幼馴染が下半身野郎になってた件について。
王道学園と呼ばれるものは、なぜか男に男のセフレがいたりします。謎です。別世界です。ある意味ファンタジーです。
「――あなたが転入生の峰君ですね?」
「はい」
そんな会話と共に、俺は学園内を案内される。
―――俺、峰泰雅は今日から男子校であるこの学園に転入した。
いや、正確に言えば戻ってきたというのが正しいだろう。六年ぶりにこの学園へとかえってきた。
懐かしいという気持ちがこみあげてくる。
「峰君はこの学園に昔いたんだって?」
「はい、そうですよ。俺は六年前まで此処に通ってました。両親の都合で六年は海外に居たんですけどね」
親の都合で海外に行っていたけれど、それまではずっとこの学園に通っていた。
「へぇ」
「あ、そういえば、副会長さん、轟剛って知ってますか?俺の幼なじみなんですが…」
連絡を取っていない幼馴染がどうしているか気になって口にする。
そうしたら、副会長が固まった。
え、俺なんかおかしい事いった? と思わず戸惑ってしまう。
「あの、轟剛と幼なじみ!?」
「え、あいつなにかしたんですか?」
副会長の反応にこちらが驚く。どうしたというのだ、本当に。副会長が知っているほどの有名人に、あの剛がなっているとでもいうのだろうか。
正直、想像ができない。
そうおもっていたら、もっと信じられない言葉が副会長の口から放たれた。
「そうですね。轟剛は、セフレが大量に居て…、遊び人として、知られています」
「…は?」
思わず相手先輩だっていうのに、驚いてそういってしまったのは仕方がないと思いたい。
……あの、剛が、今遊び人だと?
*
今、俺は寮室に居る。特待生だから一人部屋だ。俺は頭は良いほうだから、特待生になれた。
で、荷物の整理を済ませて、ベッドに寝転がりながら思う。
――俺の知っている剛の事を。
俺と剛は幼い頃からの友人だ。この学園に入学した当初からずっと仲良くしていた友人。
というか、昔剛は可愛い外見してて、苛められていて、それで、助けてそれで仲良くなった。
俺が転校するまで、俺の後ろをずっとついてきて、回った、そんな剛。
……そんな剛が、今遊び人。
とてもじゃないけど、信じられない。
会いたい、と思った。
あいつに会って、そして―――、そこまで考えて首を振る。
考えことしてる暇あったら行動に移すべきだろう。
そういうわけで、俺は寮室を出た。
で、手あたり次第に地図を見ながら、人の噂を聞きながら剛の居場所を探る。
―――どうやら、剛は結構サボり魔らしい。
昔はもっとまじめでさぼりなんてしてなかったはずなんだけどなとさみしい気持ちになる。
その辺にいた生徒からサボりスポットを聞き出し、俺は剛の姿をひたすら探す。
そうして、屋上に向かった。
そうしたら、
「あれー、君だれぇ?」
何だか、ゆるい感じの声が聞こえた。
声のした方を振り向けば、金髪のチャラチャラした男がいた。少しだけ、剛の昔の面影がある。だけどあまりにも変わりすぎた幼馴染にショックを受けた。
「お前、轟剛か?」
一応、確信は持てないため、問いかける。
「ん、そうだよ? 俺と遊ぶ? てか、君誰かに似て――」
「……幼なじみの顔忘れんな、ボケ。そして、何遊び人なんてやってんの、剛」
――本当に剛が男と遊んでるって事実に何だか、苛立って思わずそういってしまう。
「……幼なじみって……、泰雅!?ほん、とうに!?」
俺の言葉に驚いた顔をした剛は、次の瞬間、顔を緩ませる。嬉しそうな顔を浮かべて俺へと寄ってくる。
「剛、久しぶり。で、遊び人って何?」
久しぶり、と笑いかけて、すぐさま冷たく言えば、剛の表情は途端に変わる。
「…聞いた、んだ?」
「ああ。でも、剛ってんなのする奴じゃなかっただろ? 俺、剛が誰とでもヤれるようになって、るなんて思わなかった」
苛々してるのだ、俺はきっと。 だから、どうしても、冷たくいってしまう。
「……たい、が」
剛が言葉にならない声をあげても、俺の声は冷たいままだ。
「剛は、この学園で好きな人としかヤりたくないっていってのにさ」
