気まぐれな猫と飼い主 3
今、俺は栄司さんの通う学校の中に居る。
家がお金持ちでよかったと心の底から思う。だからこそ栄司さんと同じ学校に通えるんだ。この学園、学費が滅茶苦茶高いから。
凄くうれしい。
今日は入学式。
栄司さんとは、ちょっと久しぶりに会うんだ。
なんかね、栄司さん生徒会長に選ばれちゃったんだって! だから忙しくてしばらくこれなかったんだって。
この学校何だか抱かれたい、抱きたいランキングで生徒会決まるんだ。それで、ホモとかバイがいっぱいいるんだって。
それにしても、栄司さん、人気者なんだな。流石栄司さん!!
栄司さんの学校での姿とか見れるとか、もうそれだけで俺幸せ。あー、制服姿の栄司さん超かっこいいんだろうな。
駄目だ、ニヤニヤが止まらない。
さっきメールで、今体育館だよーっていったら、上から見つけるって返信きたんだ。
もう、かっこいい栄司さんを目に刻まなきゃ。
あーというか、写真とってもいいのかな?
入学式のかっこいー栄司さんとか超写真に欲しい。
「お前、見ない顔だな」
早く入学式始まらないかなーとか、栄司さんみたいなって思ってたら声をかけられた。
そこにいたのは、ちょっとかっこいい系の男子生徒。
周りの生徒たちはその子にきゃーきゃーいっている。あと俺にも。その男子生徒も俺もこの学園で見た目が良いほうっぽい。
「うん。俺外部入学だからね」
栄司さん栄司さん栄司さん、はやく栄司さんに会いたいよーっと楽しみで仕方なくてにこにこしてしまう。
「そうか。俺は畠山徹だ」
「俺は秋川昌だよ。よろしく」
にこにこ笑っていえば、
「お前…何かこの学園に居て危なそうだな」
としみじみと言われた。
「危ない?」
「ああ、お前この学校の特色しってるか?」
「ああ、バイとかホモばっかって奴?」
どうやら俺は襲われないか心配されているらしい。徹っていいやつだなー、初対面の俺の貞操心配してくれるだなんて。
「知ってるのか…」
「うん、此処に通ってる人に聞いたもん!」
あー、早く入学式始まらないかなぁ。
栄司さんをはやくみたい。駄目だ、頬がどうして緩んでしまう。
「知り合いい―――」
そうやって徹が話しだそうとする中で、
『これより、第××回入学式を始めます』
そんなはじまりの言葉が響いた。
理事長のあいさつとか、新入生代表のあいさつとか色々あって、そうして――。
『生徒会挨拶』
……栄司さんの出番がやってきた。
「きゃああああ――――」
「龍院堂様ぁあああ」
「副会長様ぁああ」
「あきちゃーん!!」
「かっこい――」
「抱きたい!!」
生徒会が登場した途端、周りの生徒たちはそれはもう騒ぎ始めた。
おぉ、栄司さんに聞いていたとはいえ、凄い音量だ。
『生徒会長の龍院堂栄司だ。まぁ、学園生活楽しめ』
ああ、かっこいいよ。栄司さんかっこいい!! 制服超似合ってる。栄司さんの挨拶をしながら思わず顔に熱が集中するのがわかった。
目があって、栄司さんがこちらに笑ってくれて、
「キャーーッ」
「会長様がこっち見て笑った」
周りがかなり騒いでるけど、あれ多分俺見つけて笑ってくれたんだよなぁと思う。
はやく、はやく、栄司さんの胸に飛び込みたいよ。思いっきり抱きしめてほしい。
久しぶりだから、思いっきりくっつきたい。
そんな風に栄司さんにくぎ付けになっていた俺は副会長達の紹介も聞いてなかったし、徹が何かいってるのも聞いていなかったし、結局写真を撮るのを忘れてしまっていた。
そうして、徹と同じクラスだったんで、徹と一緒にクラスへと向かう。
そんな中で、
「…昌さ、さっき会長にくぎ付けだったな。惚れたか?」
何ていわれた。
「ん? 栄司さんには昔からずっと惚れてるよ?」
「は? 知り合い?」
「うん、知り合いだよー。栄司さんが居るから俺此処に来たんだもん!!」
にこにこと笑って俺はそういう。
栄司さんの事語るってだけで俺幸せ。栄司さん本当かっこいいんだもん。
「栄司さんね、超かっこいいもん。昔から。栄司さんねー」
と、ずっと教室につくまで俺は栄司さんの良さを徹に語っていた。
*
「お前って、本当に会長の事好きなんだな?」
教室に到着する頃には、徹はもううんざりしたようにこっちを見ていた。
「当たり前じゃん。栄司さん以上にかっこいい人居ないし。栄司さんいつもかっこいいし。俺の事うんと甘やかしてくれるんだぁ」
「…は?甘やかす? あの他人に興味ない会長が?」
あー、そういえばと栄司さんについてずっと語ってて、付き合ってるなんて言ってなかったことに気付く。
栄司さんってあんまり他人に興味ないもんね!
