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無口書記は動物がお好き 3

瑞希side

 会長達がリコールされた。

 親衛隊も結構幻滅していたし、当たり前なんだけれど、新生徒会をどうしようかと迷う。

 俺と補佐君は生徒会を継続予定。

 それで、俺が生徒会長やらなきゃみたい。

 正直、喋るの苦手なのにいいのかと思うけれど、風紀にも頼まれたし、周りがいいといってるならいいだろうと思う。

 補佐君には副会長をやってもらうとして…、書記二人、会計二人を最低でも決めなきゃで、必要なら補佐も決めなきゃなのだ。

 抱きたい、抱かれたいランキングから選出するのが、この学園の特色だけれども、新しく理事長になった人から、そこそこにランキング入りしている人なら納得するだろうから、気に入る人間を選ぶといいと言われている。

 理事長は転入生の甥で転入生を裏口入学させたからって辞任して、新しい理事長がきたのだ。

 「叶君、生徒会にきてほしい人居る?」

 補佐君がそういって、俺の方を見てくる。

 正直、人ってあんまり好きじゃないし、きてほしい人っていない。

 ……会長達みたいに面倒な人間じゃなければ誰でもいい。

 あ、でも、一人だけはきてほしい。

 「……ろ…ぅ、が、い……けど、ろ、ぅ………いやが、り…そう」

 そう、俺は狼にはきてほしいと思ってる。

 人は嫌いだけど、狼の事は好きだから。

 でも生徒会とかそういうの、狼は嫌いそうだなってそうおもってしまう。

 「本当、叶君って宮城狼の事好きなんだね」

 「ん……。ろ、ぅ、す……き!」

 喧嘩をしている姿なんて本当に野生的で、綺麗だと思った。

 狼の隣にいるのは、楽だし、狼のにおいとかも好きだし、お昼寝するのは楽しい。

 「宮城狼には、言ってみたら? 叶君と宮城狼は仲良しだし、頼んだらやってくれるかもよ?」

 「ん……きく、だけ、きぃ…て、みる」

 嫌がられたら、諦めよう。

 でも、狼がいてくれたら凄く嬉しいのになと思う。

 狼が生徒会なら、役員席に一緒にいけるし、生徒会室ならあんまり人来ないからのんびりできそうだし。

 本当に狼が生徒会に入ってくれて、一緒に過ごせたらどれだけ楽しいだろうか。

 「それで、他の人はどうする?」

 「おれ……だれ、でも、いぃ。ちゃん……と、し、て……くれ、る、なら」

 「そっか…。んー、じゃあ、俺と顧問の先生で話しあうから、叶君は宮城狼にやってくれるか聞いてきて」

 「ん!」

 補佐君に言われて、頷く。

 狼は何処に居るかなと思いながら廊下を歩く。

 親衛隊の子達が挨拶してくるのを軽く流して、そうして、向かったのは屋上だった。

 自然溢れる場所にも狼は結構いるけど、屋上にもたまにいる。

 屋上を覗けば、

 「お前のせいであいつが――!!」

 変な言いがかりをつけながら狼に向かっていく、あの転入生の取り巻きの一匹狼(?)がいた。

 正直あんなダサイ人間が一匹狼なんて言われてたのが謎だ。

狼ってのは、狼に一番似合う。他称一匹狼は狼にあるような野生的なものはない。

 人工的……、独りよがりなまがいものとでもいえばいいのか。

 転入生に光を見出しただの、転入生は俺を怖がらないだのわけのわからない理由で惚れたらしいけど、それはただの寂しい人間である。

 狼は違う。

 一人でいる事を嘆いているわけではない。一人でいる事を望んでる。

 孤高、ってそういう言葉が似合うというか、何だろう、凄く引きつけられるなにかがあると思う。

 狼はうざそうに不良を一瞥して、殴りかかってくるそいつに蹴りをいれる。

