副隊長と不良様
親衛隊隊長=愛玩動物のあゆちゃんの話
――あゆちゃん、今日僕竜一君と買い物行くね
そういって、幸ちゃんは竜一様の所にいっているので、今日は俺は一人だ。
それにしても幸ちゃんは竜一様に告白された自覚あるのだろうか、二人きりで買い物なんて…と思わず苦笑いが浮かぶ。
幸ちゃんに誘われて入った生徒会長親衛隊は意外にも楽しい。
皆幸ちゃんの可愛さに気付いてくれたし、いい子ばかりである。
ちょっと、外いくか――。
暇だし、と俺は散歩に出かける事にした。
外に出て、のんびりと歩く。
ちらほらいる生徒達が、こちらを見ている。
生徒会の親衛隊ってのは、タチが悪いというのが周りの認識である。
最もうちの隊は幸ちゃんの可愛さにやられてぽわわ~と皆してるのでそんな陰湿な事は一切ないのだけれども。
そういえば、副会長達も、竜一様に言われてからは親衛隊と交流を取ろうとはしてるみたい。
あの毬藻にも接触して「自分たちは自分たちの意思で生徒会の仕事をしてる」といったらしいけど受け入れてくれなかったんだとか。
毬藻、果てしなく邪魔だよね。
何だか最近は取り巻きがいなくなっていくことに喚いてるらしい。
近いうちに理事長は使い物にならないから理事会に毬藻の事を報告する予定だとか竜一様がいっていた。
そうして、人気のない中庭にたどり着く。
俺は此処の自然が好きだ。落ち着くし、見ていて気分がいい。
――そうして、気分よくしているというのに、嫌な声が聞こえてきた。
「や、やめ―――」
「誰もこないよ」
「は、助けが来ると思ってんのか」
強姦…かよ。
俺はそういうの正直嫌い。
はぁ、とため息を吐いて俺はその声のした方へと近づく。
そして――、
「何をしているんだ」
と、声をかける。
「あれー、誰かと思えば、淫乱な生徒会長親衛隊の副隊長じゃん」
「何、君も混ざりたいの?」
そういってニヤニヤと笑う不良たちに嫌悪感を覚える。
幸ちゃんは本当可愛いのに。天使なのに。あんな可愛い幸ちゃんを淫乱と思えるなんてどういう頭してるんだろう?
「混ざるわけ、ないでしょ? それより、そこの子を離したら?」
ニヤニヤと笑うそいつらが気持ち悪くて、思わず近づいて一人に拳をいれ、地面にひれ伏せさせながらいった。
「何してやがる、てめぇ!!」
そういって、殴りかかってくるもう一人の拳をよけて、今度はお腹に思いっきり蹴りをいれる。
そうして、奴らがひれ伏してる隙に、僕は強姦されかかっていた子の腕を掴んでそのまま、そこから駆けだした。
―――そんな、不良達をのしてしまった俺を見て、
「へぇ、面白そうじゃん」
何て、呟いてた存在がいた事も知らずに。
襲われていた子を部屋まで送り届けて、俺は一息をついて歩き出す。
強姦とか、そういうのは嫌いだ。
男同士に偏見はない。とはいっても俺はノンケだけど。
竜一様になら幸ちゃんを任せられると思ってるし、あの二人が付き合うのは俺的に賛成だ。
そうやって、廊下を歩いていれば、
「よう、生徒会長親衛隊副隊長さん」
声をかけられた。
振り向いた先にいたのは、銀髪の男―――。
「斎藤紅……」
そこにいた存在に、俺は驚いたように声を零す。
―――何で、こいつらが此処にいる。
何で、Fクラスのトップなんかが、此処にいるんだ!?
俺は驚愕に満ちた瞳をその男へと向ける。
不良の集められたFクラス。
そのトップが、今、俺の前に立っている男――斎藤紅だ。
「……Fクラスのトップがなんの用だ?」
「ねぇ、君何であんな強かったの?」
「……何の事だ?」
「さっき、男数人のしてただろ?」
「……っ」
みられてた…!?
でも、そういうのを見たからって、どうしてこいつが出てくる!? と思わず混乱してしまう。
「俺ね、あんたに興味もっちゃった」
「は?」
笑顔で吐かれた言葉に驚いてそんな言葉を返す。
興味持った…? 俺に?
理解できなくて返信に困る。そうすれば益々意味不明な言葉を言われた。
「だからさ、俺のモノになんない?」
「は?」
「こーいう事」
そう囁かれたと思えば、気付けば腕を引かれていて――、キスされていた。
唇と、唇がぶつかり合う。
「な、なな…っ!!」
「あはは、隙見せちゃだめだよ?」
「お、俺のファーストキス返せばかやろう!!」
思わず、お腹に一撃ボコッと拳をいれてしまう。
そうして、斎藤紅が一瞬怯んだ隙に俺はそのまま逃げてしまった。
後ろで、
「――ファーストキスだったんだ、ラッキー」
何て笑っている斎藤紅の声などもちろん聞こえていなかった。
―――そして、この日から斎藤紅に追い回される事となろうとはまさか思ってはいなかった。
end
あゆちゃん
生徒会長親衛隊副隊長。男前(?)
斎藤紅
Fクラストップ。結構愉快犯。でも怒ったら危ない奴。




