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君以外要らないと、そう囁いて

全寮制の男子校。ホモやバイばっか溢れてるこの学園で有名なカップルが居る。

「蜜、蜜、蜜―――」

「んー、何、終夜」

教室で抱きついてる二人組。

いつもの光景だから誰もつっこまないけれど。

蜜――と呼ばれて抱きつかれているのは、どちらかというと可愛い系の少し背の低い男。

で、抱きついてる終夜って呼ばれた方は、この学園の抱かれたいランキングでぶっちぎり一位をとっちゃうような美形。

とはいっても、蜜といれないからって辞退してたけれど。

「――今日、担任と何で喋ってたの」

―――東海終夜トウカイシュウヤの異常性はこれだと俺は思う。

中田蜜ナカタミツが誰かと喋ってれば必ずいつもそれを問い詰める。

その目が本当に、見ている方からしても怖い。

ギラついた瞳。獲物を見逃すまいとしている瞳。

「んー? 連絡事項聞いただけだよ?」

平然とそういう中田は本当に凄いと俺は思う。

いや、だって俺なら本当に恐ろしくてんなの無理だ。

「…それだけ? 口説かれたりしてない?」

そして、中田の腕をぎゅーっと掴んでいる東海。いや、あれ口説かれたなんて口にしたらどうなるんだろうか。

怖くて正直聞けない。

「うん。本当にただ連絡聞いただけだよ? 大丈夫。俺は終夜しか好きじゃないから」

中田も中田で本当にはずかしがりもせずにそう言って笑うのだから、凄いと思う。

「そっか。俺も愛してる、蜜」

「うん」

「蜜の足も蜜の髪も蜜の手も――爪の先まで、全部俺のモノ」

ぞくっとするような、恐ろしくも妖艶な声。

「だから、他の奴に触らせないでね? 触らせたら、相手潰すかも」

「んー、嬉しいけど触っただけで潰しちゃだめだよ?」

「でも、蜜可愛いから、絶対触った奴欲情する。俺の蜜をそんな目で見てる奴が居るってだけで許せない」

「俺も、終夜にそんな目向けてる人いたら嫉妬するかなー」

「可愛い、蜜」

こんな所で抱きしめたまま甘い言葉を吐いて、頬へとキスを落とす。

本当、甘すぎて、何だか見ていて恥ずかしい。

まぁ、甘いのもそうだけど、東海の恐ろしい台詞をさらっと受け止めてる中田がある意味凄すぎて、何とも言えない気持ちになる。

この学園に東海と中田が入学した時(二人とも外部生)、既に二人は付き合っていた。

東海には直ぐに親衛隊が出来て、それでまぁ、中田が呼びだされる事件が起きたんだが、その時は親衛隊はただ注意と軽い警告のために来たんだが、……一人が強く中田の腕をつかんでる時に東海が来たらしい(俺は見てないから詳しくは知らない)。

それで、東海が、切れた。

しかも、中田の腕につかんだ後がついていたものだから、それはもう恐ろしかった。

『―――蜜に跡をつけていいのも、蜜を喜ばせていいのも、蜜を傷つけていいのも、全部俺だけなんだよ』

そんな事を言い放って、恐ろしいくらいの笑顔を浮かべていたのだ。

東海にとって、中田の中に印象づく存在は全員嫌いらしい。

『俺だけ、その胸に刻んで。他の奴の事なんて考えないで』

そういって、東海は教室で爪立ててたからね、中田の皮膚に。

「俺以外と話さないでね、蜜」

「うん」

「蜜には俺だけいればいい。だから、俺以外に興味を持たないで」

「うん」

「俺にも、蜜だけが居ればいいから」

「うん、俺も、終夜だけしかいらないよ」

中田は、東海の発言に、笑ってそれを受け止めた。

他の人と喋るな、

興味を持つな。

それは紛れもない束縛なのに、中田は苦にもしないと言った様子で、幸せそうに笑うのだ。

前にクラスの一人が、中田に「つらくないのか?」と聞いた事がある(後に東海にばれて軽く脅されてたのを目撃した)。

それに対して、中田は笑っていったんだ。

『俺は、終夜が好きだから』って、そういって、笑ったんだ。

迷いもない瞳でそういうから、正直言って、恋人がいるっていいなぁとか俺も羨ましくなった。

本当に、仲良いよな、と思いながら俺はくっつきあう東海と中田を見る。

二人は、幸せそうに笑っていた。

―――見ていて、何だか羨ましくも、幸せになる二人。

――ずっと二人が仲良ければいいのに、そうクラス総出で思ってる。

まぁ、もちろん、二人が別れたら東海が恐ろしそうっていう恐怖心もあるけれども。

純粋に、仲良くあってほしいっていう、そんな思いがあるんだ。



end


中田蜜

終夜の恋人。結構恐ろしい発言されても平然と返事を返すから凄い。

可愛い系。でも、顔は普通。


東海終夜。

抱かれたいランキング、ぶっちぎり一位の美形。

親衛隊の規模も生徒会より大きい。蜜大好き。

蜜には自分だけいればいいという恐ろしい思考。


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