だってこの学園は外から見たら異常で、人気者たちはセフレを大量に持ってたりして、それを知っていたから昔の剛はそういっていたはずだ。
「…それは」
「…何で、ヤってんの? 色んな奴と。快楽に負けた? 剛はそんなに、誰とでもヤれるの?」
「ちがっ、あの、泰雅、俺……」
苛々しすぎたらしい。目の前の剛は泣きそうなほどに顔を歪めている。
なんか泣きそうな顔ってか、泣き虫な所見ると、昔と変わらない、と思う。それに安堵する。
剛は昔と変わっているけれども、変わらないところがある。確かに、目の前の剛は俺の知っている剛だ。
「あー、ごめん、剛。ちょっと苛立ってた。理由、聞いていい?」
剛が泣きそうな顔するから、何か理由があるのかなって、そう思って問いかける。
「え、っと、その…、中学、んときにね、俺そういうお誘い多くなって…」
俺が転校してったの、10歳の時だから、そのあとだな。
「断ってるのに、皆しつこくて…」
この学園はそういう所だ。すぐ、顔がいいと体の関係持ちたがる。
幼いころは女見たいだった剛も今は立派なかっこいい男になっているのだから、狙われたのだろう。
「可愛い子と、…その、二人っきりに、なった時………、俺油断してたら襲われちゃって」
悲しそうに、剛が顔を歪めた。
「そのまま、無理やり、そのまま……、俺の……どう、てい、奪われたというか……」
言いにくそうに告げる。
「……そしたら、その子、言いふらした、らしくて。皆が『あの子とはやったのに、俺は断るの?』って、迫ってきて…その、俺、断れないし……、相談する人もいないし…、ずるずると…、こうなっちゃって……」
ああ、本当、昔から変わらない。
おしに弱いし、結構打たれ弱いもんな、剛って。
――変わってない。それをおもって、俺は、剛に向かって言う。
「剛、そういう体の関係、やめたいか?」
きっと、やめたいと思ってるはずだ。それを確信して、俺は問いかける。
剛は、もちろん頷いた。
それを見て、俺は笑った。そうして、告げる。
「じゃあ、剛さ。俺のモノになりなよ」
俺は笑顔でいった。
…俺って昔から剛の事、そういう意味で好きだったから。
絶対に剛の所に戻って告白してやろうって思ってたのに、遊び人とか聞いて、正直変わったのかとか色々苛立ってた。
誰だって嫌だろ? 好きな奴が他の奴とヤったとか。
「…へ?」
「何ポカンとした顔してんの? 俺、一応告白してんだけど」
「こ、こ、告白!? た、たた泰雅が俺に!?」
「うん、そう。俺、剛の事昔から好きだから、遊ぶのとかやめてほしいし。てか遊び人っていっても処女は奪われてないんだよな?」
「う、うん」
剛の顔は真っ赤だ。はずかしそうにこっちを見てて、思わず欲情しそうになった。
「なぁ、剛。返事は?」
「え、えーっと、お、俺も昔から泰雅の事好き!!」
それを聞いて、俺は笑った。
「じゃあ、彼氏出来たっていって、相手全部切って。で、文句言ってくる奴いたら俺にいって、全員黙らすから」
処女奪われてないだけいいけど、うん、昔から剛の処女は俺がもらうって決めてたし。
でも、やっぱ、剛とヤってたとかむかつくから、そういう対処は憂さ晴らしになりそうだしな。
「うん、お願い」
そういう剛は緩い喋り方なんて全然してなくて、どうやら最初は緩く演技してたんだと気付く。
おしに弱くて断れなくて、そうして遊び人になって、弱音もはけずにきっと、演技してたんだろうなぁ、なんて思う。
「じゃ、剛」
「ん?」
「俺の部屋いこ」
「……泰雅の部屋?」
「そう、恋人なんだし、食ってもいいよね?」
「く、くうって、えぇえ!?」
「嫌?」
「い、嫌じゃないけど、えっと、はずかしいというか…」
そうやって顔を真っ赤にする剛の手を俺は引いて、そのまま、俺の寮室へと向かった。
―――そしてもちろん、おいしくいただきました。
さて、剛のセフレだった奴らとか他の連中にも、これから剛が俺のモノだってわからせなきゃ、そう俺は思うのだった。
end
峰泰雅
六年ぶりに帰還。
顔立ちは整っている方。
基本的に何でもできる。
轟剛
おしに弱く、そのまま流されて遊び人になっちゃってた人