会長様の幼馴染
会長以外がアンチ王道君に骨抜き。
会長の幼馴染目線。
ちょっと下品なこと口にしてたりする。
『お前を俺の物にしてやる!!』
『あ?』
数年前、突然幼なじみが顔を真っ赤にしてそんな事を言った。
偉そうな物言いとその表情の違いが面白くて思わず笑ってしまったのは良い思い出だ。
『そんな偉そうにじゃなくて、付き合ってくださいって言うべきだろ? 好きですとか、んなことも言わずに”俺の物にしてやる”? っておかしいだろ、明らかに』
素直に告白の一つもできないプライドの高い幼馴染は俺の言葉に顔をゆがめて、真っ赤に染めて告げた。
『くっ……朝陽、す、好きだ!!』
『で、俺を好きだから何?』
『俺と付き合ってくれ!』
『付き合ってくださいだろ?』
『くっ――つ、付き合ってください、これでいいだろ!!』
普段偉そうだからか、こんな風に頼みこむのは屈辱らしい。こいつをこんな風な顔にできるのは俺だけなのだと思うとなんだか愉快だった。
『ふーん。俺と付き合って俺の事滅茶苦茶にしたいんだ?』
『なっ――』
『知ってるぞ?お前が俺をオカズにしてたの』
そういって笑ってやれば、目の前にいる幼なじみ――怜央は顔を真っ赤にさせて、こちらを見る。
『怜央』
顔を真っ赤にしたまま固まっている怜央を呼ぶ。
『俺、外国行くんだ』
『は? 何だ、それ!!』
聞いてないぞ、と文句を言うように突っかかってくる怜央。よっぽど俺と離れたくないらしい姿に思わず笑ってしまった。
『父さんが行くからついていく。ま、数年したら此処帰ってくるけどな。だから―――』
そういって、怜央の手を掴んで、引いて、口づけをする。
『この続きは帰ってきてお前がいい子にしてたらしてやる』
『――それってっ』
『帰ってきてお前がいい子にしてたら付き合ってやるっていってんの。あ、もちろん、その間で遊んでたりしたら即アウトだから』
しばらく放置してたからってすぐ誰かに手を出すようじゃ信用できねぇしな。俺らの通う学園は男子校だけど、人気者は結構遊ぶ奴が多い。怜央は美形だからそういう寄ってくる奴らは多いだろう。
それに手を出すようなら、そもそも付き合う意味はない。
『じゃ、いい子にしてろよ? そうしたら、俺の処女やるからさ』
そういって、笑いかければ、
『俺待ってる!! 絶対あそばねぇ!!』
何か俺の処女をもらえるって事にテンションでも上がったのか勢いよくそういった。がっついてるなぁと呆れてしまった。
―――そうして、外国に旅立ってから、三年後の夏。
「変わんねぇなぁ、此処も」
俺は、三年ぶりに初等部からある男子校であり、同性愛者であふれかえっているこの学園に帰ってきた。
俺は今、高校二年生。中二で海外にいっていたから、丁度三年ぶりだ。
三年間一切連絡しなかったけど、怜央は元気にやってんのかね。
何で連絡しなかったかって……連絡しないぐらいで遊んでたら所詮それまでの感情って事だしな。
ちょっと、意地悪してみた。電話かかってきても無視していたから怜央の奴へこんでいるかもしれない。
「あ、あの君が松山朝陽君? 僕君と同室の向井日向です。案内頼まれてて…」
校門のところで案内の人を待っていれば、そんな声が響く。
振り向けばちまっとした平凡な男がいた。どうやら同室者らしい。
あれ、でも転入生って生徒会が迎えに行くものじゃなかったか? という三年前の記憶を掘り起こす。
「わざわざ迎えサンキュー。てか、こういうのって生徒会の仕事じゃねぇの?」
「松山君の前に来た転入生がいるんだけど…。会長以外が惚れちゃって色々荒れてるんだ、今……、それで迎えを僕がやることになって」
「転入生?」
「そう……。外見は明らかにカツラで瓶底眼鏡なのに、何だかイケメンホイホイで……。噂では会長以外の生徒会は仕事してないみたいで。風紀委員長まで惚れてて荒れてるんだ」
どうやら会長だけが仕事をしているらしい。それで、迎えに来れなかったんだとか。でも惚れたからって仕事放棄とか最悪すぎるだろ。
