無口会長は動物がお好き。
無口書記~の続き
「瑞希、終わった」
「ん」
狼が書類を手渡してきて、それを受け取る。
俺と狼と、あと、副会長君(元補佐君)と他の生徒会の先輩達は生徒会室にいた。
向かい合うようにソファに座って仕事をしていた狼と俺。
狼は不良だけど、頭がいいみたいで仕事も簡単にこなしてくれる。
それにしても、狼が生徒会室に居るのが何だか嬉しい。
そんな事を思いながら、狼をじっと見つめれば、
「どうした、そんなに見て」
そんな風に狼に問いかけられた
「ろ、ぅが、……せい、かい、しつ……いる、うれし、おも、った」
「そうか」
俺の言葉に、狼は嬉しそうに口元を緩めて、そして、俺の頭を撫でる。
狼に頭をなでられるのが何だか気持ちよくて、目を細めてしまう。
「…ろぅ」
「何だ、瑞希」
「おれ……の、しご、と……もう、すぐ終わる……から、お、ひるね……いこ?」
「ああ」
狼と一緒に居るのは、凄く好きだ。
仕事をさっさと終えて、俺と狼はよくお昼寝をする場所に向かっていた。
あそこは自然に溢れていてお昼寝には最適だ。
狼と一緒に、廊下を歩く。
「狼様と瑞希様だ…」
「瑞希様、かわいー…」
「宮城様、かっこいー」
「お二人とも本当に仲良しだなぁ…」
周りから向けられる目。
何だか狼と仲良しって言われるのが嬉しくて、胸が温かくなる。
思わず狼の制服の裾を握って、ぶんぶんっと振ってしまう。だって嬉しい。
「どうした、瑞希。嬉しそうだな」
「ん。ろ、うと、なか、よ…いわれ、うれし!」
「そうか」
「ん」
頬が緩む。
狼と仲良しになれたのが本当に嬉しい。
狼は本当に動物みたいで、喧嘩してる時も綺麗で、一緒に居るといつも楽しい気分になる。
視線を感じながらも、目的地に到着して、俺は草の上に寝転がる。
太陽の光が、上空に輝いていて、ぽかぽかして気持ち良い。
寝転がり、隣をぽんぽんと叩けば、狼も隣に寝転がった。
「瑞希って本当、お昼寝好きだよな」
「ん!」
自然に溢れた場所でお昼寝をするのが一番好き。
この学園は庭が広くて、寧ろ森っぽくて、だからこそ動物とかもいて、凄く好き。
「ろ、ぅといっしょ、だと、…ひと、りで、やるより……、なんか、たのし」
隣に寝転がる狼を見つめながら、素直にそんな気持ちを口にする。
「本当、可愛いよな、お前って。でもそんな可愛い事ばっかいってるといつか食われちまわねぇか本当心配」
「だい、じょ、ぶ。おれ、ろぅに…か、こん、な…こ、いわない!」
「…そうか」
「ん!」
頷けば、狼は俺の頭をなでてくれた。
だって実際そうなのだ。
俺が此処まで好きだなーって思う人間って狼以外いないし。
そもそも基本的に人ってそこまで好きじゃないから。
でも、狼の事は好き。
温かい日差しを感じながら、俺はそのまま眠りについた。
*
瞼を上げる。
目を覚まして隣を見れば、狼は眠ったままだった。
動物じみていて、だからこそ、狼の事かっこいいと思うし、綺麗だと思う。
堂々とした生き方に、その性格に、その雰囲気に、どうしようもなく惹かれる。
隊長に、そういえば聞かれたな。
”宮城様の事好きなんですか”って、恋愛感情で好きなのかって聞かれた。
正直、よくわからない。
正直に言うと俺は初恋もまだだ。
もちろん、遊んでも居ないから経験もない。
恋愛感情ってどんな感じかとかもよくわからない。
そもそも友情だろうと、人が好きだと思う感情なんてあんまり持った事がないのだ。
基本的に誰がどうしてようとどうでもいいし、惹かれることもない。
――だから、わからない。
でも、ただ一つ言える事は…、俺が、狼の事凄く好きで、一緒に居たいなって思ってるって事だけ。
恋愛感情とか正直よくわからないけど、狼とずっと一緒にいれればいいとそう思う。
end