 やっぱり、野生的で、狼の喧嘩は見ていて、綺麗だ。

 その動き一つ一つに力強さがあって、獰猛で、その強さを目のあたりにするたびにどうしようもなく、興奮する。

 やっぱり、狼は好きだ、そう何度も思う。

 人間的ではなく、野生的な強さ。

 だからこそ、俺は多分狼を求めるんだと思う。

 そんな風に見入っていたら、

 「あ、書記てめぇ」

 なんていって不良がなんか俺に近づいてきた。

 「てめぇも、あいつを――」

 なんか殴りかかってきた。

 俺が弱いとでも思ってるのか知らないけど、何だか、なぁと思いながらも、その拳をぎゅっとつかむ。

 そしたら、ぎょっとしたような目を浮かべるから、思わず笑ってしまう。

 そうして、そんな不良に拳を叩きこんだ。

 狼の蹴りを事前にくらってたし、そのまま気絶する不良。

 それを俺は放置して、狼に近づく。

 「……ろぅ!」

 「瑞希、お前喧嘩できたんだな」

 「ん……! お、れ、喋る……にが、てだから………、いじめ、ら……たこと、あって、みか……え、し、てや、ろ、って、つよ、……くなった」

 「そうか」

 そういって、狼は俺の頭をなでてくれる。

 他人に触れられる行為も、人も嫌いだけど、狼に撫でられるのは好きだ。

 何だか、幸せな気持ちになって、思わず頬が緩む。

 「お、れ、ろぅに……なで、られ、るの、好き」

 「本当、可愛いよな、お前。

 ところで、なんか用事か?」

 そう聞かれて、新生徒会に誘うつもりだった事を思い出す。

 「ろ……ぅ。かい、ちょ、リコール……さ、れ、たから、……あたら、し……やく、いん、えらば、な……きゃで」

 そういって、俺は狼を見上げていった。

 「お、れ……、ろぅ、が、やく…いんに、な……って、ほし、くて。

ろ、ぅ……やく、いん、嫌がるかも、だけ、ど…おれ、ろぅが、いた、ほうが、うれ、しい」

 「…俺が生徒会?」

 狼は俺の言葉に驚いたようにこちらを見た。やっぱり嫌かな、生徒会に入るの。

 「ん…あ、…らし、りじちょ、じょ、いなら、えらん……で、いいって」

 「そうか…」

 「…お、れ、ろ、ぅが、……いた、ほうが、うれ、し」

 そういって、俺が狼を見上げれば、狼は笑っていった。

 「いいぞ。瑞希が会長なら、楽しそうだし」

 「ほん、と!?」

 「ああ」

 嬉しくてたまらなくて、思わず抱きつけば、狼は笑って受け止めてくれる。

 ―――狼が、生徒会に入ってくれるなんて、これからが楽しみだ。



end




―オマケ(補佐君(現時点で名前なし)side)―



 新生徒会が発足した。

 会長の叶君と、副会長の俺、そして、書記の宮城狼が一年。

 あとは、二年の先輩で埋められた。

 そして、俺や先輩たちの目の前には、ソファで寝転がる宮城狼とその上にのっかて眠っている叶君が居る。

 「人とあんまり仲良くしないっていう叶瑞希と宮城狼がこんな仲良いなんてびっくりだよな…」

 「あーでもいい目の保養になるよねぇ~」

 「仕事終わってるみたいだし、もう寝かせとく?」

 口々にそんな言葉を零す先輩達。

 本当、叶君と宮城狼は仲が良い。

 叶君は怖くないのだろうか? 宮城狼といえば、学園内でも喧嘩が強いと有名な不良だ。

 俺は正直、同じ役員になっても少し怖いと思ってしまう。

 まぁでも、叶君と一緒に居る宮城狼を見ると怖くないのかなってそうおもってしまうけど。

 叶君も宮城狼が生徒会にいて嬉しそうだし、まぁ、いいか…。



end


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