何やってるんだと呆れた。
つかこの学園抱きたい・抱かれたいランキングで生徒会とか風紀決まるし、確実知り合いだと思う。
俺初等部の頃からこの学園だったしなぁ。知り合いは多い。
「それ、親衛隊荒れてんじゃね?」
「うん。って、松山君説明してないのに親衛隊わかるの…?」
「ああ、俺三年前まで此処通ってたから。俺の都合で外国行ってただけで、ようするに戻ってきたんだ」
説明をすれば向井は驚いた顔をした。
「そうなの? 松山君って美形だし、親衛隊できそうだね」
「中等部の頃はあったぞ。戻ってきたらその時の隊長にまかせるつもり。あ、安心しろ。向井には制裁とかさせねぇから」
「うん…ありがとう」
親衛隊はちゃんと俺の意見を聞いてくれる。友人には手を出さないように昔からちゃんといってきた。第一、俺は親衛隊と普通に仲良かったしな。
ああ、でも友人の顔いい奴らの中には結構親衛隊嫌い多かったんだよな。
怜央は俺がやってるからって真似して親衛隊と交流持ってたはずだけど。
「向井。櫻井怜央って何か役職ついてる?」
「櫻井怜央って……生徒会長だよ! 松山君知り合いなの?」
「え、怜央の奴生徒会長やってんの? あー、幼なじみだよ」
怜央が生徒会長ねぇ…。抱かれたいランキングでも一位になったかね、あいつ。
さてさて、あいつ大人しくいい子にしてたのかね? なんて思いながら向井に問いかける。
「あいつに浮いた噂ある?」
「え、いや、それが全然ないんだよ。だからノンケだって噂だけど…。でも僕生徒会あんまり興味ないから、詳しい子に聞いた方が速いと思うよ」
つか、怜央が生徒会長って事は一人、例の転入生に惚れてなくて仕事してるって怜央なのか。
生徒会の仕事一人でやるとか確実きついだろ。うちの学園って無駄に生徒会に統括させているから。
「転入生イケメンホイホイっていったっけ? 誰が周りにいるの?」
「えっと、会長除く生徒会全員と、風紀委員長含む数名と、担任と、うちのクラスの和宮君と野口君とか…? あとは理事長の甥らしいよ?」
「和宮と野口って、武晴と正道か」
「そんな名前だった気が…って知り合い?」
「ダチだ。つか、親衛隊持ちに結構知り合い居るんだが、生徒会とか風紀の奴らの名前聞いてもいいか?」
そうして向井に名前を聞いたわけだが、見事に全員知り合いだったという。
そのよくわからん転入生に惚れてる信者、理事長以外全員知り合いだ。
つか、あいつらも怜央とも普通に面識あったし喋るぐらいの仲だったはずなのに、何仕事押し付けてんだ。
――生徒会室…って、生徒会のカードなきゃ、いけねぇよな、多分。
怜央に会いに行きたいんだが、仕事しててこもってるみたいだし。
適当に役持ちに話しかけて連れてってもらうか。
そんな思いのままに、部屋へと案内された。「ここが松山君の部屋だよ」と言われた部屋に入る。
……さて、とりあえず今日は部屋の片づけをしよう。
誰にも帰ってくる事言ってねぇからな。
驚いた顔が楽しみだ。
そして次の日。
俺は職員室によって、何だかホストみたいな美形先生についていって、教室にたどり着いた。
2年S組が、俺の教室だ。
そういえば、向井は同じクラスで外部生の特待生らしい。すげぇよな。俺勉強そこそこしかできないからなぁ…。
此処の偏差値高いはずなのに、本当すげぇと感心する。
「じゃあ、入ってこい」
そう言われて、中に入る。
そうすれば、見知った顔の面々が驚いたような顔をしてこちらを見たのがわかる。その顔が面白くて笑ってしまう。
「はじめまして、の奴は少ないと思う。というわけで、久しぶり。松山朝陽だ。よろしくしてくれると嬉しい」
そういったと同時に静まり返っていた教室が騒がしくなる。
「きゃあああああ、朝陽様!!」
「朝陽様が帰ってきた!!」
「松山、久しぶり!」
「朝陽君久しぶりー。元気だった?」
「相変わらずお美しいぃいいい」
