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気まぐれな猫と飼い主 2

 「なあ昌っ、おまえの居場所って何処なんだよっ」

 「俺らんところにこいって」

 「違う、昌は俺らの―――」

 目の前で繰り広げられる口論に俺はうんざりした。

 俺に栄司さんという居場所があると言った奴らは、何故か俺の意志そっちのけで色々言ってて嫌になる。

 俺を所有しようとか考えてるみたいで嫌だ。

 そりゃあ、俺は知ってるよ。

 俺の事そういう目でみてる奴もいるし、実際口説かれたりするし。

 まあ軽く交わしたけどさ。だって栄司さん以外に抱かれるとか絶対やだ。

 そもそも、夜の町に俺が来たのは栄司さんがいないから暇だからだけだしな。

 栄司さんがいない場所なんて、俺にとってただの暇つぶしの一時の場所でしかない。だというのに、どうしてこいつらは妙な勘違いをしているのだろうか。

 「なあ昌は何処に入りたい?」

 「俺ん所にくるよな?」

 「俺のモノになれば優しくしてやるよ」

 「昌が一番なついてんのは俺らだろっ」

 あー、一番なついてるって何なんだろう。

 自信過剰なのかな、本当。

 ちなみに今なついてる発言をしたのはこの辺で有名な暴走族の総長の、カイなんだけどね。

 まあね、喧嘩は栄司さんに会えないストレス発散だし、普通に顔だしてたけどさ。

 ………俺にとっての特別は、一番は、絶対栄司さんなのに。

 「あのね、俺暴走族に入るとか一言も言ってないよね?

 それに灰もさ、一番懐いてるとかいうの自信過剰みたいに聞こえるよー?」

 「なっ………」

 「本当さ、皆さ、俺は所属する気もないって言ってるのにさ

 勝手に色々言ってさ」

 不機嫌でたまらなくて、俺は思わず声が冷たくなっていくのがわかる。俺はね、一度も夜の街が居場所だなんて口にしたことはないんだよ。

 「俺の居場所は俺が決めるんだよ?」

 そもそも無理やりいてもらって嬉しいものなのかな。

 俺は栄司さんが俺を選んでくれて、俺をそばにおいてくれる事が滅茶苦茶嬉しい。

 栄司さんが無理して俺のそばにいるとか嫌だ。

 「だいたい、俺にとってえ―――」

 ―――♪

 栄司さん以外どうでもいい。

 それを言おうとしたら俺のスマホがなった。

 この音は、栄司さんだ!

