俺は、そして熱を知る。
俺は自他認めるチャラ男だ。どうしようもないほど下半身が緩い自覚ぐらいある。
流されやすい性格もあって、外部から学園に入学したというのにすっかり、男色になれてしまった。
セフレだっている。アイツらが望むから抱くだけ。
気付けば抱かれたい人気投票第3位、抱きたい人気投票5位なんてとっていて、生徒会会計になっていた。
抱かれたい、抱きたいランキングで生徒会を決めるなんて酔狂だと思った。
――でも、それがこの学園だ。
会長は最近好きな人が出来たらしい。下半身が俺と同じであれだけ緩かったというのに初恋だというのだから何だかある意味驚いた。
副会長はセフレ集団をつくり、自分よりも位の低い家をバカにしているようなそういう人だ。
セフレとして利用してるのに親衛隊を嫌悪しているから性格悪いと思う。
もう一人の会計は無口なわんこだ。何か癒される。
汚してはいけない絶対領域みたいな子で放っておけないオーラが漂っている。長男で下に四人もいる身としては何だか弟のような存在だ。
可愛い女の許嫁とラブラブで毎日メールをしているらしい(喋るの苦手だから)
書記は双子だ。そっくりでドッペルゲンガーみたいな感じ。
愉快犯で、子供じみている。でもなかなか面白いと思う。
熱を持ちやすく、その熱はひどく冷めやすい。
それが、俺、会計である。深沢慶司。
気に入った子がいて、アピールして手にいれたけど、一カ月後には飽きたり、
可愛いなぁ、面白いなと思ってた子の傍にしばらくいれば、飽きたり――。
俺は飽きやすい。
唯一絶対の存在なんてそんなものもいないし、友人だってそんな感じ。
広く浅い交友関係を築きながらゆるく生きているのが俺。
多分俺が今まで好きだと思った想いとか、お気に入りだって思いは、会長とかの思いと違うんだろうなーと思う。
だって本気なんて所詮知らないんだもん。
そもそも一人にずっと一緒に居たいと思うほどにはまり込む気持ちって俺にはよくわからない。
何か面白い事ないかなーなんて思って、たまたま図書室に向かった。
――そこで、唯一の存在に出会う事など知らないままに。
図書室はガランッと静まり返っていた。
うちの学園の図書館は、多くの書物を所有しており、そこにはラノベから純文学、資料など様々なものが並べられている。
第一図書室から、第三図書室まであり、俺がやってきたのは人気の少ない第二図書室だ。
此処にはつまらなそうな評論とかばかり並べられている。
何となく、好奇心で顔を出してみたのだ。
昼寝に丁度いいかもしれないなんて思って、椅子に座って、机に顔を伏せる。
誰かと遊ぼうっていう気分にはならないし、とりあえず、昼寝でもしよう。
此処は、太陽の日差しが入ってきて、眠ったら気持ちよさそうだ。
――それを思って、俺はそのまま眠りについた。
「…ださい、おき…て」
深い眠りについて、夢の世界に旅立っていく中で、何か小さな声が響いた。
声に導かれるようにして、目を開く。
そして、体を起こすと、隣に一人の存在が居た。
「…もうすぐ、閉館ですよ。会計さん」
そこにたっていたのは黒髪の、綺麗な顔立ちをした生徒だった。
「んー? もう放課後? 君はー?」
「…俺ですか? 俺は橋本庵です」
「庵君かぁ」
マジマジと庵君を見る。
本当に綺麗な顔をしているなぁ、と思う。
綺麗なモノは好き。
可愛い顔立ちをした人も好き。
だから綺麗な子には誘いをかけるし、可愛い子にじゃれつく。
「庵君、綺麗だね」
「会計さんの方が綺麗ですよ」
「綺麗よりかっこいいが俺嬉しいかもー」
「そうですか。それよりも、速く出てください。閉めますから」
そういって、優しく笑う庵君を綺麗だなぁと思った。
「ねぇ、庵君、また、来てもいいかなぁ?」
だから問いかけた。
綺麗なモノは見ていて好きだから。
それから俺は第二図書室に顔を出すようになった。
庵君は図書委員で、この場所でのんびりと持ちこんだ本をいつも読んでいる。
静かな空間が好きらしい。
「ねぇ、庵君、何読んでるの?」