皆、口々に叫んでいた。そして席へとついた俺をまたクラスメイトたちは囲む。
「朝陽様!親衛隊また作っていいですか?」
「朝陽、お前帰ってくんならいえよなー」
「松山君、お帰り!!」
Sクラスは大体持ちあがりだし、俺は普通にクラスメイトとは仲が良かった。
そういえば、俺がクラスメイトと仲良くしてたら怜央不機嫌になってたなぁ、と思う。
「親衛隊は作っていいぞ。ところで怜央に会いに行きたいんだけど、向井に聞いたけど怜央は生徒会長やってんだって? あ、向井は同室だから制裁とかすんなよ? つか誰にもするなよ?」
「わかってます。朝陽様の同室者にそんな事しませんっ」
キリッとした顔でそういうのは俺の元親衛隊隊長である。さっき親衛隊作っていいか聞いたのはこいつだ。
他のクラスメイト達が怜央の事を話してくれる。
「ああ、櫻井なら会長になったぞ」
「聞けよ、朝陽! 会長の親衛隊が手伝うっていってんのに、会長の奴生徒会の仕事だからって一人でやってんだぜ」
「つか、菅間達が仕事しねぇのが悪いんだけどよ。朝陽からなんかいってやってくれよ」
「俺らが言っても聞かねぇんだよ。しかもあの転入生超話し通じねぇの」
「朝陽様、皆さまと仲良しでしたものね! お願いします」
怜央はなんだかんだいって俺と仲良いからってクラスメイト睨んでたけど普通に交流はあったもんな。
クラスメイト達も怜央を心配はしているみたいだ。
あ、菅間って副会長な。
あいつ何やってんだか、本当に…。
その後、とりあえず授業受けて(担任の授業態度最悪だった)、昼になった。
生徒会も転入生も風紀委員長も授業には来なかったが、あいつら、仕事している怜央はともかく大丈夫なんかね。
つか、転入生授業免除特権とかねぇ、だろ。
いいのか、それ。
つか怜央の奴、マジで仕事詰めで忙しいみたいだな。
あいつの事だがら、俺が帰ってきたって噂聞いたらすぐかけつけてきそうなのに。或いは俺がかえってきた噂を聞けないほどなのだろう。
「朝陽様、昼食を一緒にしてもよろしいですか?」
「あ、俺も行きたい」
「俺も俺も!!」
「朝陽君と久しぶりにゆっくり話したい」
だの、皆言いだすから大人数で食堂に向かう事になった。
そういえば、食堂に向かってる途中に聞いたのだが、転入生達も昼は基本食堂らしい。
ふぅん? 接触して、怜央に会いにでもいくかね。
「あ、朝陽様だ!!」
「帰ってきたって本当だったんだ!」
「くそ、羨ましい。同じクラスの奴が!」
「松山様って、友達多いよね」
食堂の中に入ったら、周りの生徒が一気に騒ぎだす。相変わらず、此処は変わらねぇなぁと懐かしく思う。
「琢磨達すぐ来る? そのまま生徒会室行きたいんだけど」
「あー、櫻井に会いにか?」
「ああ」
どうやら、遊んでもねぇみたいだし、生徒会の仕事も一人でやってていい子みたいだから約束守ってやんねぇとなぁと思いながら答える。
三年も待たせたわけだしな。
俺も、怜央に会いたいし、久しぶりに。
クラスメイト(ほぼ全員)で、机をいくつか占領してわいわいと喋りながら昼食をとる。
抱かれたいランキング一位って事は怜央の奴ますますイケメンになったのかね、ちょっと楽しみだ、なんて再会を思って何だか、頬が緩む。
ま、外国に行くからあんな返事したけど、なんだかんだいって俺もアイツの事好きだしなぁ、と思う。
そんなこんなでのんびりと琢磨(副会長)達が来るまでのんびりしていれば、
「「キャアアアアアアア」」
「いやああ、またあの毛玉!!」
一気に食堂が騒がしくなった。
確実に奴らだな、と思った俺はクラスの連中にちょっといってくる、と告げてわいわいと騒がしい奴らに近づく。クラスメイトたちは笑顔で俺を送り出した。
「よう、久しぶり」
奴らの目の前に立って、そう笑いかければ、奴らの目は見開かれる。
「――朝陽です、か?」
そういうのは副会長の琢磨である。
「「朝陽先輩!? えー、何で此処にいるの?」」
