リコールされました!
リコールされて喜んでいる愉快犯副会長
「たく、喧嘩なんて売ってくんじゃねーっつーの」
苛々しながら、俺――元副会長である、久我聖夜は隔離された不良クラスの集められたエリアを歩く。
俺は苛々していた。
さっきから馬鹿な不良共が俺を襲おうとしやがった。
あー、くそ。いや、確かに俺何故か一般クラスで王子様とか言われてて、胸糞悪い事に抱きたいランキング一位だったけど…。
何だか考えてて遠い目になってきた。
第一、男同士に今更偏見はないが、好きでもない奴にそういう目で見られるのは気持ち悪い。
もちろん、ぶちのめしたけど。
「ま、Fクラス行きは別に構わないんだけどな」
そう呟きながらも俺はアンチ王道転入生に惑わされて、落ちていった生徒会メンバーを思い出す。
俺が一人で義務だからと仕事をしていたっていうのに、でっちあげたセフレだの仕事してないだのの噂を叩きつけてリコールに持ち込んだんだよな。
いや、本当言いだす方も馬鹿だけど信じる方も馬鹿。
生徒達も本当変な噂信じ切って俺をリコールしてクラス落ちに持っていくものだから爆笑した。
人ってあんだけ尊敬の目で見てきておきながら侮蔑に一瞬で変えられるものなんだなーってな。
そんなことを思いながらも、二年F組の扉をガラッとあける。
さて、知った顔は…このクラスのはずだがいねーな。残念なんて思っていたらムカつく言葉が聞こえてきた。
「副会長さん、Fクラス落ちだなんて残念だねえ」
「俺たちにヤらせて……」
ガンッと次の瞬間俺は馬鹿なことをいうやつにその辺にあった花瓶を投げていた。
いや、俺は悪くない。
だって気持ち悪かったんだ。
周りが茫然と俺を見るがそんなの知るか。
はっ、確かにこの俺は所謂猫かぶりという奴で仮面をかぶってる俺はこんな真似なんてしそーにねーけどよ。
普通に考えてみろよ。まだ高校生の餓鬼で、誰にでも優しくて王子様スマイル(親衛隊命名)なんて浮かべるわけねーだろ。
そもそも俺ん家は確かに金持ちだが、割と庶民的で王子様みたいなの普通にそだたねーし。
「ふ、副会長さん?」
「え、えっと?」
髪染めて粋がってるFクラスの不良共の様子に俺は――、
「ぶははっ。何、その顔、マジうける。一般クラスに恐れられてる連中が一斉にぽかんとか!」
爆笑した。
いや、だって笑わない?普通に不良共が全員ぽかんって顔してるんだぜ?
何だか凄い愉快な気分になった。
いやー、親衛隊共が馬鹿の妄言信じて親衛隊解散した時も爆笑したけど、この顔もうける。
一通り爆笑した俺は、相変わらず周りにぽかんという顔をしたままだ。
「はは、お前らマジ何驚いてんのって感じなんだけど。実際に『腹黒でプライドが高くて美人で王子様』な王道副会長とか居るわけねーだろ? ま、俺以外はマジガチで王道生徒会で爆笑したんだけどさー。あれ素とか爆笑しねー?」
「…え、は? つか、演技って…」
「はは、君ら腐女子って人種しってる?」
「い、いや」
「俺の母さんと姉さんがそれでさ。腐女子って男同士のイチャイチャを見るのが大好きな人種なんだけどさー」
そうそう。
俺が王道とか知ってるのは腐ってるわけではない。
ただ母さんと姉さんが腐女子で、そういう知識は持ってんだよね。
時々俺で妄想してんのにはうんざりするけど、二人の事は普通に好きだよ。だって家族だし。
「この学園って、所謂腐った方々のいう王道学園って奴らしーの。
親衛隊があって、抱きたい、抱かれたいランキングにホモばっかっていう!
それでさー、此処に入学決まった時に『副会長やって』と頼まれちゃったわけ。何でもぴったりだからって!
で、俺も楽しいこととか大好きだしー? ちょっとノリノリで今まで演じてみたわけよ、オッケー?」
嫌なら断っていいって言われたんだけど、演技とか面白そうじゃん?
それに俺完璧主義だし? 演技するなら徹底的にってわけでやってたわけ。
親しい人も作らず、ばれないようにね。
この学園って変な奴多いし友達は出来なくてもいいかって思ったしな。
学外には俺友達結構居るし、寂しくはないしねー?
