我が学園のお姫様
王道学園の女装しているお姫様。
俺の通う学園は全寮制の男子校。
それでいて、同性愛とかが溢れている。
幼稚園から此処に通っている俺はすっかりそまっていて、男同士に偏見も何もない。
で、この学園は抱きたい、抱かれたいランキングとかで生徒会が決まったりするのだけれども――、うちの学園には抱きたいランキングぶっちぎり一位のお姫様が居る。
その名も、楼川姫樹。
我が校で、副会長を務める人である。
副会長は誰が何て言おうと可愛い。
腰まで伸びた茶髪の髪に、くりくりとした目に、化粧の施された顔に、ブレザーの制服規定を破ってはいているスカート。
そう、副会長は常に女装をしている。
女装が趣味なのだ。
何でも本人いわく、『似合うものを着て何が悪いの?』らしい。
本当に似合ってて、そこら辺に居る女なんかより断然可愛いのだから、本当副会長って可愛い。
はっきりという物言いも、時折見せる可愛らしい笑顔も、全てが『姫』と呼ばれるのに相応しい。
ぶっちゃけると、この学園の大体の生徒は『姫』のファンである。
少しきつい物言いもするけれどもなんだかんだで優しい姫は好かれるのだ。
学園ではいつも『姫』の話題で溢れてる。
そんな『姫』は何とあの最低な遊び人である会長に片思いをしているという噂だ。
ああ、『姫』。あんなのに片思いしちゃだめと言いたくなる。
優しい『姫』に最低な会長は似合わないから!というのは学園中の『姫』ファン(親衛隊も含む)の総意であった。
『姫』の親衛隊隊長兼『姫』ファンクラブ会員№1は強く言っていた。
あ、ちなみに俺も会員です。
『姫』の場合特殊で親衛隊以外にもファンクラブがあるのだ。
親衛隊は悪いイメージもあるから入りにくい人もいるだろうと、隊長がわざわざファンクラブを作ったのだ。
『我らが『姫』はあんなのに渡せない。しかし、『姫』はあんなのに片思いを…。くっ、応援すべきなのか、それとも邪魔をすべきなのか』
何て言って嘆いてた。
『姫』ファンが、苦渋の思いを感じてる中で、『姫』が会長に告白をしてしまった。
そうして、美人と可愛い子が好きな会長はそれを承諾した。
ああ、『姫』が、俺らの『姫』あんなのと…と俺も含む『姫』ファンはもはやそんな感じだった。
だって遊び人の会長が『姫』一人に縛るなんて思えなかったのだ。
会長はいい男かもしれないが、一人にとどまれない遊び人なのだ。
それは、中等部の頃からずっとだ。
――そして、その予感は的中する。
『姫』と付き合いだして、わずか半月もたたずにあのバ会長(もう会長なんてこれで十分だ)は他の奴に手を出したのだ。
勝ち誇ったようにバ会長の腕に手を絡める親衛隊に、ふんっと『姫』を見る会長。
そして、傷つく『姫』――…っ。
「もう……浮気、何でするの。僕と付き合うっていったのに!!」
『姫』はそういって泣いていた。
ああ、『姫』を泣かせるなんて本当バ会長最低すぎる。
大体『姫』みたいな可愛い子捕まえておいて、浮気する神経がわかんねぇよ。
『姫』可愛いのに、『姫』優しいのに。
大体、『姫』が浮気に怒った時、『俺様はめんどくさい奴嫌いだの』なんだのいったらしい。
そんなに言うなら別れるってか! 『姫』がバ会長を好きな気持ちを利用しよって!!
ああ、きっと俺同様バ会長にいら立ってる連中は多いと思う。
気付け、バ会長、最近殺気を向けられている事を…。
『姫』を尊敬している面々なんてもう殺すような形相でバ会長を見ているのだ。
これほど、あのバ会長にバカといってやりたい事はない。
いやー本当にバカだろ。
あの可愛い『姫』が、寧ろ学園のアイドル的な『姫』が告白してくれたっていうのに、それで付き合う事になったというのに……。
これでバ会長は『姫』ファン全てを敵に回している事になる。
寧ろ闇討ちにでもあってしまえというのが、俺の意見だ。
とはいっても『姫』はバ会長が好きでバ会長と付き合っているから、『姫』を悲しませたくないからやらないけど。
『姫』がバ会長に愛想を尽かして、バ会長と別れたら、きっと皆で闇討ちしちゃうと思う。
俺もやるなら参加する。
赤信号、皆で渡れば怖くないと一緒で、闇討ちも皆でやればバ会長なんて怖くない気がする。
俺たち『姫』ファンの面々がバ会長の行動に苛々して仕方がない中で、『姫』に接触するものがいたらしい。
それが、柴田ゆうきという名の美形である。
人に興味がないはずの柴田ゆうきが『姫』に手を伸ばしたというのだ。
ああ、あの人になら任せられる気がすると、俺たちは思った。
『姫』の親衛隊隊長も、『柴田様の方があんな奴より断然いいです』なんていっていた。
まぁ俺もだけど、本当隊長ってバ会長嫌いだよなぁと思う。
俺たち『姫』ファンの中で、ぜひとも柴田ゆうきに『姫』を悪い『王様』(バ会長)から救い出す『騎士』になってほしいと『騎士』と柴田ゆうきを呼ぶことになった。
もう『姫』ファンはすっかりバ会長に憎悪しかなく期待も何もしていなかった。
そのため、『騎士』にぜひ『姫』を救ってくれという願いを込める。
もし、『王様』を捨てるなら喜んで俺たち『姫』ファンが報復をしよう!!