後輩の双子がそんな事を言いながら近づいてくる。ちなみに名前は大樹と高貴である。
「朝陽じゃーん、超おひさー」
そういって、絡んでくるのはちょっとチャラい感じの会計――弓弦。
「朝陽じゃねぇか! 帰ってきてたのか」
キラキラした目で見てくるのは友人の武晴(何故か髪そめてて不良やってる。一匹狼とか呼ばれてると先ほど聞いて吹くかと思った)。
「朝陽、久しぶり!!」
爽やかにそういって笑うのはサッカー少年である正道である。
「朝陽じゃないか、久しぶりだな」
一つ上の先輩である風紀委員長の玄先輩もそういって笑う。
「なぁなぁ、お前誰だ。かっこいいなぁ!! 俺、光っていうんだ」
なんか言っている転入生――見た目がアレ何だが、何処に惚れたんだ、こいつらと思う。
「ふぅん。俺は松山朝陽」
ただそれだけいって、転入生から視線をうつし、琢磨たちを見る。
「つか、どうでもいいけど、怜央に仕事押し付けてんだって、お前ら。あと、玄先輩も仕事してんだって? 武晴も転入生になんかいった奴殴ったんだって? 正道もお前、部活サボってんだって? サッカー好きなんじゃなかったのかよ、お前」
そういって、睨むようにそれぞれを見れば皆が一斉に顔色を変えた。
あー、悪い事をしている自覚はあったのか?なら、ちゃんとやれよ。お前ら。
「それに、注意した奴らの話も聞かないって、何やってんの? 一番許せないのは怜央に――」
「朝陽! そんな風に人を責めちゃいけないんだぞ!それにこいつらは仕事してる!!」
大事なこと言おうとしていたら転入生に遮られた。何こいつ、うざい。
「ちょい、転入生黙ってくんない?」
「俺の事は光って呼べよ! 友達だろ!!」
「いや、いつから友達なったんだ」
「何いってんだよ! 親友に」
「何故、親友にグレードアップした…」
話してみて転入生は意味不明だった。なぜ一度だけ話して友達とか、親友になる。そして会話の間で親友にグレードアップとか意味不明すぎる。
「何でって親友だから親友だろ!! ほら、俺の事は光って呼べよ」
「なぁ、琢磨達。この宇宙人何?」
何だか面倒になって琢磨達に視線を向ける。
「宇宙人って、そんな事、光に言うなら、許しませんよ」
「は? 許さないはこっちなんだけど。何で怜央に仕事押し付けてんの? 一人に押し付けてて何やってんの? 仕事したくないならさっさと生徒会やめればいいだろ。そしたらお前ら仕事する必要なくなるんだから。つか、俺怜央に会いに帰ってきたんだけど。帰ってきたら帰ってきたで怜央に仕事押し付けて遊んでるし、権力使って好き勝手してるし、怜央が倒れたらどうしてくれんの?」
琢磨の許さない、発言に言っ気に心が冷めるのがわかる。バカか、こいつ。と内心そんな感じである。
「「あ、朝陽先輩。ご、ごめんなさーい」」
「朝陽ってば、光にそんな風に言わなくてもいいじゃーん。俺だって光を宇宙人っていうなら許さないもんね!」
「あ、朝陽…ごめん」
「朝陽…。幾ら朝陽でも光を宇宙人などと呼ぶなら…」
「俺は……、部活も大事だけど、でも光が…」
上から双子、弓弦、武晴、玄先輩、正道である。
つか、武晴。お前んなしゅんとした顔で謝るって狼ってより確実犬だろ。
全く、琢磨と弓弦と玄先輩は宇宙人を庇うってのか。本当、しんじられねぇ。
まぁ、それならそれで見捨てるだけだ。友人の忠告も聞けない奴は知らねーよ。
「大樹、高貴、武晴、正道、ちょっとはなさねぇか?」
反省しているらしい四人にはそういう。あとは知らない。
「「うぅ、ごめんなさーい、朝陽先輩」」
「朝陽…」
「…俺」
うん、こいつらはまだいいよな、問題は……。
「朝陽には失望しました。光を受け入れないなんて」
「本当、光ちゃんってば超可愛いーのに」
「光は周りにひどい目にあわされてるというのに」
「皆、俺のために喧嘩はよせよ!!」
この面倒な面々だよ。つか、転入生、俺はお前のために喧嘩してないんだが。
