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君は、俺がいないと壊れてしまう。

王道学園の話だけど、主人公は婚約者溺愛でBLではありません。周りがBLです。

 ”ずっと傍にいてくれる?”

 壊れそうなほどにもろい君は、泣きそうな顔で俺にそう問いかけました。

 その声が、その姿が、俺がいなきゃ生きていけないとでも言うようで、俺は君をどうしようもなく愛しいと思った。

 だから、俺はその手を取った。

 離れないよ。

 ずっと傍にいるよ。

 俺がそういっても不安定になり、俺を求める君。

 そんな君だけが、俺の唯一の愛してる人だ。

 ずっと傍にいる、と言った日からもう早五年。

 俺は現在、全寮制の男子校で高校二年生を迎えている。

 俺は金持ちの家に生まれたけれど、それは彼女もいっしょで、簡単に婚約まで持っていけたし、すっかりあの日俺を求めたあの子は俺の婚約者だ。

 この学園に通わされることになったわけだが、理事長が彼女の親類だから、よく俺を求めて不安定になる彼女のために特別に外出を許可してくれる。

 幸い俺は特待生だし、風紀副委員長何て言う肩書があるから授業免除特権というものがあり、テストさえ落とさなければ問題がない。

 「柚に会いたい……」

 ほんの三日前に会いにいったばかりだというのに、俺はもう彼女が恋しかった。

 この学園はホモやゲイばっか溢れている、別に偏見はもう五年でなれたけれども、顔と家柄がいいからと寄ってくる面々にはうんざりする。

 柚に会いたい、柚に会いたい。

 そればかりが心を占める。

 柚が俺を求めるように、俺もすっかり柚にはまり込んでしまっている。

 「……藤堂先輩、彼女が好きでたまらないのはわかりますけど、仕事してください」

 後輩の風紀が、めんどくさそうに俺を見て言う。

 ちなみに言うと俺――藤堂正道トウドウマサミチに婚約者がいる事はこの学園では周知の事実だ。

 五年前入学した時に告白が殺到した時に、俺はばっさりその事実を告げたのだ。

 それでも諦めない奴には俺の柚がどんなに可愛いかを教えておいたら、諦めてくれた。

 柚、柚、柚――、会いたい会いたい。早く卒業して会社を継いで、柚をお嫁さんにもらいたい。

 そんな未来は何て言う幸福な未来何だろう。

 柚が奥さんで、俺を出迎えてくれる。

 何て、何て素晴らしい事だろう。ああ、速く柚と結婚したい。

 未来を思い描くだけで、幸せな気分になれる。現実になったら俺はどれだけ満たされるのだろうか。

 「……藤堂、顔がニヤけすぎだ」

 「柚との未来を想像していただけです。速く家を継いで柚と結婚したい」

 「願望ただ漏れだな…。しかし藤堂をそこまで惚れさせる女とは興味があるな」

 「…委員長、柚を狙うっていうなら容赦しませんよ?」

 「安心しろ。人としての興味であって、恋愛感情なんて持ち合わせていない」

 柚に速く会いに行きたいなー。抱きしめたいなーなんて思いながら過ごす中で、転入生がやってきた。

 そいつは問題児だった。

 生徒会を惚れさせるわ、他の親衛隊持ちを惚れさせるわ……しかも、柚の親戚って嘘だろ、アイツがと言いたいほどウザイ。

 そう、柚の親戚らしい。

 しかも理事長、何であんなの甘やかすの。意味分かんない。

 恋は盲目って奴?

 あんなにバカな人とは思わなかった。

 しかもその転入生に、

 「なぁ、食堂行こうぜ」

 何で俺気にいられてんの?

 何で理事長俺が柚にしか興味ないの知ってるくせに睨んでんの?

 何で柚の元に行く外出許可今まですぐに出してくれたのに転入生のせいで渋ってんの?

 あー、苛々してきた。

 柚に会いたい。癒しが欲しい。

 「取り巻きといっとけよ」

 はぁ、とうんざりしながら転入生に冷たく言葉を放つ。

 大体柚に会えてなくて俺は苛々してて仕方ないんだ。

 ああ、柚に会いたい。

 転入生が学園にやってきてから、転入生が問題起こすせいで風紀が忙しくて、柚に中々連絡が取れないし。

 きっと、柚は不安がってる。

 きっと、柚は寂しがってる。

 「何でそんな事言うんだよ!! 俺が誘ってるのに」

 「誘いを断るとは何さまだ、貴様」

 「ちょっと気にいられてるからって…」

 「「本当、何様って感じ―」」

 「こんなのほっといていこーよ」

 とりあえず、転入生と生徒会非常にウザイ。

 何こいつら、殴ってくれっていってんの?殴っていいかな。

 そもそも、俺には婚約者がいるってのお前らだって知ってるだろ!