「…は、はぁ…そ、そうなんだ」
「うん。そうそう。それでさー。今転入生いんじゃん? 何か俺以外がぞっこんで色々あったじゃん?
あれってまんま腐った方々の読むアンチ王道って奴と一緒なんだけど。マジうけね?」
「…アンチ王道?」
「そうそう。そういうジャンルがあるわけよ。季節外れの転入生がやってきて、王道の場合はただの逆ハーで平和なの。
でもアンチ王道だとトップクラスの美形達が転入生に陥落して、親衛隊が荒れまくって、生徒会とか風紀とか仕事しなくなって、退学者とか出たり大変なんだよねー」
てか、あいつらマジ馬鹿なのかな?
俺アンチ君に「偽物の笑顔やめろ」と言われたけど、演技し続けたぜ?
だってこんな明らかに王道っぽいのに関わりたくないしー?
母さんも姉さんも俺の事大好きな親ばかとブラコンだから、気にいらない奴に無理して迫る必要ないって言われたもん。
だから副会長の演技してればそれだけでもいいって言われたんだよね。
でも何か他の連中馬鹿だから転入生に惚れてっちゃったけど。
「…確かにそのまんまだな」
「そうそう! それに惚れ方もマジ小説とか漫画のままだぜ?
俺様会長はなんか気にいった発言でキスして気にいる。
無口わんこ書記は自分の言葉を理解してもらって気にいる。
双子庶務は見わけてもらって気にいる。
下半身会計はセフレ駄目って言われてきにいる。
って、マジ馬鹿だとおもわねー?」
「それは同感なんだけど…。副会長って、何でFクラスに落とされて悲観してないわけ?」
「だって俺こっちきたかったんだもん」
一人に聞かれて笑顔で言ったら変な顔された。
ま、Fクラスって不良クラスだもんな。来たがる奴あまり居ないもんな。
「きたかったって…」
「副会長するのストレスたまるからな。義務で全員分完璧主義のこの俺は仕事をしてやってたけど。あのアンチ君だけは受け付けられなしー?
いい潮時かなと思ってさ。俺も面倒になってきたし?」
そうそう。俺って、わざと自分だけが仕事しているなんて主張しなかった。
大体さ、馬鹿の流した噂信じて俺をリコールしようなんてする親衛隊とか学園の奴らとかに助けを求めるとか絶対嫌だったし?
そもそも一人で仕事を全てやったのは、仲間意識からなんかじゃないし。
副会長やめるならそれでもよかった。
「それにさー、Fクラスって王様と姫様いるだろー?」
「王様と姫様って…」
「王様――久遠帝と姫様――奥村雪の事だよ!」
その名前を口にした瞬間、唖然とされた。
まぁ、あの二人ってFクラスのトップだもんな。
実は知り合いなんだけど。でも向こうは俺の事全然気付いてなくて同じ学園だなんて思ってないみたいだけど。
だって俺の演技は完璧だったからね! 生徒会がFクラスと関わる事なんてほぼないわけだし。
でも王様も姫様も勘良いから一対一で話してればばれたかもしんないけど!
「おま、奥村さんの事姫なんていったら殺されるぞ!」
「だいじょーぶ!」
今まで姫様って呼んでて怒られはしたけど、殺されはしなかったし。
なんだかんだで姫様も俺と仲良くしてくれてたからな。
ちなみに王様と姫様は不良チームの総長と副総長。
呼び名は『キング』と『白雪』。
つか通り名って本当にあんだね、って一番最初に知った時笑ったよ。
あ、ちなみに俺はストレス発散に夜の街にかりだしていた関係で知り合ったんだけどさ。
だってなぁ、ストレス発散しないとやってられないし。
あのバカ達(生徒会)と付き合っていくのストレスだし。
特に会長。あのサボり魔で、俺様具合に何度ボコってやろうかと思った事か…。
そもそもあれだ。男をセフレにして、粋がってる時点で引いた。
それで『親衛隊は最悪』と言い放ってるのもなんか引く。
自分だって最悪な事してんだから、人の事いえねーよなって。
まぁ、見ている分には楽しかったけど、知れば知るほど馬鹿なんだよな。
そんな事を考えながら、王様と姫様はやく来ないかなーと思っていたら、教室の扉ががらっと開いた。
そこから顔を出すのは男前な赤髪美形の王様と、黒髪の可愛らしい美少年の姫様だ。
二人とも相変わらず顔立ち整ってるよなと思う。
てか、二人は生徒会入れるほどなのにFクラスの不良だから入れなかったんだよな。
「王様、姫様、おひさしぶり」
俺はとりあえず笑いかけておいた。
気付かなかったら爆笑してやろうと思いながら。
俺の言葉に姫様が恐ろしい顔をした。
王様に関しては驚いた表情でこちらを見ている。
基本無表情の王様だからわかりにくいけど、驚愕って顔してるから気付いたのかなと期待する。
「…俺を姫だと? Fクラス落ちした副会長が」
「ぶはっ。やばい。姫様。勘鈍った? 直で話せばわかると思ったんだけどな」
姫様の反応に思わず吹きだした。
周りの連中固まって、俺に「何言ってんだ馬鹿」って目を向けてるけど一人滅茶苦茶笑った。
だって本当に姫様ってば何で気づかねーの? って感じ。
「あ?」
「……雪、こいつヒジリだろ」
「は?」
やっぱり王様は気付いていたらしいさらっとネタばらしした。
その瞬間、姫様は見たこともないようなぽかん顔。
また笑ってしまった。だっていつもキリッって感じの姫様がぽかんってしてんだぜ? うけるよなー?
