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そんな感情ほしくなかった。

下心のない友人がほしい書記

 ある日転入生が来て、皆仕事を放棄して。

 それが寂しくて、悲しくて、前みたいに「仲間」として仕事したいなって思って、だから喋るの苦手だけど、頑張ったんだ。

 結局転入生は裏口とかで、退学して、元通りになったはずだった。

 でも違うんだ。

 ねぇ、何で、皆俺の事好きだなんていうの。

 何で、俺を口説くの。

 何で、俺をめぐって喧嘩するの。

 元通りになりたかっただけなんだよ、俺は。

 恋愛感情で見てしまったら、もう、「友達」でも「仲間」でもないんだ。

 「友達」で、「仲間」で、そんな関係が好きだったんだ。

 俺は好きじゃないっていってる。

 恋になんて変わらないっていってる。

 それなのに、何で、いつまでも口説くの?

 嫌なんだよ、俺を口説いてくる甘ったるい声を出す皆が。

 嫌なんだよ、皆が俺をめぐって喧嘩するのが。

 嫌なんだよ、俺を好きになったからって余計にスキンシップとってくるのが。

 嫌なんだよ、所構わず俺を口説いてくるのが。

 「友達」で、「仲間」だった人が突然自分をそういう目で見てたって言われた気持ちわかる?

 「友達」で、「仲間」だった皆が戻ってくることを望んでたんだよ、俺は。

 どうして、どうしてとそんな思いばかりがわいてくる。

 俺は皆好きじゃない。皆をそういう目で見れない。付き合うつもりもないから、諦めて。

 って、言ってるじゃん。ずっと、ずっと言ってるじゃん。

 いきなり恋愛感情向けてきて、いきなり口説いてきて、何だか変わってしまった変化が怖い。

 何で新聞部とかも、俺が誰に落ちるかなんて記事にしてるの?迫られたら記事にしてるの?

 俺言ってるじゃん、ちゃんと。

 話すの苦手だけど、ちゃんと、いってるじゃん。

 いきなり口説かれても気持ち悪いだけなんだよ?

 ときめきも何も感じないんだ。

 転入生に惚れてたのに、すぐに心変わりして何なんだろうって正直思うし…。

 皆が誰を好きだろうとどうでもよかったのに。

 ゆっくり答えを出してくれればいいって、何で俺が選ばなきゃいけない、誰かと付き合わなきゃいけない前提なの……?

 何で、皆付き合ってあげてくださいとかいってくるの?

 ……何で、俺生徒会の皆しか仲良い人いなかったのに。

 何で、誰も、俺の気持ちわかってくれないの?

 ちゃんと皆仕事してくれるし、生徒会室にきてくれる、でも、独りぼっちな気分。

 寂しい。

 悲しい。

 何で、皆俺の気持ちを無視して勝手に騒ぐの…?

 男同士の耐性だってついてるけど、俺、好きじゃなきゃ付き合いたくもないもん。

 何で、わかってくれないの。

 会長達に迫られたら、誰でも嬉しいって、そう思ってるの…?

 嫌だよ、俺友達が欲しいよ。わかってくれる人が欲しいよ。

 恋愛感情じゃなんていらないよ…。

 あーあ、泣きそうだ。

 一人で仕事してた時も、仕事を放棄して俺を仲間として見ない役員の目に泣きそうだったけど、今は別の意味で泣きそう。

 友達、ほしいな。

 仲間、ほしいな。

 役員達は、下心も何もないから楽だったのに……。それもなくなっちゃった。

 それに会長達異様にスキンシップとってきて、怖いもん。何かもう、飢えた獣みたいな目で俺見ないでほしい…。

 転入生君にもすぐにキスしたり押し倒してたりしてたらしいし…、怖いよね。

 そういう前例があるからこそ、してくるんじゃないかって会長達怖い。

 俺ファーストキスもまだだもん。会長達の事そう言う目で好きじゃないからそんなのしたくないもん……。

 そもそも転入生が特殊だっただけで、好きでもない人とキスとか想像するだけで気持ち悪いもん。

 「………さび、し……」

 中庭の人気の少ないベンチに腰掛けてたら自然と涙が出てきた。

 今の会長達と一緒に居たくないんだ。目が怖いから。口説かれるの嫌だから。

 「恋愛感情」が入ってしまったら、それはもう「友人」じゃないもんね。

 嫌だっていってるから、口説かないでくれたらまだ楽なのに。変化しないでくれたらよかったのに。

 まだね、俺の事好きなら思ってるだけをしてくれればよかったのに。

 嫌だって、いったのにね。

 何でてれ隠しみたいにとられるの。何で…?

