君は今日もあいつ命、で、俺は今日も君を見てる。 3
「折角会長様が呼んでくださったのに…」
「そう言う事もあるって」
この前の夜の呼びだしに行けなかった事に泣きそうな顔をしている梓に俺はそう言う。
ま、俺が睡眠薬盛ったから梓は行けなかったわけだけど。
だってなぁ?
梓の処女をあんな会長にやるなどと俺は許せない。
寧ろ俺が奪ってやりたい。
今、俺ちは教室に居る。
泣きそうに歪んだ梓の顔も可愛いと思う。
その表情を浮かべさせられるのが俺だったらいいのにと思う。
だから会長は嫌い。
梓の心を奪ってる会長なんて本当むかつく。
浜中は、そんな俺と梓を見て苦笑いを浮かべていた。
ま、睡眠薬の事知ってるし、それでだろう。
でも、本当あんな会長何かに梓の事やれるかっつーの。
本当、どうしたら梓の事俺は手に入れられるんだろう?
会長がもっとこっぴどく梓にあたればいいのに。
そうしたら、弱ってる所を俺が手に入れるっていうのに。
もっと、梓を手に入れるために色々計画を練らなければ…。
他の奴になんて死んでもやりたくない。
ずっと好きだったからうまく計画して、タイミングをはかって梓の事を手に入れる。
そのために会長は邪魔だ。失脚させて、梓に幻滅させるべきか…。それともやっぱり、こっぴどく梓に強く当たってもらって優しくする作戦か…。
会長の使い様をうまく考えて、梓を手に入れなければ…。
振られたら気まずくなるから告白のタイミングもきっちりはからなきゃいけないわけで…。
「里桜、聞いてる?」
「うん、聞いてる。残念だったな、食堂のパフェおごってやるから元気出せよ」
「え、本当!?」
おごるの言葉に目をキラキラさせて喜んでいる梓は可愛かった。
ああ、本当、ドロドロに甘やかしてやりてぇ。
「中里君…君って…」
何だか近くの席に座っている浜中がぼそっと何かいって呆れているし、
「……何か食われそうだよな。そのうち」
「里桜って腹黒いしなぁ」
何だかクラスメイトがそんな風に囁き合っているけれど、
「パフェたのしみー」
にこにこと笑っている梓は気付かない。
ああ、本当可愛い。
で、まぁその後梓にパフェをおごって、梓の可愛い笑顔見れたから大満足だったわけ。
だけど、梓と別れて、学園の情報屋にでも会長脅すネタ売りつけてやろうかなーなんて思ってたら、
「……な、中里里桜!!」
何故だか会長に遭遇した。
何でだ。何て言う不運なんだ。
俺は会長なんて視界にいれたくもない。
だって、憎き相手だし、寧ろ。
梓の心をこんな奴が掴んでいるなんて本当むかつく。
情報屋の隠し部屋は裏庭にある森の中に存在しているからそちらに歩いてたら、何か会長がやってきたわけ。
「…何?」
「ちょ、ちょっと来い」
「あ? いやに決まってんだろ。会長邪魔。何? また梓を夜にでも誘おうっていうのか? それならとことんぶっ潰すけど?」
「ち、違う」
何でどもってんだ。会長気持ち悪いな。
何か胸糞悪くなってきた。
めんどくさいなぁ、と息を吐く。
しかし本当に何の用だ。
「お、俺は――」
「…何どもってんの。気持ち悪い」
蔑むような目で見てしまったのは仕方ないと思う。だって死ぬほど気持ち悪い、この会長。
俺は会長が嫌いなんだ。そんな会長がどもってるなんて苛々する以外何もない。
もちろん、梓がどもって何か話しかけてたりしたら可愛いと思うけど。
「お、お前が好きだ」
「は?」
何を言ってるんだ、こいつは。気持ち悪い事を口にして…。
「だ、だから俺はす―」
「ごめん、吐くからやめてくんない?」
何その冗談である、内心は。
何で俺が会長何かに告白されなければならない。
いやー、気持ち悪い気持ち悪い。
本気で吐きそう。吐いていいかな?
「な――」
傷ついたような会長を見て、いい事が思いついた。
「ねぇ、会長俺の事好きなら梓に嫌われてくれない?」
会長自ら梓に嫌われる行動をさせればいいんだという、迷案を思いついた。
「き、嫌われる行為?」
「そう、俺は梓が会長を思ってるのが凄くいや。思いっきり梓の事傷つけてよ」
にっこりと笑ってそういってやれば、会長の表情がぴくりと固まった。
「……お前は、周防梓が、好き何では?」
「ふぅん、知ってたんだ? そうだよ。好きだからこそ、傷つけてほしいといってんの。
そうしたら俺がドロドロに甘やかして手に入れられる」
「そ、そんなものの協力はしない! 俺はお前を好きといっているだろう! それなのに協力をするはずは――」
「へぇ? じゃあ秘密ばらしていいのか。ついでに合成写真でも作ってネタにしてやろうか?」
「お、お前――」
「やらないなら、俺は二度と会長とは口聞かない」
「――っ」
好きな奴と話せないのがつらいことだと知っている。
だからこそ、俺は残酷な言葉を放つ。
「――な、何てひどいやつだ!!」
「そんな俺を好きだとか戯言はいたの会長でしょ? で、イエスかノーどっち?」
「……わ、わかった」
「うん、オッケー。じゃあ、思いっきり梓の事傷つけて、嫌わててくれよ」
にっこりと笑った俺。
そして目の前で顔を歪めてる会長。
ひどいとでも何とでも言えばいい。
―――俺は、何としても梓を手に入れたい、ただ、それだけ。
end