寧ろ、まだ『姫』が『王様』と付き合っているというのに『姫』ファンの会合やチャットでは、あの『王様』をいかにしてぶちのめすかについて話されている。
皆、意気揚々としている。
もちろん、率先してやっているのは親衛隊隊長だ。
あの『王様』はバカである。
『姫』が自分から離れていくわけないと思ってるのか、『姫』は自分に惚れているから安心とでも思っているのか…。
『姫』に呆れられたら、『姫』ファンに闇討ちを食らうだなんて事、きっと奴は想像すらしていないのだろう。
何て能天気なんだろう。本当に主席かと聞きたくなってくる。
バ会長は気付いていないのだろうか。
最近、『姫』が『王様』の所より『騎士』の所にいく頻度が高い事を。
きっとバカだから気付いていないに違いない。
俺達が闇討ちを決行する日も近いとみた。
着々と『姫』ファンないでは『王様』をいかにして貶めるかという非道な話しあいが行われている。
あるものは、はずかしい秘密を入手すべしだの、
あるものは、寧ろ闇討ちして親衛隊に差し出すだの、
色々な案が出されている。
人数が沢山居る分、色んな行動が出来るのだ。
此処はやはり、『王様』を孤立させるべきだだの。
そんなものを意気揚々と考えてる『姫』ファンの連中(俺も含む)はきっと『姫』が悲しむからと我慢しなきゃいけないことに鬱憤がたまっていたのだろう。
そうして遂に、念願の時がやってきた!!
『姫』が『騎士』に落ちたのだ。
わざわざ寄りそい合って食堂へと顔を出した。
そして、他の男に腕を絡める『姫』を見て茫然としている『王様』に『姫』は悠然と言い放ったのだ。
『僕は、君の事好きだったよ。でも、もう君に恋の感情なんてわかない』
そう言い放って、笑った。
『今は、ゆうきがいればそれでいい。バイバイ、もう好き勝手してていいよ。僕と君はもう関係ないから』
そんな風に言い放つ『姫』に、茫然と『姫』を見て信じられないかのように固まっている『王様』、『姫』を愛おしそうに見ている『騎士』。
あのバ会長の顔といったら、まさに傑作だった。
もう、『姫』ファンのメンバーなんてざまーみろと爆笑するのを抑えるのに必死だったぐらいだ。
「『姫』さいこー。ガツンといったね」
「やっぱり、『王様』に『姫』はもったいなかったんだなー」
皆が笑う。
バ会長が茫然としている中で、口々に『姫』ファンは会話を交わす。
バ会長の親衛隊(バ会長の遊び相手)は口々に『姫』の文句いっているけれど、悪いのは『王様』なんだしなーと思う。
悪いのは王様。
その事実は誰がどう見ても明白な事だ。
寧ろ、これで浮気されてた『姫』のが悪いなんて言う奴とかいたら頭おかしいし。
『王様』の親衛隊は、遊び相手で『姫』を敵視していたから変な思考に行くんだろうけれど。
それにしても、固まったままの『王様』を見て思う。
何をショックを受けた顔をしているんだろうって。
付き合っているのに、遊んでいたらそりゃあ、離れていくのは当たり前だろうに。
『王様』の事だから変な自信に満ちていたのかもしれないけれど。
とりあえず、『王様』の事はどうでもいいとして…、これでようやく『王様』闇討ち計画が実行できるのだ。
正直俺はわくわくしていた。
きっと、他の『姫』ファンも同様だろう。
―――そして、その後、俺たちは意気揚々と練っていた『王様』をぎゃふんと言わせる方法を次々と実行していくのだった。
end