そんな栄司さんが俺を甘やかしてくれるだけで、凄く嬉しい。
「あのねー」
そうして俺は栄司さんのモノなんだよ、って言いかけた時、周りの生徒達と前でべらべら喋っていた担任がざわめいた。
「え、嘘。何で会長様が!?」
「龍院堂様だ、かっこいー」
「キャーーー!!」
なんて声と同時に響くのは、
「昌」
俺を呼ぶ、大好きな栄司さんの声。
「栄司さんっ!!!」
窓際の席に座ってたんだけど、栄司さんの声が聞こえて、俺は席から立ち上がってそのままドアの所に立ってる栄司さんに抱きついた。
周りは驚いたように固まっているけれど、そんなのどうでもいい。
「栄司さん、久しぶりー!!」
栄司さんにぎゅーっと抱きつく。
栄司さんのにおいだぁ、と思って凄く嬉しくなる。
「久しぶりだな、昌」
「うん! 入学式ねー、ずっと俺栄司さんの事見てたよ。制服超似合っててかっこいいなーって釘付けになっちゃったもん」
栄司さんに会えた事が嬉しくて嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。
「俺も昌見つけたぞ、上から」
優しく笑ってくれる栄司さん。
あー、かっこいいよー、栄司さん!! どうして栄司さんはこんなにかっこいいんだろうか。
「か、会長様が笑ってる!?」
「え、会長様が抱きつかれて怒らないなんて…」
「つか、あの子凄く幸せそうな顔してるんだけど…」
静まり返っていた教室が一気にざわめく。栄司さんの笑顔にざわめいているらしい。気持ちわかるよ。だって栄司さんの笑顔は破壊力が高いからね。凄いきゅんってくるんだよー。
「栄司さん栄司さんー」
「ん? どうした昌」
「栄司さんがね、こんなに近くにいるんだなぁって凄く嬉しいんだぁ。それに今日から栄司さんと同じ学校だよ!俺もう凄く嬉しい」
「そうか。昌は可愛いな」
栄司さんに頭を撫でられて、凄く幸せな気分になる。
「えー、龍院堂様が可愛いとかいってる」
「キャアーーかっこいい、会長様…」
周りが騒がしい。まぁ、栄司さんかっこいいから仕方ないけど、なんて思いながら栄司さんに抱きついたままでいると、
「えーっと、昌。会長とどんな関係だ。説明しないと周り煩いぞ」
徹にそんな言葉を言われた。
「何って付き合ってるんだよ。俺栄司さんのモノだもーん」
栄司さんのものだって、言える事が凄く嬉しくて頬が緩む。
「うそ、付き合ってるぅ!?」
「…まぁでも会長様があんなに笑ってるならちょっと納得」
「くっ、納得何てしたくないけど、あの子可愛いしぴったりで、悔しい!」
「嘘だと言ってください。龍院堂様ぁあああ」
「えぇ、あの子俺狙おうと思ってたのに会長のもの!?」
周りが騒がしくなって、思わず抱きつく手を緩めて耳をふさぐ。
「うー、煩いね、栄司さん」
「おい、お前らちょっと黙れ」
お、栄司さんの言葉にぴたっと声が止む。
わー、流石栄司さんだ。
「あと、昌は俺のだからちょっかい出すなよ。出したらわかってるよな?」
「栄司さんかっこいー。俺栄司さん以外興味ないから安心してていいんだよ。栄司さんも俺以外可愛がらないでね? 俺拗ねちゃうよ?」
栄司さんを見上げてそういう。
俺が栄司さんのものなんだって実感する度に嬉しくて嬉しくて、栄司さん大好きって気持ちでいっぱいになる。
「可愛いな、昌」
「栄司さん、大好きーっ」
栄司さんに頭なでられるの大好き。甘やかされるの大好き。
「何あの、幸せそうな笑顔…」
「か、可愛い」
「会長が誰かといちゃついてる所見れると思わなかった…」
「あの笑顔なんかくる…っ」
周りがまた騒いでいる。ふふ、栄司さんはかっこいいんだよー。
「昌と会長、担任も困ってるからとりあえず、離れたらどうですか…」
「あ? 何だお前」
