親衛隊隊長=愛玩動物 4
「竜一君、どうしたの?」
「いや、何でもねぇ」
ここ最近、竜一君が何だか変だ。
どうしたんだろう?
なにか悩み事があるなら聞いてあげたいって、そうおもったんだけど、竜一君は話してくれない。
僕ってそんなに頼りないかな、ってへこんでしまう。
悩み事があるなら、聞いてあげたいのになぁって。
僕って頼りないのかな。それを思うとなんか悲しい。
「幸ちゃん、どうしたの?」
「隊長、浮かない顔してどうしたんですか?」
「幸先輩、悩み事ですか?」
竜一君は、何で悩みを僕に話してくれないんだろう、そんな事を思ってたら暗い顔をしていたらしい。
あゆちゃん達が心配そうに僕を覗き込む。
「あのねー、最近竜一君が少し様子がおかしいの。
だから僕悩み事なら相談してほしいけど、いってくれなくて…」
そういって、親衛隊の子達を見る。
「あー、悩みって…」
「竜一様、結構ヘタレですよね」
「隊長、それは気にしなくていいです。いつか絶対わかりますから」
「さっさと言えばいいのに」
親衛隊の子たちが何か言っているけど声が小さくて聞こえない。
「幸ちゃん、とりあえず、竜一様の悩みは近いうちにわかると思うから気にしなくていいよ」
結局あゆちゃんにそういわれて、僕は少し不服だったけど、頷く。
*
結局竜一君の悩みわかんないなぁ。力になってあげたいのになと思いながら僕は一人で廊下を歩く。
あゆちゃん達は心配だから一人で行動しないようにっていってたんだけど、ちょっと職員室に行くだけだし、皆他の事してたからいいかなって思って一人でいる。
何でも一人になると狼さんに食べられちゃうかもなんだって。人間って食べられるものなのかな?
そうやって歩いていれば、
「あれぇ、もしかして君って会長の親衛隊隊長じゃない?」
「可愛いなぁ。一人?」
ピアスをつけた不良さん二人に絡まれてしまった。
「なにか用ですか…?」
怖い、と思いながらも返事を返す。
「かわいー。脅えてんの?」
「ね、俺らといい事しよ」
「え? え?」
いい事って何だろう?そうおもってる間に僕は腕を引かれて空き教室に連れ込まれてしまった。
空き教室に連れ込まれ、おろおろしている僕を二人が見下ろす。
「あ、あの、何か用ですか?」
「何って、君が会長といつもしている事だよ」
「そうそう、気持ちよい事しようぜ」
竜一君としている事…? そういわれてもよくわからない。こんな空き教室で何をするというのだろうか。
「えっと、竜一君としている事って?」
基本的に竜一君とはお話するか、一緒にゲームするか、勉強見てもらうかとかそういう事しかしていない。
空き教室にはゲームとかないし、何するんだろう?
「何、それ演技?」
「君が会長のセフレって事はわかってんだよぉ?」
「えーっと?
セフレって何ですか?」
「「は?」」
僕の言葉に驚いたようにこちらを見る二人組。
「え、マジでいってんの?」
「は?」
「え、っと、本当にわからないんですけど…。あゆちゃんとか竜一君とか親衛隊の子達も意味教えてくれないし…」
わからないことあるのなんか嫌だし、自分だけわからないの嫌だから聞いたのに、誰も教えてくれないんだよね。
どうしてなんだろう? 僕の言葉に二人組は驚いた顔をしたまま、恐る恐る問いかける。
「あーっと、じゃあ君が会長の部屋に通ってるってのは?」
「竜一君の部屋ですか? 遊びにいきますよ。あとご飯作ったり。竜一君の作ったお菓子食べたり。竜一君って何でもできるんですよ。チョコレートケーキとか美味しいんです。ゲームとかもやったりするんです」
笑ってそう答えれば、目の前に居る二人は信じられないという顔をする。
「ゲーム?」
「え、会長がお菓子つくんの?」
「しかも、健全すぎね? え、会長って親衛隊セフレにしてんじゃねぇの?」
「つか、この子超可愛いんだけど。セフレ知らないし」
何だかこそこそと口にしている不良さん達。
「親衛隊の連中と会長の関係ってどんなんなわけ?」
「え、普通にお友達ですかねぇ。皆でお茶会開いたり、ゲームで徹夜したり、出かけたりしますよ」
「……制裁とかしてないわけ?」
「制裁、って他の親衛隊が”~様に近づくなんて”っていってやる意地悪ですよね。
僕、人に意地悪するの嫌いですから、やりませんよ。
他の親衛隊は大変みたいだけど、竜一君の親衛隊の子って皆優しいんですよ。お菓子くれるし、僕の頼み聞いてくれて、皆大好きなんです」
親衛隊の皆の事僕大好き。
優しいし、皆いい人達ばかりだし。
「……この子親衛隊に愛でられてる?」
「健全すぎて、びっくりなんだけど、俺」
「ところで、何で不良さん達は僕を此処に連れ込んだんですか? 僕職員室にいかなきゃいけないんですけど」
何だか驚いている不良さん達にそう言えば、二人は慌てて言う。
「いや、もういいよ」
「不良さんって、可愛いなぁ…。うん、無理だ。こんな子襲えない」
「だよな…。やべぇ、この子と話してたら今までの事に罪悪感が…」
「用事ないんですか? じゃあ…」
なにかいっている不良さん達に僕が口を開いた時、バンッとその扉が開く。
「幸!」
「幸ちゃん!!」
「隊長、大丈夫ですか!?」
慌てたように入ってくるのは、竜一君とあゆちゃんと親衛隊の子達。
どうしたんだろう、そんなに慌てて。
「大丈夫って、何が?」
「幸が、不良に連れ込まれたっていうから、襲われてんじゃないかと思って…」
「竜一君、連れ込まれはしたけど、お話してただけだよ? でもなんかちょっとお話したら用事ないんだって」
僕がそういえば、周りが騒ぎだす。
「それって、襲おうとして連れ込んで幸ちゃんの可愛さに襲えなかったって事かな?」
「副隊長、それは仕方ないでしょ! 隊長は超可愛いんですから。こんな小動物襲うなんてきっとこの不良たちも罪悪感芽生えたんでしょ!」
「あー、襲うの意味わかてない秋田先輩超可愛いー」
結局襲うって何なんだろう?