 転入生は転入したばっかだししらねぇかもだけどさ。

 「あー、はいはい。じゃあ、転入生連れてどっかいけよ」

 「何でだよ! 正道も一緒いこーぜ!!」

 「あのさ、腕離せ。気持ち悪い」

 誰かに触れられるのは基本嫌いだ。俺は。

 それなのにこの転入生、俺の腕を掴んできやがった。

 あー、気持ち悪い。俺が触れられて気持ち悪くないのは柚だけだし、寧ろ柚なら自分から触れる。

 「気持ち悪いって何だよ! あ、もしかして親衛隊がいるからか! 俺を心配してそんな事いってんだろ!でもだいじょう――」

 「あー、もううぜぇ!! 気持ち悪いってのは本心だし、俺の親衛隊は制裁とかしねぇよ。

 奴らは俺に婚約者がいる事百も承知だし、大体そこのバカ生徒会と違って俺はちゃんと親衛隊とも仲良いし」

 俺は生徒会の奴らと違って親衛隊と仲が良い。

 そもそもお茶会とかして普通に喋るしな。

 柚の事もしっかり公認されてるし、奴らは俺が柚を溺愛してる事知ってるし。

 それなのに近づいたからって制裁とかありえねーつーの。

 ま、俺が嫌がってるのに無理やり迫ってくる奴には忠告はしたりしてるみたいだけど。

 ちなみに此処は廊下だ。

 周りがこちらに注目してて視線がウザイ。

 「婚約者って何だよ! あ、親に無理やりきめられたんだろ!! それなら俺が叔父さんに頼んでどうにかしてやるよ!」

 「は?」

 「そういう無理やりはよくないんだ!! やっぱそういうのは好きな人としないとな!

 正道も大変だったんだな。これからは俺が傍にいてやるから!」

 「はぁ? さっきから転入生は何いってるわけ? は? 俺と柚の婚約が無理やり?親が決めた? んなわけあるか。

 大体うちん家恋愛結婚推奨派だし、んな事しねーし」

 大体、俺の両親も恋愛結婚だし、んな親の決めた婚約者とかねーよ。

 しかも俺が傍にいてやるとかぞわわっと鳥肌たったし、普通に。

 あー、ただでさえ柚が足んなくて苛々してるっつーのにさ。

 「そんな無理しなくていいんだぞ!」

 「無理してないし。大体柚との結婚は俺の幸せだし。寧ろ今すぐ結婚したいぐらいだし」

 これは本心。今すぐにでも柚と結婚したい。

 柚と家族になれれば、きっと俺は幸せだ。

 「藤堂様、かっこいい…」

 「正道様って本当彼女さん好きだよねぇ」

 「ああ、あんなに愛されたい」

 なんか周りがいってるけど、とりあえずそれは放っておいて、俺は転入生にめんどくさそうに視線を向ける。

 「だから、無理すんなよ! 正道は俺の事好きなんだろ!!」

 「はぁ?」

 何こいつ、気持ち悪いんだけど。

 そもそも俺はノーマルだ。男相手にこの学園に通ってるから耐性ついてるけど、ノーマルだ。

 男に恋愛感情なんて持った事一度もない。

 つか、俺には柚がいるから他に要らないし。

 何でこいつ俺を上目遣いでみてんの。

 男にそんな目で見られても正直気持ち悪い。

 いや、まぁ、俺の事本気で好きだからって告白してくる子には誠意を持って断ってるけどさ。

 こいつがこんなやってても気持ち悪いだけじゃね?

 外見もキモイのに、中身も残念とか最悪すぎる。

 そもそも何その汚い外見。

 「俺、正道が好きなんだ、だからさ――」

 「……キモイ」

 「え?」

 「だから、キモイお前。大体俺には婚約者がいるって聞こえてないわけ?

 お前に好かれても嬉しい何て一ミリもおもえねぇよ。

 外見も最悪で中身も最悪とか、お前生きてる価値ないんじゃね?

 そもそも俺はてめぇが問題起こすせいで柚に中々連絡取れなくて苛々してんだよ。俺の事好きとか気持ち悪すぎだろ。さっさと失せろ」

 思わず、キモすぎてそんな暴言が口から飛び出た。

 「何で、そんな事…」

 「何泣きそうな顔してんの、マジキモイ」

 もうイラッときて、そんな風にいってしまう。

 てかこのくらいで泣きそうな顔するって女々しすぎじゃね?