放課後に顔を出せば、庵君は今日も本を読んでいる。
「哲学の本」
「うえぇえ、そんなのよく読むね?」
「結構楽しいですよ?」
庵君は変わった人だった。
哲学書とか、あんまり皆が見なさそうな難しい本とかを読んでいたり、どんなことでも学ぶことが楽しいみたいな思考を持っている。
だから、勉強もいつも一番らしい。
そんな庵君は俺の一つ下の一年生だ。
「俺ってあんまり本読まないんだよねー。漫画は読むけどさー。でも面白いなら読んでみたいかも」
「そうなんですか。今度読みやすい本でも貸しましょうか?」
「本当? じゃあぜひ貸してー」
「はい」
柔らかく笑う、庵君の事が綺麗だなぁって思った。
綺麗で人を引き付けるようなそんな笑顔は、見ていて何だか気分がよかった。
周りにキャーキャーいわれながら、騒がしく過ごすのもいいけれど、こうやってのんびりと庵君と過ごすのも心地よかった。
親衛隊の子を相手にする日もあったけれど、結構な割合で、それから一ヶ月、俺は庵君の所へいっていた。
――綺麗な子だろうと、飽きていない自分に驚いた。
――逆に、色んな表情を見たいなんてそう思いだしている自分に驚いた。
「これ、面白かったよー」
庵君に借りた本を読み終えて、返したら、庵君は嬉しそうに笑った。
「それはよかったです。僕は――」
本について語り出したら止まらなくて、その表情が可愛いと思った。
「中間テストで、少しわからない所があって」
必死に勉強している庵君は、俺が教えると嬉しそうに笑った。
ちょっとじゃれて抱きついたら動揺していたり、辛い物が好きで激辛を食べていたり、甘い物に顔をゆがませていたり―――そんな色々な表情の一つ一つが、俺の目に焼きついた。
こんな気持ちになったのは、初めてだった。
徐々に、親衛隊の子を相手にしている時間が減っていく――。
どうでもいい子よりも、庵君のそばにいて、笑っている方がきっと楽しいってそう思ったから。
出会って、3カ月たつ頃にはすっかり、俺は親衛隊の子の相手なんてしていなくて、庵君の所にばかりいっていた。
どうしてか、わからなかった。
いつも軽い付き合いばかりしている俺が、庵君に執着している事が不思議だった。
そんな中で、その頃にはすっかり思い人と恋人になっていた会長に言われた。
「お前、好きな奴でもできたのか」って。
「好きな人かはわからないけど、一緒に居たいって人はできたかなー」
何て、笑って、しばらく会長のノロケと俺の庵君の話で盛り上がった。
盛り上がった後に、会長は言った。
「…お前、絶対その庵って奴の事好きだろ」って。
それを聞いて、俺が、庵君の事を好きかぁ…と思った。
好きなのかな?
この温かい胸の熱が、知りたいっていう思いが、恋ってものなのかな?
徐々に感じていた、高まる鼓動に、温かな感覚――。
それは、そんな話をしてからもどんどん加速していった。
―――他の子達みたいに、飽きなかった。
ずっと、傍にいたのに、もっと知りたいって思った。
そして、俺はその頃に、ああ、これが恋なんだな、俺って庵君の事好きなんだなーって思った。
――そうして、俺はその熱の正体を確信した。
ああ、そうか、これが恋かと実感して、何だか嬉しくなって、図書室にたどり着いてすぐにいつものようにそこに座っていた庵君に後ろから抱きついた。
「ちょ、か、会計さん。急に抱きつかないでくださいよ」
「んー…ごめんねー?」
ぎゅっと座っていた背中に抱きついたら、何だか嬉しい気分になってくる。
ころころ変わる表情が嬉しくて、ずっと見て居たいと思った。
「もう…、仕方ないですね」
困ったように笑う庵君を見て、好きだなぁと思った。
――この胸に感じる熱を教えてくれたのは、庵君だ。
さぁ、これからどうしよう?
まぁ、とりあえずは、
「ねぇ、庵君」
「何ですか?」
「好きだよー」
「え?」
告白することから、はじめよう。
end
会計・深沢慶司
広く浅い交友関係。あんまり人に執着しない。流されやすい。
元からチャラ男。
何か学園に流されてバイに。
橋本庵
一年生。頭はいい。本大好き。綺麗系。