なんて思っていたら竜一君に頭をなでられた。
「まぁ、無事でよかった」
竜一君に頭をなでられるのは好きで、思わず頬が緩む。
「隊長かわいー!」
「竜一様ずるいです! 僕らも頭なでまわしたいです」
「あー、竜一様、幸ちゃん先に返しといて。こいつらにお話あるから」
「ああ。幸、いこうぜ」
「うん」
よくわからないけど、あゆちゃん達は不良さん達とお話があるらしいから、僕と竜一君はそのままその場を後にした。
竜一君と一緒にそのまま、職員室に提出物を出して、竜一君の部屋への向かった。
竜一君は黙ったままだ。
本当に最近の竜一君はどうしたんだろう?
「竜一君、どーしたのー?」
背の高い竜一君を下から見上げるようにそういえば、竜一君は何故か顔をそらす。
「……上目遣いの威力半端ねぇ」
竜一君がなにか言ってるけど、小さくて聞こえない。
何で僕の方見てくれないんだろう?
僕、嫌われたのかな…なんて悲しくなって思わず問いかける。
「竜一君、顔そむけて、僕の事嫌いになったの?」
「そんなわけないだろ」
「でも…、最近様子おかしいし。悩み事あるなら、僕相談してほしいよ。友達なのに…」
下を向いてそういえば、
「友達とは思ってねえ」
なんてそういわれて、ますます悲しくなる。
僕だけが、友達って思ってたのかなぁって。
「やっぱり竜一君僕の事――」
「違うから、はやまるな、幸。友達とは思ってねえけど…。
その…俺は、ゆ、幸の事す、好きだ。恋愛感情で!」
早口で言われた言葉に僕は固まった。
「え…?」
「だから、俺は幸が好きだ。最近、おかしかったのは、告白しようと思って、タイミングつかめなくて困ってただけ、わかったか?」
「え、ええ?」
そんな事言われるとは思ってなくて、顔がぼっと赤くなるのがわかる。
りゅ、竜一君が、ぼ、僕の事好き!? え? そんなこと欠片も思っていなかったから驚いた。
「え、えっと…」
「あー。返事はいらねぇよ、今は。幸、俺の事そういう風に見てないだろ?」
「僕、あの、人をそういう好きになった事ないから、わかんない」
そう、僕は初恋もまだなのだ。
恋愛感情とかそういうのはよくわからない。
だから素直にそういえば、竜一君は笑った。
「わかってる。でも、これから考えてくれ」
「う、うん」
―――僕は戸惑いながら、竜一君の言葉に頷くのだった。
end
―オマケ(幸達が去った後―会話のみ―)―
「で、お前ら幸ちゃん襲おうとしたんでしょ?」
「あ、ああ」(何この子こえぇえ!?)
「で、でも襲ってないからな! あんな可愛い子襲えない」
「当たり前でしょ!」
「当たり前です。隊長を襲うなんてしちゃいけません」
「秋田先輩は我が隊のマスコットなんですから!」
「あんな天使を襲おうなどと…」
「ま、襲ってないなら、いいけど。二度と襲おうとしないでな? したら完膚なきまでに潰すから」
「わー、副隊長かっこいい!」
「歩先輩幸先輩の保護者みたいですもんねー」
「ああ。もちろんだ。だけど、あんな純粋な子いたんだな…」
「幸ちゃんは凄く可愛いですからね。あ、幸ちゃんの可愛さにやられたなら親衛隊入る?」
「は?」
「うちの親衛隊、竜一様を崇拝してる人より幸ちゃん愛でてる子が多いから。
寧ろ幸ちゃんに危害が加わらないように会議してるし」
「は?」
「で、入る?」
「あ、ああ」
―end―