 俺はもう目の前の奴らおかまいなしに電話に出た。

 だって栄司さんが一番だもん。

「栄司さんっ」

 『昌』

 ああ、栄司さんの声だ。

 栄司さんかっこいいよ。

 てか俺栄司さんの声大好き。

 何か目の前の奴らが俺の声に驚いたようにこちらを見ているが無視だ。

 「栄司さん、どうしたの?」

 『あー、驚かせようと思ってお前ん家きたんだけどいねえから』

 「え、栄司さんきてくれたの!? じゃあ今すぐ速攻で帰るっ」

 どうやら今日は日曜日で、学園からこちらに内緒できていたらしい。くそ、栄司さんが来るってわかっているなら街なんて出てこなかったのに。

 『つか昌今どこに――』

 …………栄司さんと話していたらスマホを灰に捕られた。

 ああ、栄司さんっ! 栄司さんとせっかく話してるのに。こいつ、何しやがる、と思わず苛立った。俺と栄司さんの会話を邪魔するなんて。

 「おまえが昌の飼い主か! 昌は俺がもらうぞ」

 「昌の居場所っ! 俺がなりたい」

 「昌は俺らの―――」

 …好き勝手騒いでる奴ら。

 栄司さんに何いってんのとしか思えない。

 そもそも俺は身も心も栄司さんのものなのに。

 「返してよ」

 栄司さんとの会話をどうして邪魔するの。

 せっかく栄司さんの声が聞けたのに、幸せだったのに。

 見れば灰は栄司さんと何か話したようで灰は電話をきってこちらを見てくる。

 「栄司さんに、何いったの」

 「あぁ? 昌を俺のものにするっていったんだよ。

 『ドラゴン』の総長の俺のものにな」

 「灰、ふざけんな、昌は俺らん所にはいんの!」

 勝手に勝手に、こいつらは何をいってるんだ。

 スマホも返してくれないし。

 しかもドヤ顔が気持ち悪い。

 「なあ、電話の相手男だし、おまえ男とヤれんだろ、俺に抱かれろよ

 おまえの男より俺はうまいぜ?」

 「………けんな」

 「ん? 何だ昌」

 「ふざけんなっていってんだよ、灰達さ」

 イライラする。

 俺は他人なんて基本的にどうでもいいんだ。

 だから基本的にあんまり怒ったりしないよ。

 ――でも、栄司さんの事だけは別なんだ。

 「おまえらなんかと栄司さんが比べものになるわけないだろ」

 大体俺の栄司さんとこいつらを比べるのが間違ってる。栄司さん以上にかっこいい存在なんていない。

 「栄司さんはかっこいいんだよ、凄く。男らしいとか男前ってのは栄司さんに凄く似合うんだと思う。滅茶苦茶フェロモンみたいなのでてる気がする」

 栄司さん、栄司さん、栄司さん―――。

 馬鹿なこいつらにいかに栄司さんがこいつらとは比べものにならないのだと語ろう。

 「何がかっこいいって行動とか性格とか。外見も滅茶苦茶かっこよくて、金色の髪が凄く似合ってて、栄司さんに見つめられると凄くドキドキして、あと体もよくて、それに声も凄くかっこいい」

 勢いのまま告げる言葉たち。言葉は止まらない。

 「俺ね、栄司さんの声、ものすごく好きなの。色気を含んだ声なんて、本当腰にくる。

 なんだろう? あんな美声って反則だと思う。

 俺、栄司さんの声を聞けるだけですごく幸せ」

 俺が一気にそんな風に言うから、奴らはあっけにとられたようにこちらを見ている。

 まぁ、俺って栄司さんにしかこんな風に思ってないしね。

 「栄司さんはね、俺をうんと甘やかしてくれるの、可愛がってくれるの。

 頭をなでてくれて、抱きしめてくれて、優しく笑ってくれる。

 他人に触れられるのあんまり好きじゃないけど、栄司さんと触れるのは好き。栄司さんのにおいも大好き。

 栄司さんに触れられると滅茶苦茶安心する。

 それに、栄司さんの笑った顔、俺好きなんだ」

 栄司さんが、好きでたまらないんだ、俺は。

 「笑った顔も真剣な顔も凄く好き。ピーマンとか嫌いとかそういう子供っぽい所も全部好き。栄司さんは自信に満ちてて、自分の道を行くみたいな人で、見ていて本当にほれぼれして仕方がないんだ。

 栄司さんは頭もいいんだ。だから奨学金とかで授業免除とかあって」

 頭もいいし、かっこいいし、運動もできるし、本当栄司さんって最高だと思う。

 「俺が栄司さんのそばにいたくてたまらなくて、だから栄司さんのそばにいるの。

 栄司さんのそばにいれるだけで俺は幸せだから。栄司さんだけいれば俺は幸せだから。

 そもそもだよ? 何を勘違いしてるかしらないけど。俺が夜の街にきてるのは栄司さんが居ない暇つぶしをやってるだけなんだよ?

 栄司さんが何よりも優先すべき存在何だよ、俺にとって」

 本当、何を勘違いしてるんだか、俺にとって、栄司さんが全てなのに。

 栄司さん以外、いらないってそうおもってるのに、俺は。

 「もうね、悲しい事に栄司さんって家の都合で全寮制の学校いっちゃったの、中学から。

 だから俺は栄司さんが居ないから暇で、寂しくて街に出てただけ。

 ただ、それだけなのに、懐いてるとか、自信過剰すぎなんだよ?

