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今日も生徒会室は騒がしい 2

 「何かおもしれぇ事ねぇかな」

 「立花、あのヤンデレ見てたら楽しいんじゃね」

 「いやー、風霧さ。あの二人昔から知ってるから俺すっかりなれてんの」

 生徒会室のソファによっかかりながら俺はそういう。

 こむぎと時弥の事は見ていたら面白いとは思うけれど、俺はすっかり慣れてしまっている。

 子供の頃からずっと知っている。

 そういえばこむぎの兄も中々面白い性格してるよなぁと思いだす。

 退屈な日常は嫌い。

 でも、自分が何かを起こすより誰かを傍観するほうが、俺は好きだ。

 当事者として何かを起こすのもきっと楽しいだろうけれども、それでも傍観するのが好きだ。

 徹底的に傍観するだけってのも一種の娯楽。

 あの、転入生が来た時は本当に楽しかった。

 「あれをなれてる時点でお前ってずれてる」

 「あ? わりぃかよ?」

 「いや、面白いけど。そういえば、元ヤン時代からだったよなぁ…」

 「お前も相変わらず昔から変わってねぇよ、本当えげつねぇ情報屋」

 そういいながら、俺は風霧の方を見た。

 本当、情報屋の頃の風霧は容赦がなかった。今も結構容赦ないしSっ気抜群だけど。

 ここまで容赦のない男はそうはいないと思う。

 「ほんとほんと、あの頃の風霧って敵に回したくねぇと思った!今もだけど」

 「俺は、立花を敵に回したくねぇなぁ。変に人脈あるし」

 夜と西園寺がそういって会話に加わってくる。

 ちなみに生徒会室には他に刃しかいない。

 生徒会の仕事をしながらブツブツブと「類人、類人、類人……」と呟いている。

 ヤンデレって、よく考えれば周りに三人もいるんだよな。

 こむぎに、時弥に、刃。

 んー、ヤンデレにインパクトがもはやない。

 そりゃあ、面白いけど、なれてるからな。新しいおもしれぇ事ねぇかなぁ。

 「あ、俺さなぎさん達も敵回したくない」

 「さなぎって…?」

 「あれ、西園寺ってあった事ないっけ。俺と立花が所属してた族の総長だよ。ちなみにこむぎの兄ちゃん」

 西園寺と夜がそうして、会話を交わす。

 俺と夜は昔、ある暴走族に所属していた。

 その暴走族の総長っていうのが、こむぎの実の兄であるさなぎ君だ。そして、副総長が俺の従兄である橘麻耶。

 二人とも此処と同じような全寮制の男子校に通ってるんだけど、それが滅茶苦茶強いわけ。

 正直あまり敵に回したいとは思わない。

 「あのヤンデレカップルの片割れか」

 「そうそう。こむぎの兄だけあって、中々面白い人だよ」

 風霧の言葉に俺は笑いながら頷く。

 さなぎ君も、麻耶君も面白い。

 それにしても、さなぎ君とこむぎって両親はかなりの美形なのに二人して割と平凡な顔をしているんだよなと思う。

 こむぎなんてまんま平凡顔だし。さなぎ君はまだ美形よりの平凡と言えるけれども。

 「結局、あの田中こむぎって何者なんだ? 立花の昔からの付き合いだっていうし、ぜってぇ、普通の家じゃねぇだろ?」

 ソファによかかっている俺に、近くに立っている西園寺が問いかける。

 こむぎが暴れてる所とか、時弥とのヤンデレ風景とか色々みたし、俺が家同士の付き合いっていったからそう思ったんだろう。

 まぁ、実際こむぎは普通ではない。

 こむぎは隠しているけれど、こいつらが言わなきゃ問題がないだろうし、って思いながら俺は口を開く。

 ちなみに夜はさなぎ君の弟がこむぎって最近まで知らなかったんだけどな。こむぎと面識はなかったし。

 とはいってもさなぎ君が華院家の跡取りっては知っているからこむぎの家の事夜は知ったんだけど。

 「まぁ、いいか。西園寺と風霧、周りに言うなよ?」

 「別にいわねぇけど…」

 「ああ」

 二人が頷いたのを確認して、俺は笑って告げる。

 「こむぎは、あの華院家の次男だ。

 だから、俺の所と同等の権力を持ってるよ」

 「は?」

 「華院って、あの…?」

 「そう、この学園で華院なんて使ったら目立つだろ? アイツ目立つ事嫌がったから隠してたんだよ。

 で、時弥とは家の関係で出会ってからアイツらずっとあんな感じなんだよなぁ…」

 本当に、時弥に出会った後のこむぎには驚いたものだった。

 こむぎは昔から人に執着しない人間だった。

 そんなこむぎがあんなにも時弥に執着しているのだ。

 面白い以外何とも言えない。

 そうやって、時弥とこむぎについての話題を話していれば、勢いよくバンッと生徒会室の扉が開いた。

 「…ちょっとかくまってくれ!!」

 そういって入ってきたのは友人のあの腐男子――三木俊彦ミキトシヒコだった。

 息を荒くしてこいつはどうしただろうと、隊長の事で頭がいっぱいになっている刃以外の俺たちは怪訝そうな瞳を俊彦に向ける。

 「お前、どうしたんだ?」

 「駄犬が最近わけわかんないんだよー!!」

 風霧の問いかけに、俊彦は叫んだ。

 駄犬とは、『狂犬』――昌哉の事だろう。

 アイツがどうしたんだろう、と思いながら俺は何かが起こっている予感に笑った。

 「昌哉がどうかしたか?」

 「ど、どうかって…、てゆーか何でそんなに面白そうに笑ってんの!!」

 「超、面白そうじゃねぇか」

 「くっ、立花なんて立花なんて彼氏とのイチャイチャを俺に見せてくれればそれいいんだ!」

 「意味わかんないから」

 本当に腐男子っていう人種は面白いと思う。意味がわからなすぎる。大体俺が彼氏とのイチャイチャを見せても、お前の問題は解決しないだろといってやりたい。

 「で、結局どうしたんだよ」

 夜が、何だか叫んでる俊彦を宥めて、呆れたように問いかける。

 「そうなんだよ! 最近駄犬の様子が変なんだ。

 な、何かスキンシップが激しいっていうか!!」

 そんな発言に対し、俺はもちろん、バカな夜と隊長の事でいっぱいな刃(寧ろ俊彦に気付いてるかも不明)以外はちゃんと感づいた。

 ―――ああ、昌哉の奴が本気を出そうとしているのかと。

 ――本気で、俊彦を落としにかかろうとしているのかと。

 ああ、何て面白そうなんだろう。

 ――次の観察対象が決まった。

 今度は、俊彦と昌哉の事を観察しよう。

 「あー、立花何、その悪い笑み!!」

 「いや、何でもない」

 観察するなんていったらきっと嫌がられるから、俺はそういって笑った。

 ああ、楽しみだ。

 こそこそと傍観者をするのが俺は好きなんだ。

 腐男子と『狂犬』の恋愛はどんな結末を迎えるのだろう。

 それを思うとわくわくしてならない。



end



腐男子→三木俊彦

狂犬→昌哉


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