 ぶっちゃけ、キモイんだけど、これ。

 「貴様――っ!」

 「そんな事を言うなんて」

 「「ひどいっていうかー?」」

 「おい、生徒会は暇なのか。あと理事長は俺が柚しか愛してないのはっきりしってるだろ。何外出許可出さないとか権力使ってるわけ」

 つか、暇なの。生徒会も理事長も。

 何でこんなクソウザイ毛玉について回れるのか、正直謎。

 だって、こいつガチでキモイのに。

 あー、だるいだるい。めんどくさい。

 柚に会いたい。猛烈に会いたい。

 そしたら、きっと俺は一気に幸せに浸れるのに。

 何て思ってたら、

 「なぁ、正道、俺、俺――」

 とかいって、いきなり転入生が俺に近づいてくる。

 何こいつ、何で俺に顔近づけてんの。

 そう思って、まさかーと思考を巡らせている俺は気付かない。

 何だか周りが必要以上にざわめいていることに。

 そして、その騒ぎが徐々に近づいてきてることに。

 クソ転入生は俺の顔に顔を近づけてくる。

 「やめろ、気持ち悪い!!」

 「マ、サ?」

 俺が怒鳴って転入生を突き飛ばしたのと、女性特有の甲高い声が聞こえたのは同時だった。

 聞き間違えるはずがない、声。

 「ゆ、ず? …それに、義父さんも…」

 声のした先を見れば、この学園には居ないはずの俺の婚約者である柚と、その父親であり会社のトップを務めている義父さんがいる。

 「正道君、最近柚に連絡をいれてないだろ? そこの理事長にも連絡がつかないから、来たんだ」

 「え、っとマサ、浮気? その子さっき、マサに顔近づけて…」

 ああ、柚が泣きそうな顔してる。

 柚、柚、そんな顔しないで。

 そんな思いにくれてる俺には、義父さんの声なんて届いていない。

 俺の眼はまっすぐに柚だけ見てて、俺の耳には柚の声しか入ってこない。

 「何するんだよ! 正道」

 「邪魔」

 立ち上がって俺の制服を掴むバカを蹴散らして、俺は泣きそうなほどに顔を歪めた柚に真っすぐに近づく。

 「柚」

 「マサ……」

 不安そうな顔。そんな顔させたくなくて、俺はそのまま、柚を抱きしめて、頬に手をやって、キスをした。

 廊下とかもうお構いなしだ。

 柚のが断然大事。

 「え、藤堂様が」

 「キャー」

 「てか婚約者さん凄い美人なんだけど」

 何だか周りが騒いでるけど、完全無視で、俺は柚を見る。

 突然の口づけに驚いたのか涙を引っ込ませた柚を抱きしめたまま、俺は告げる。

 「浮気なんてするわけねぇだろ。俺は柚以外愛してねぇ」

 「……っ」

 顔を真っ赤にする柚が可愛くて仕方ない。

 周りに人が居ることに気付いたのか、はずかしそうにもじもじしてて何だか本当可愛い。

 クソ転入生の1000倍いや、もっと可愛いと思う。

 「マサ、何で連絡くれなかったの?」

 「そこの、猿のせい。俺風紀副委員長やってんじゃん? 忙しくてさ。しかも理事長が猿に心酔してて、外出許可くれねぇ」

 ちくるような形で、義父さんにも聞こえるように口にする。

 「正道君に外出許可を出さない…? どういうことだ」

 「…いや、それは」

 理事長、焦ってて面白い。

 散々権力振りかざしてるくせに、義父さんの方が権力上だからってびびりすぎ。

 大体柚と親戚っていっても、柚は本家の娘で、理事長とか、あと多分転入生もそこまで深いつながりはない遠い親戚のはずだし。

 「なんだよ、お前!!」

 「こ、この方にそんな口はやめなさい!!」

 「こんなのに現抜かしてて柚を悲しませたと…?」

 転入生、理事長、義父さんが声をあげる。

 その隣で俺はまぁ、義父さんがくればなんとかなるだろうしって事で久しぶりの柚を堪能中。

 「ねぇ、マサ。この子が、邪魔してたの?」

 「ああ。こいつが来たせいで、柚に連絡できないし、会いにいけないし、だから今会えてすげぇ、嬉しい」

 「ふふ、私も嬉しいよ。マサ」

 生徒会の連中も大物な義父さんの存在に固まってるし。

 本当嫌だよな。自分が権力使う癖に自分より上には何も言えないってさ。

 「ふむ、とりあえず事情を詳しく説明してもらおうか。内容次第で、全員退学か退職してもらう」

 「な、横暴だ! 最低だ!!」

 「ああ、正道君は柚とそのまま一緒に居てくれるか?柚も寂しがってたんだ」

 転入生総無視で、義父さんはそういって、笑いかける。

 もちろん、頷いた。

 で、その後、俺は柚と一緒に柚の実家にいって、のんびり過ごした。

 二、三日学校サボって久しぶりに柚とのんびりしてた。

 で、帰ったらすっかり学園は変わってた。

 なんつーか、流石義父さん。素晴らしいよね、本当手際が。

 俺も気合いれて、柚を幸せにするために色々頑張らなきゃなと思うのであった。

 ――ああ、はやく柚と結婚したい。




end



藤堂正道

風紀副委員長。美形。

婚約者溺愛は学園中知ってる。親衛隊との仲も良好。

とりあえず卒業して会社ついで柚と速く結婚したい。



婚約者。結構情緒不安定。ちょっとしたことで泣きそうになる(正道の事限定)。

正道は毎日柚に基本電話する。正道大好き。手料理食べてもらいたいからって色々料理のお勉強とかしてる。お嬢様学校に通ってる。



理事長と王道は柚のちょっと遠い親戚。


理事長は王道来る前は普通に正道と喋る仲だったけど、王道来ての態度で正道にバカだって凄く思われてるという。


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