 都合がいい事に全部変換されてて、気持ち悪い。

 「え、書記様、何で泣いてんの」

 どうせ誰も来ないだろうって泣いてたら、誰かの声が響いた。

 泣いている俺を見て不思議そうな、驚いたような顔をする平凡な生徒がそこにいた。

 「……みら、れた」

 めんどくさい、と思った。

 だってまた変に記事にされるかもしれない。

 皆都合のいい風に変えちゃうからこの生徒も変な妄想で泣いてた事を「恋患い」とでも思って誰かに話すかもしれない。

 そんなことになったらまた面倒なことになってしまう。

 「何で泣いてるんだ?」

 「………」

 誰かに言いたい気持ちはあるけれど、いっても「会長様達に告白されてるのに」って怒られそうで何か嫌だった。

 告白されて困るって贅沢な悩みかもしれないけど、俺は本当に嫌なんだよ…。

 「あー、っと誰にも泣いてる事はいわねぇよ。

 ただな、ちょっと気になっただけ」

 そういいながら俺に近づいてくるそいつ。

 喋れない分、人の事はよく見てる方だと思うから、その目をじっと見て、俺に恋愛とかそういう感情はないのだとなんとなくわかった。

 いってみようかなって思ったのは、直感だ。

 誰かに吐き出してしまいたかったのも、限界だったんだ。

 毎日口説かれて、毎日新聞にされて。

 「………お、れ、かい、ちょ……た、に告白……され、る、い、や」

 伝わりにくかったらだろうしようと思ったけど、頑張って口を開く。

 その俺の言葉に、生徒は目を見開いた。

 ああ、やっぱり皆新聞部の報道とかばかり信じてるんだ。

 ………泣きそう。

 そんな俺に生徒は答えてくれる。

 「口説かれるの、嫌なのか? この学園の連中って大抵生徒会に口説かれると喜ぶのに」

 「……お、れ、会長、たち、友達で、なか…ま、おも、ってた」

 少しずつ話す。

 「だか、ら……転入生にかま…、って、仕事、しなかった、時……、かな、しかった」

 ベンチに座り込んで泣いている俺と、目の前で俺の話を聞いてくれている生徒。

 親衛隊や会長達に見られたら面倒そうだけど、何だか真剣に聞いてくれてるのが、嬉しかった。

 「会長たち、とまた、一緒……とも、だ、でなかま、がよかった」

 「えーっと要するに書記様は会長達を友達と仲間と思ってて、仕事しなくなって悲しくて、また一緒に仕事したかったであってる?」

 「ん…そ。それ、で戻って、き、けど。

 かいちょ達、俺、す、き言う。お、れ、好き、違う、いった。いや、だ、っていった。

 お、れ、とも、だ、ち、で仲間、がよかった。

 なのに、恋愛で、好きって、何処、でも、口説いて、くる。

 嫌、い……て、も、照れ、隠しいう。本気……い、や。

 かい、ちょ、たち、だけ、とも、だちだった、のに、下心、ある目とか、声、とか…いや」

 本当にあの頃に戻れればよかったのに。

 どうして、変わってしまったんだろう…?