何だか悪戯成功した気分。
「ははっ。大正解。流石、王様!」
「…ってはぁああ? ヒジリが副会長??」
ヒジリってのは夜の街でカツラ被って好き勝手ストレス発散してたころの俺の名前。
由来は本名が聖夜だから、聖を別の読み方しただけなんだけどな。
厨二な二つ名考えても楽しそうって思ったけど、名乗るの恥ずかしいだろ。
「姫様、凄い驚愕っぷりだな」
「普通に驚くだろ!!」
「王様は冷静なのに、驚きすぎだな。とりあえず俺これからFクラスだから学園でもよろしく、王様、姫様」
にっこりと笑ってやる。
しかし姫様は可愛らしい外見なのに本当口調は男らしいよなと思う。
ま、男で女みたいな口調だったらびびるけど。
「……え、っとお知り合いですか?」
俺らが会話を交わす中で沈黙していた周りの連中のうちの一人が声をあげた。
「ああ。副会長がヒジリとは思わなかったが」
「…まぁ、ヒジリが副会長なのはいいとして、説明しろ。何だあの『王子様』って噂されるヒジリは!」
上から王様、姫様の言葉である。
それにしても王様は基本的に本当に冷静だよな。
とりあえずさらっと二人に先ほどクラスメイトに説明した事を言った。
説明したら「腐女子ってあれか、充と同じ人種か」と姫様は遠い目をしていた。
ちなみに充ってのは姫様の弟らしい。
「まぁいい。ヒジリ、今からサボれ」
「俺初日なんだけど」
「いいから、ヒジリが来ないから帝が機嫌悪かったんだから」
そういって姫様に引っ張られtた。
で、その後は屋上(なんかトップとかしか入ったらいけないらしい)で王様と姫様と会話を交わした。
馬鹿生徒会は俺をリコールして邪魔者が消えたとか思ってたり、一般クラスの生徒達は俺が落ちぶれただのいって軽蔑してるらしいけど。
リコールされても俺は全然ダメージないし、ま、俺が居なくなって生徒会の仕事が停滞するだろうけど、俺には関係ないよな。
俺はこれから王様と姫様と一緒にFクラスで遊びまくるしな。
――リコールされました。
(でも俺にダメージなんてないし?寧ろ俺今からFクラスライフを卒業まで楽しむんだからな)
久我聖夜。
『王道副会長』を演じていた愉快犯。母と姉に腐女子を持つ。
完璧主義者で親しい人物も作らず徹底的に副会長を演じてた。
ストレスは他校の友人と遊んだり、夜の街で「ヒジリ」として暴れて遊んだりして発散してた。
ちなみに強い理由は母親が「自分の身ぐらい守るべき」といって娘にも息子にも武術習わせてたからも一つの理由。
元々基本何でもある程度出来る器用な人間。
自身の親衛隊が馬鹿な噂で解散したのを爆笑してた人。
久遠帝。
聖夜に王様呼ばわりされてる基本無表情な人。
聖夜の事は気にいってる男前美形。(恋愛感情かは謎)
Fクラスのトップであるチームのリーダー。
勘がよく、見ててヒジリ=聖夜と割とすぐに気づいた。
奥村雪。
可愛らしい顔立ちの美少年だが、性格はどちらかというとかっこいい。
ヒジリに姫様呼ばわりされてて、ヒジリとは友人関係。
Fクラスのトップ2で、チームの副。見た目に反して強い人。
多分今後、生徒会の無能さ露見して何かあっても聖夜は無関心にFクラスでの生活を楽しむと思われる。