どうでもいいな、うん。さっさと双子達連れていこう。
というわけで、後ろで喚いてる奴ら放置してクラスメイト達の所に四人連れて戻ってのんびりしていた。
途中こっちにこようとした転入生は周りが妨害してくれて、こっちに来れなかったという。
皆に感謝だよね、マジで。
ちなみに話を聞いた所、双子は見わけてもらえたから、武晴は怖がらないから、正道はなんか気付けば惚れただとか。
双子…お前見わけられる奴ら結構いるだろ。
そして武晴。怖がってんのはお前が不良やってるからだろ。
正道、よく分かんない理由で惚れたのはわかったが部活はサボるなよ。
と、色々いっておいた。
つか、琢磨達は後で自業自得でざまあみろって目に合わせてやろう。うん、俺むかつくもん。
反省一切してないから。
で、昼食終わって、俺は双子と一緒に生徒会室に向かってる。
双子は謝りたいんだって怜央に。仕事してなかったこと。
そうして、しばらくエレベーターにのったり歩いたりして、生徒会室にたどり着く。
「じゃ、開けるぞ」
俺がそうして生徒会室の扉を開ければ、双子も気まずそうな顔をして後ろからついてくる。
「くそ――」
扉を開けて目に入ったのは悪態をつきながらも仕事をやっている怜央だった。
久しぶりに見た怜央に、心が歓喜するのがわかる。やっぱ俺怜央の事好きなんだと実感してなんだかなぁという気持ちになる。
積まれた仕事をせっせと片づける怜央は、本当、三年前に比べて男前になっていた。
「「かいちょー」」
「あ? てめぇら、仕事もしねぇで何部外者――」
「怜央、久しぶり」
俺の存在に気付いたのか何か言い始めた怜央は俺の顔をとらえると見事に固まった。
その表情が面白くて、思わず笑いかける。
「―――朝、陽!?」
「うん。久しぶり」
そう言った瞬間、ばっと椅子から立ち上がった怜央は勢いよく近づいてきて、いきなりガバッと俺を抱きしめた。
「おー、再会から抱擁って何、お前俺に飢えてたわけ?」
双子達が俺を突然抱きしめた怜央に驚いているのがわかる。
まぁ双子は怜央を俺の幼なじみとしか認識してなかったし、三年前にした約束は俺と怜央以外知らねぇしな。怜央って俺以外には無頓着だし、驚くのも無理はない。
「飢え、てたに決まってんだろ!! 朝陽が足んなくてもう死ぬかと思ったぞ、俺は!」
「何か、素直だな、お前。三年前は好きっていうだけで顔真っ赤にしてたのに」
「――っ!!」
あ、顔真っ赤になった。
三年前もおんなじようにこいつ顔赤くしてたなぁと懐かしくなる。
「「えー、朝陽先輩と会長と恋人?」」
双子が驚愕した声をあげる。
「いや、三年前こいつに告白されて帰ってきた時いい子にしてたら付き合ってやるとはいったけど」
「そうだ、朝陽!! 俺、いい子にしてたぞ! 遊ばなかったし、生徒会長も真面目にやってたし。だから、俺と付き合え! 約束だろ」
べりっと怜央を自分から離して双子の問いに答えれば、怜央が目をキラキラさせてそんな事を言う。なんか面白い。苛めたくなった。
「……」
無言で怜央を見つめれば、徐々に付き合ってくれないのかと不安そうに歪む顔が面白い。てか、お前どんだけ俺と付き合いたいの。
「…つ、付き合ってくれないのか?」
「お前、普段偉そうな癖にんな情けない顔すんなよ。安心しろ、俺は約束を守るし付き合ってやるよ
――…俺もお前の事好きだし」
最後は恥ずかしかったからそっぽ向いて言った。だってなぁ? 面と向かって好きとか言ったの初めてだし。
おい、双子。ニヤニヤした目でこっちを見てんじゃねぇよ。
何て思ってたら、
「朝陽!!」
またなんか抱きしめられた。
おい、お前双子居るのわかってんのに何で抱きつくんだ。
「朝陽、好きだ好きだ好きだ。寧ろ愛してる。絶対幸せにする!!」
「ちょ、おま、どんだけ嬉しいの? 嬉しいのはわかったから、ちょい離せ。双子見てんだろ」
そういえば、ようやく怜央は双子の存在を思いだしたらしく、俺を離す。
