轟学園物語―story1会長の恋人―
同じ学園の物語を書きますので、こんな題名です。
最近、この学園で噂になっていることがある。
それは、”会長様の恋人”の事だ。
この学園の会長は、抱かれたいランキング第一位を獲得している絶世の美形だ。
かっこいいとも美しいともとれる顔の作りや、他の生徒会と違ってセフレとの噂もない真面目っぷりに親衛隊員はますばかりである。
そんな会長様が、先日熱く告白してきた生徒にこう答えたらしい。
『俺には大事な子がいるから』と。
それ以来、その大事な子とは誰だと学園ではすっかり噂になっている。
俺は特にそれに興味はない。
何故って――、俺四賀義樹がその噂の恋人、本人だからだ。
奴…会長である東雲一矢とは初等部からの仲だ。中等部に上がって、奴には親衛隊が出来たから影でこそこそ遊ぶようになっていたのだが(元々親友だから)、何をとちくるったのか一矢は中等部の時に俺に告白してきた。
その頃には学園で一番大きな親衛隊持ちであり、中等部の生徒会長を務めていたというのにだ、いきなり俺に告白してきたのだ。
びっくりする他ない。
俺は運動神経には自信があるが、勉強はそこそこだし、顔もいいわけではない。
寧ろ親衛隊持ちとか別次元だ。
まぁ、しかしだ。俺はこの学園に昔から通っててすっかりホモとかゲイとかになれきっていたし、あんな美形に毎日のように愛をささやかれて落ちてしまったわけである。
「義樹」
寮室の中に低い透き通るような声が響く。
声の先に居るのは、俺の恋人であり生徒会長を務める一矢だ。
艶のある黒髪に、キリッとした顔立ち……、一言で美形と言える外見をしている。
背も高いし、護身術も習ってたらしいし、勉強もできる。
それでいて気配りができて、優しい。
「一矢」
俺は名前を呼べば、一矢は嬉しそうに頬を緩ませる。
俺が座っているソファに近づいて、その横に躊躇いもせず腰掛ける。
「義樹、義樹、義樹――、会いたかった」
「たった三日ぶりだろ?」
「…でも、俺は義樹に会いたい」
何て、甘い顔して言われてみろ。誰でも落ちると思う。
一矢は周りに優しい。
でもその優しさは特別だからではない。
どうでもいい奴らだからこそ、平等に優しくするのだ。
付き合いだしてからわかった。
俺が、一矢の”特別”なんだって。
気付いたら一矢の事を手放したくなくなった。
もっと、もっと好きだと思った。
こいつは、俺を求めてくれている。
こいつは、俺を優先してくれている。
それだけで、俺は愛されてる実感がして、満たされる。
「そうか…。ところで、何で大事な子がいる、何ていったんだ?」
「……しつこかったから。俺には義樹がいるのに、他の奴は要らない」
優しい会長様が、”要らない”なんて言っているのを聞いたら親衛隊の一員達はどう思うだろう?
一矢が優しいのは誰にでも。なのに、たまに勘違いする奴が居るから困ったものである。
「―――義樹、愛してる」
「うん、俺も」
ぎゅっと抱きしめてきた一矢にそう返す。
「義樹――…」
一矢がこんなに甘い声を出すのは、俺だけ。
一矢がこんなに優しい顔をするのは、俺だけ。
一矢が、求めているのは俺だけ。
それだけで、どうしようもなく一矢を愛しく思う。
一矢は俺の。
きっと、こんな一矢を知っているのは俺だけなんだ。
―――学園では会長の恋人の噂が充満してる。
でも、それが俺だと知る人は居ない。
end
四賀義樹
初等部から居ます。人にあんまり興味ないけど、一矢とは昔から仲良かった。
でも平凡顔で色々面倒だから隠れてあってて、告白されてそのまま落ちてラブラブ。
広くて浅い交友関係。あんまり仲良い人を作らないのが基本な人。
東雲一矢
生徒会長。優しい。結構平等だけど、義樹だけは特別。
昔から義樹大好き。寧ろ愛してる。
他は要らないらしい。