカウントの四球目だった。
スライダーが曲がりきらず真ん中に入ってきた。
僕は(これだ)と思った。
(カキーーーーーン)
気持ちのいい音とともに打球はレフトへ伸びていく
レフトはどんどん下がっていく。ピッチャーの顔は真っ青。
監督、ベンチメンバーが見つめるさきは...
レフトがフェンス手前でこちらを向いてとった...アウト
試合終了 三対四で負けた
ゲンの少年野球チームの最後の夏が終わってしまった。
次は中学校で取り返すとゲンは誓った