双子の方を見れば、ニヤニヤしていた。むかつく顔だ。
「会長ってー、ノンケかと思ってた」
「本当、全然親衛隊とかとそういう噂ないしー」
「「なのに朝陽先輩大好きなんだねー」」
からかうな。俺は自分がからかうのはともかく、誰かにからかわれるのは嫌だ。恥ずかしい。
「あ? わりぃかよ。つか、双子お前ら朝陽と何で一緒にいんだ」
「食堂いって、琢磨達と遭遇した。つか、怜央、お前、琢磨達が仕事してないのに何で放置してんの? お前ならどうとでも出来たと思うけど」
かえって来て現状を知って真っ先に思ったことはそれだった。怜央にはそれだけの力がある。
「……朝陽の友達になんかしたら、いい子じゃないって言われて帰ってきてから付き合ってもらえないかなと」
…そんな理由で放置してたのかよ、と呆れる。
つか、学園の平穏より俺優先か、まぁ、相変わらずだけど。そして嬉しい事は内緒だけど。
「あー、うん、放置してた理由はわかったけど。
双子と武晴と正道はともかく、他の連中は痛い目あわせていーよ。俺に失望しただの、色々言ってたし、怜央に迷惑かけてるみたいだから。
つか、双子は怜央に謝るのが先じゃね?」
怜央を見て、次に双子を見れば、双子ははっとなったような顔をして、怜央を見る。
「「会長…、その、仕事しなくてごめんなさい」」
「ま、反省してるみたいだから、こいつらにあんまり怒んなよ、怜央」
「……あいつら、朝陽に失望しただと。ふざけんな。大体朝陽よりあのクソ転入生とるって頭おかしいんじゃねぇの」
なんか、ブツブツいっている怜央。双子が折角謝罪しているっていうのにそのことを全然聞いてなかった。
つか、お前本気で俺の事になると見境ないよな。
ま、知ってて琢磨達の事怜央にいったんだけどな。
「俺も協力するから、奴らリコールさせたり色々しようぜ。奴ら追い出したら、俺にも生徒会入るように勧誘くると思うし」
自慢じゃないけど、俺人気者だからね。
親衛隊内にも友人結構いるし、皆文句言われない自信あるしね。俺の言葉に怜央の目がキラキラした。
「マジで…!! 朝陽が生徒会? 生徒会室に朝陽いんの?
うん、よし奴ら潰そう。生徒会から追い出そう」
「お前…、俺が言うのも何だがもう少し躊躇いはないのか?」
「ない。朝陽に失望したとかバカなこと言う奴はどうでもいい。朝陽が生徒会はいるためなら何でもする」
躊躇いもせず答えやがったな、こいつ…と呆れた目になる。
「「…わー、俺らも謝らなきゃ、こんな潰されることになってたの? こわー。会長躊躇いなさすぎ」」
隣で双子が脅えてるぞ、怜央。
まぁ、そんなこんなで話はまとまったから琢磨達をどうにかするために動きだすのだった。
その二週間後にはきっちり準備を終えて、せっせと役職をなくして、転入生には退学してもらって、琢磨達は肩身の狭い日常を送っている。
……あ、ちなみに俺は再会したその日に飢えた怜央にそのままやられたんだけどな。
end
松山朝陽
美形。友達多い。(つかクラスメイト全員友達みたいな人)
怜央とは幼なじみ。
怜央の事はなんだかんだいって好き。
親衛隊とも普通に仲良し。運動神経抜群だけど、勉強はそこそこしかできない。
櫻井怜央
生徒会長。ちょっと偉そう。
朝陽が大好きでたまらない。約束守って遊びは一切しなかった人。
優先順位は、
朝陽>>>>超えられない壁>>>家族>>>友人>>>その他
みたいな感じという。
向井日向。
朝陽の同室。多分後に怜央が向井に嫉妬して朝陽に怒られる。
大樹、高貴
双子。謝ったからおとがめなし。
武晴。
朝陽しか友達いなくて朝陽いなくてさびしくて王道君きて懐いてただけ。
(後にその理由聞いた朝陽に、不良やめろよ、友達ほしいならと怒られる)
正道。
部活をやっぱりやらなきゃ、と朝陽と再会して思い頑張ります。
(あとから何で王道君が好きかわからないといい、朝陽に呆れられる)
その他はリコールされて、親にもバラされ肩身の狭い思いを送っている。