「栄司さんー、この子お友達になった徹だよ」
栄司さんに撫でられて幸せだなぁって思ってたら徹が俺たちに向かって担任が困ってるといってくる。
うん、確かに担任の先生あたふたしてる。
「昌の友達か…」
「はい、まさか、会長と付き合ってるとは思いませんでしたけど…」
栄司さんと徹が話してる中で、俺は栄司さんをじーっとただ見ていた。
なんか栄司さん見てるだけで、俺幸せ。
目の前に栄司さん居るんだなぁって思うと嬉しくて仕方ない。
「昌、終わったら生徒会室こい。俺そこいるから」
「うん、わかった。栄司さん。終ったらすぐいく!」
嬉しくてにこにこしながら頷く。
それを確認して栄司さんは俺の頭を軽く撫でて、そのまま去っていく。
あー、栄司さん後ろ姿もかっこいい。
「おーい、昌、何ぼーっとしてんだ。戻ってこい」
「栄司さんかっこいいなぁ、って思って」
「本当、お前会長大好きだな…。とりあえず、席つこうぜ。担任困ってるから」
そう徹に言われて、俺はそのまま席について、はやく終わらないかな、栄司さん所行きたいな、と胸を高鳴らせるのであった。
end
―オマケ(生徒会室にて、副会長side)―
「新しく補佐いれるから」
「へ?」
いきなり言われた言葉に私だけではなく、他の生徒会のメンバーも何を言っているんだとでも言う風に会長を見た。
「俺の恋人が入学してきたんだよ。いれてもいいだろ? つか、拒否権はねぇ」
「はい? 恋人ですって?」
「え、会長恋人いたの?」
「「えー?」」
「…び……く、り」
次々に口を開く私たち。
本当に会長に恋人がいたなんて全然知らなかった。
「しかし、いきなり生徒会補佐なんて…、反感持たれませんか?」
「あ? それは心配ねぇよ。あいつ人に好かれる性格してっから。親衛隊とも多分仲良くなると思うぞ」
「ふーん。まぁ大丈夫なら、いいけどぉ。その子補佐になるの納得してるの?」
「まだいってねぇけど、昌は絶対断らない」
会計の問いにそう答える、会長。
絶対断らないって、何を根拠に言っているんでしょうか。
なんて思っていたら、会長のスマホがなった。
「昌か、どうした?」
『…』
「今開ける」
生徒会室は役員のカードキーとか、そういうのでしか開けられないから生徒会室の前で困って電話したらしい。
それにしても、会長の声がなんか優しくて正直私は驚いてしまった。
会長が扉をあけると、
「栄司さんっ!」
凄く嬉しそうに会長に近づく少年が居る。
茶髪の髪をなびかせた、背は低くもなく、高くもない、そんな子である。
会長を見て嬉しそうに笑う姿は、何だか見ていて和みそうになるほどだ。
何て幸せそうな、可愛らしい笑みを浮かべるんだ、と正直思った。
「栄司さん、俺栄司さんに会いたくて終わってすぐきたんだよー」
「そうか」
会長が、その子の頭を撫でれば、その子は本当に嬉しそうに笑う。
「昌、生徒会補佐なんねぇ?」
「補佐?」
「ああ。そしたらずっと一緒いられるぞ」
「やる! そっかぁ。役員専用のものとかあるっていってたもんね。栄司さんと一緒にいれるなら、俺喜んでやるよ」
何と言うか、この子、会長にべたぼれ…?
私たちが居るのにも全然気付いていないみたいだし。
というか、会長が誰かの頭なでるような場面見る事になるとは思わなかった。
「まぁ、親衛隊がなんかいってくるかもだが、お前なら大丈夫だろ」
「親衛隊って栄司さん大好きな人達でしょ? だったら俺とお仲間だもん。俺栄司さんだーいすき」
…というか、はずかしくないんでしょうか。
「会長の恋人会長にべたぼれだねぇー」
「…ん、ラブ、ラブ」
「「てか、あの子こっち気付いてないよねー」」
そうして、会長の恋人が私たちに気付くまで、私たちは会長のいちゃつきを見せられるのであった。
end