 俺が居場所としてるのは栄司さんの隣だけ。かっこいい、俺にとって最高の男が栄司さんなんだ。

 そんな栄司さんが俺を求めてくれるだけで凄く嬉しいの。もう奇跡だと思う。

 だって栄司さんあんなにかっこよくて女でも男でもきっと幾らでも選べるのに、俺を選んでくれたんだ」

 栄司さんが、俺をね、抱きたいとか、俺を欲しいとか思ってくれる事が嬉しい。

 他の人にそんな事思われても気持ち悪いだけだけど、栄司さんになら喜んで抱かれる。

 「俺はね、栄司さんだけが大好きなんだ。寧ろ栄司さんを愛してるって言えるよ?

 栄司さんは俺を可愛がってくれて、俺は栄司さんを愛してる。

 そんな俺と栄司さんの邪魔をするとか、やめてくれない?」

 愛してる、ってはっきり言えるよ。

 だって、栄司さんは俺にとって唯一無二で、絶対的な存在だから。

 ふぅっと、一気にいった時、声が響いた。

 「可愛いな、やっぱり、昌は」

 「栄司さんっ!?」

 その声は栄司さんで、確かに俺の家からこの場所までそんなに距離は離れてないんだけど、いつ来たんだろうと、首をかしげそうになる。

 「―――龍院堂栄司!?」

 「―龍院堂家の、若頭!?」

 龍院堂栄司。それが、栄司さんのフルネーム。

 栄司さん家は、ヤクザだ。

 というかもう、ここらへんっていうより日本でもかなり大規模のヤクザの組長の息子ってのが、栄司さんの肩書だったりする。

 「あぁ? てめぇか、さっきの電話は。俺の昌、奪うねぇ?全然相手にされてないくせに何いってんだか。

 昌は俺の事大好きでたまらねぇんだからひけよなぁ?」

 …本当に何処から聞いてたんだろう、なんて思っていたら、栄司さんに体を引き寄せられた。

 栄司さんの腕の中に納まる、俺。

 上を見上げれば、栄司さんが灰達を睨みつけていた。

 睨んでる姿も、栄司さんはかっこいい。

 ああ、金髪って栄司さんに似合ってる。

 ぎゅーっと、俺は栄司さんの腰に手を巻きつけて抱きつく。本当、安心する。

 この腕の中に居られる事に。

 「とりあえず、てめぇらっ」

 「「「は、はぃい」」」

 んー、栄司さんがヤクザだって知ってびびってるみたいだね。

 さっきの威勢は本当にどうしたんだろうね? ちょっと情けないよね。

 でもまぁ、栄司さんって結構容赦ないし、そういう噂出回ってるからかもしれないけど。

 「俺の、猫に近づきやがったら、潰すぞ?」

 栄司さんの瞳が鋭く細められてる。

 …その瞳にぞくぞくした。

 本当にかっこいいなぁ、栄司さん。

 「は、はい…」

 「わ、わか、わかりました」

 そんな言葉を聞きながらも、俺は栄司さんに手をひかれて、その場を後にする。

 ちなみに栄司さんは結構近い距離だから、走ってきたみたいで、手をつないだまま、家へと向かう。

 「昌、暇なのはわかるけどな? ああいう輩居るんだからあんまり夜遊びすんじゃねぇぞ?」

 「うんっ。もうあいつらとは遊ばないよ。だって俺と栄司さんの仲引き裂こうとするんだもん。

 俺栄司さんさえいればそれでいいのに」

 栄司さんの方を見てそう言えば、そのまま、

 「――――っ」

 唇をふさがれた。

 「―――んっあ」

 舌と舌が絡み合う、そんなキス。

 ああ、栄司さん、栄司さん、栄司さんっ。

 「―えい、……じ、さんっ」

 キスの合間に栄司さんの名を呼ぶ。

 「―――家、帰ったら抱かせろ、昌。今日は抱くのやめようかと思ったんだけどよ。あんまり可愛い事いってるから我慢できねぇ」

 唇を離した栄司さんはそういって妖艶に笑った。

 もちろん、そんな栄司さんに俺が断るはずはない。

 「うん。栄司さん思いっきり気持ちよく、思いっきり抱いてね。

 俺、栄司さんに抱かれるの好き」

 栄司さんが、俺に欲情してるってだけで嬉しい

 栄司さんが俺を求めてくれるだけで嬉しい。

 結局そのまま、家に帰って俺は栄司さんにたっぷり抱かれました。




end


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