 「…要するに、友達に下心ある目で見られて、口説かれて嫌って事?」

 「ん…。お、れ、かい、ちょ、た、ちしか……友達…いな、て、した、ご、ころ、ないから楽、だ、った。

 で、も……――今、は、…も、ちが」

 いっていて、泣きそうになる。

 会長達しか友達いなかったって俺寂しい奴だし…。口説かれたく何てないのに、本当に…。

 「みん、な……、お、れ、断って、るのに、い、やいった、のに………口説くの、やめな、い。

 周りも……、え、らべ、って。お、れ、そうい……目、で、見れない、いった」

 目の前に居る生徒は、ゆっくり喋る俺を嫌がりもせずに真剣に話を聞いていてくれている。

 「…えーと、要するに書記様は、会長達しか友達がいなくて、下心ある眼が嫌?」

 「ん…」

 「それで、断ってんのに選べって言われて、困ってるって事?」

 「や……。お、れ、転入生居居たとき、さん、ざ、迫ってた、かいちょ、た、ちみて、るし。

 心がわり、……はや、す、ぎ。すぐ、…き、すとか、してたし、なんか、一緒、こわい。

 それに……、かいちょ、たち、俺、や、いってるのに……、い、つも、おれ、めぐって、喧嘩、する」

 「あー。確かに心変わり速いな。転入生にあんだけいれ込んでたのに今は書記様にひっついてるもんな。

 ……キスか…。俺ノンケだから男にキスされると思うだけで気持ち悪い」

 そういってうんざりする目の前の彼は、口にしている通り学園では珍しいノンケなのだろうと思う。

 本当に気持ち悪そうな顔をしている。

 「…口説かれ、ても…きも、わるい。

 お、れ……、やって、い、ってるのに。

 てれ、かく、しとか、ゆ、っくり、…選べしか、みんな、言わない。

 俺……のきも、ち、無視、して……みんな、騒いで、や!」

 「……そういえば会長達あのまり……いや転入生の時もいってたもんな。照れ隠しって」

 目の前の生徒はそういってうなずいてくれる。こうやってきちんと俺の話を聞いてくれるってだけで俺は嬉しくてたまらない。

 だって会長たち、俺の話聞かない。

 「ん…。自分、た、ちくど、いて、……いや、がるない、って、思ってて。なんか…、きも、ち、わる…い。

 なん、で……、とも、だ、ちに、常に、……くど、かれなきゃ、なん、ないの?

 生徒会室、いづ、らいし。

 かい、ちょ、た、ちといっしょ、いても、楽しく……ない。あん、し、できない。

 おれ、とも、だ、ち…ほし…い」

 じわっと目元が熱くなるのがわかる。

 何だか悲しくて涙が出てきた。

あー。何で俺はじめて会った奴の前で泣いてんだろう…。

 「…まぁ、友達に常に口説かれるのは気持ち悪いよな」

 「ん…。お、れ、も、書記、やめ、たい」

 「まぁ、転入生みたいな性格とか、取り巻き作るのが楽しいとかないとたのしめねぇよな。

 俺なら絶対勘弁」

 「ん…。お、れ、も、や。

 でも、…みん、な、ほん、とりかい、して、くん、ない」

 同意してくれる人がいるのがこんなに嬉しいのかと、思わず驚いた。周りは皆俺が嫌っていっても照れ隠しとか、選んでくださいとかばかりだったから。

 「大変だな、書記様…。あー、書記様」

 「ん?」

 「…友達欲しいなら俺と友達なる?

 俺ノンケだし、他校に彼女居るから友情が恋愛感情になる事は100%ないし」

 「……ほん、と!?」

 「ああ、寧ろ友達欲しいなら下心ない目で見れる友人紹介してやるしさ…。ノンケの奴は絶対書記様と仲良くしてくれると思うし」

 真っすぐに俺を見てそんな提案をしてくる生徒に俺は歓喜した。

 「ん! な、る。むし……ろ、な、って、ほし!」

 「よし、じゃあ、メアド交換しよーぜ、書記様」

 「ん! あと、お、れなま、え、春樹だか、ら、よん、で?」

 「おう、春樹な。俺は圭一郎。仲良い奴はケイって呼ぶからそう呼んでくれ」

 「ん!」

 「…嬉しそうだな、しょき…いや春樹」

 「ん! だ、って、とも、だちっ!」

 嬉しくなって涙が引っ込んで、俺は笑った。

 そんな俺を見てケイが、何か小動物っぽい、会長達に食われないか心配になってきたという思いに駆られてた事を俺は知らない。

 とりあえず、友達一人ゲットして俺はご機嫌なのであった。



 (恋愛感情なんていらない。俺は下心のない友達が欲しいだけ)



end


春樹

生徒会書記。無口でタチにもネコにも見られる、美形。

何だか常に友人だと思ってた生徒会に口説かれてうんざり。

王道君必死に口説いてたの知ってるから何だか呆れてる。

甘い声だされて気持ち悪い。うんざりしてても誰もわかってくれない。

下心がない友達が欲しいよー。目指せ友達100人みたいな子。



圭一郎(通称ケイ)

ノンケで彼女持ちな一般生徒。男相手?自分じゃ考えられねぇって人。王道展開に呆れしか感じてなかった。何こいつらバカなのって思ってた人。

ちなみに彼女の事を溺愛してる。王道君が生徒会にキスされたりしてるの知ってる身として、春樹の事を心配してる。

長男だから、そのうち多分春樹の事弟みたいに接しそう。



その他生徒会。

会長、副会長、チャラ男会計。

王道君に熱を上げてたのに、何故か春樹に惚れる。

甘い声出したり、スキンシップ激しくなったり、口説いたり、春樹をめぐって喧嘩したりする最近。

春樹に嫌がられてるのは「照れ隠し」だのいってる。「選んでくれ」と言い張りながら自分が選ばれないはずないと思ってる。ちょっと自意識過剰面子。


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