in図書室 2
「林川君、こんにちは」
「し、東雲、こ、こんにちは」
緊張して、どうもどもってしまう俺。
――あの日から図書当番の日は東雲と結構会話をするようになったんだが、どうも緊張して仕方がない。
転入生もたまに来るのだが、それは追い返している。
まぁ、生徒会とかが色々言ってたけど…。
俺の兄、俺と違って顔かなり整ってて美形で、しかもリーダーシップとかバリバリあったから、此処の前生徒会長だったんだよね。在学中の話で、もう卒業してるけど。
で、兄貴ブラコンにシスコンで弟の俺と一つ下の妹を超可愛がってる。
まぁ、俺ん家はそこそこの企業なんだけど、兄貴って人脈滅茶苦茶広いし、敵に回したら結構恐ろしいと弟の俺でも思う。
そんな兄貴の弟だって生徒会にとりあえずさらっといって、何もしてこないように牽制しといた。
俺が平凡だからか「本当にあの人の弟か?」と聞かれたけど、納得してもらった。
だから、特に苛めとかはない。転入生への俺の態度が気に食わないみたいだけど、兄貴の弟に手を出す勇気はないらしい。
ヘタレなのか、生徒会って…? 確かに兄貴は怒ったら怖いけどさ。
「今日ね、林川君がお勧めしてくれたラノベ読んでみたんだ。
まだ一巻だけしか読んでないけど、面白かった」
「お勧めだから、ぜひ、つ、続きも読んでくれよ」
ああ、東雲の笑顔が直視できない。
いや、可愛すぎる。
東雲が俺に笑顔向けてくれてて、マジ何か不思議な気持ちになる。
「うん、読んでみるね」
ああ、何か花のような笑顔っていうか…惚れてるからこそ、ものすごく可愛く見えるんだろうけど…。
本気で可愛すぎる…。
そうやって話しこんでいれば、
「何でまた此処しまってんだよ!!! 和沙に会いにきてやったのに!!」
何だかウザイ転入生の声が聞こえた。
折角東雲を見て幸せな気持ちになってたのにっ。
しかも、東雲びくついてるから!
何だか苛々して仕方がない。
何だかむかついて、扉をげしっと蹴りつける。
「なっ、誰かいんのかよ!! 開けろよ」
「失せろ、転入生!! 図書室では静かにしろっつーの!」
毎回毎回追い返されてて何で来るんだ、本気で!!
うざがられてることにいい加減気付け! 何だお前は話が通じないのか、と言いたくなる俺である。
「なぁ、生徒会室行こうぜ」
「そうそう、図書室何かいいじゃん」
生徒会の声が響く。
中に居るのが俺ってわかったから、兄貴を敵に回さないためにも何処かにやろうとしてくれるらしい。
兄貴の力がこれほど偉大で、兄貴が俺の兄貴でよかったと思ったのははじめてである。
兄貴、此処の前会長やってくれてマジありがとう、と今度会ったら言おう。
転入生が去ったのを確認して、ふぅと息を吐いて、俺は転入生の存在にびくついていた東雲を見る。
「東雲、大丈夫か?」
「うん。いつも追い返してくれてありがとう」
ああああああ、東雲が俺にお礼いってる!! てか何その可愛い笑顔。
破壊力が抜群すぎるだろ!
「し、東雲が困ってるのに放っておけないしな」
好きな子守るのは男として当然だし! 転入生に絡まれてんのが東雲じゃなかったら、俺助けなかっただろうしなぁ…。
「それにしても林川君、あの転入生に対処できるなんて凄いね」
キ、キラキラした目で東雲が見てる。
ああ、幸せすぎてどうしようだよ、本当。
目の前に東雲がいるだけで、どうしようもなく幸せでたまらない。
ああ、もう、好きだなぁって実感してならない俺である。
―end―
孝の兄ちゃんは元生徒会長です。兄の偉大さを実感してる孝です。
実は孝が入学した時、あの人の弟!!って感じで注目されたんですが、見た目が平凡なので、すぐに注目はなくなりました笑。
平凡ですが、王道君を普通に追い返すあたり少し非凡かな?って感じの人です。