今日も生徒会室は騒がしい。
今日も二つ隣の~と君は、僕の犬~の続き。生徒会メンバーとこむぎたちを会わせてみた話。
「あの薬師寺時弥が、平凡な奴と噂になってるねぇ?あいつ最近新聞部が恋人出来るかもって噂されてなかった?」
そういって、面白そうに新聞を見ながら笑うのは、日記で言う平凡君こと――田村義彦。
「うん。だって、時弥の恋人騒ぎはダミーだし」
こむぎを表に出させるための行動だって知っている俺はさらっと口にして、会計様―――野仲英樹のいれてくれたコーヒーを口に含む。
――俺が現在いる場所は、生徒会室だ。
「お前、知り合いなのか、立花!」
「…本当、お前の人脈はどうしてやがるんだぁ?」
「立花、大事な事は言えよ」
「で、どういう関係?」
「立花君って凄いよねぇ」
上から、『月夜』こと――花崎夜、会計様の彼氏様こと―――西園寺彼方、ドS委員長こと――風霧明日人、平凡君の彼氏様こと――由井月忠、英樹の台詞である。
ちなみにヤンデレ君――堀田刃は、親衛隊隊長――類人の所にいっていていない。
「時弥と知り合いってより、噂になってる田中こむぎと知り合いなんだよ。昔からの。
あの二人実に面白いヤンデレで主従だから見てて面白くて」
学園から追い出された書記が使用人をするはずだった、あの華院家の次男。それが、こむぎだ。
こむぎと時弥の関係は本当に面白いヤンデレである。
体の関係ありで、お互いに他を作ったら互いを殺すって勢いのヤンデレ。恋人なんて関係ではないらしいが、あれはもう恋人だろう。というか、恋人以外にあらわす言葉はないと思う。
互いにしか体を許さず、互いに異様に執着する。
ものすごいヤンデレで、異常だ。見ていて面白いけど。
「あんな平凡そうなのに?」
「なぁ、義彦。平凡さでいったらお前も十分平凡だと俺は思うんだが」
「いやー。俺は中身非凡じゃね? 弐也の持ってたBL小説でいうさ」
腐男子――弐也の名を出して、義彦は笑う。
「あーっとな、こむぎは非凡だ。そして、ヤンデレっぷりがはんぱねぇ。考えてみろ、お前ら。あの刃が二人いるようなものだぞ」
こむぎは地味に目立たず暮らしたいって、時弥に近づいてこないようにいっていたから、時弥に「こむぎの傍にいる奴羨ましい。何で俺が傍にいれないのに。殺したい」って言われたぐらいだし。
「刃が二人…?」
「え、何それ、怖い」
忠と夜がそういって、青ざめる。
まぁ、ヤンデレって怖いよね。マジで。寛人も刃の事怖がってたし。
「それ面白そうじゃねぇか」
「俺も気になる」
西園寺と風霧がそういって、面白そうに笑う。この二人は面白いことが大好きだからあの二人の事にも怯えていないらしい。
「生徒会室呼ぶか?」
面白い事が大好きな俺はそういって、提案をする。
そうすれば、西園寺達は面白そうに笑ったのだった。
俺がメールをすれば、こむぎはもう目立たないという事を諦めたのか、来ると返信が返ってきた。
もちろん、時弥も一緒にという事だ。
「刃君みたいな人かぁ…。んー、ちょっと俺怖いかも」
「英樹を怖がらせる奴は俺がどうにかしてやる」
英樹の言葉に、西園寺はそういって笑った。
しばらく、のんびりと会話を交わしていれば、生徒会室がノックされる。
―――どーぞ、という一言に入ってきたのは、もちろんこむぎと時弥だった。
平凡な小柄な外見の田中こむぎ――本名華院こむぎと、男前な薬師寺時弥が顔を出す。
「こむぎ、時弥、久しぶり」
そういって、にっこりと笑いかければ、こむぎはズカズカと躊躇いもせずに俺に近づいてくる。
「で、立花。僕をわざわざ生徒会室なんて面倒な場所に呼びだして何の用?」
「他の奴らが時弥がべったりなこむぎに会いたいっていったから呼んだだけ」
「ふーん。そう。
僕の事何ていったわけ? 此処にいる奴らが興味持つようななにか、きっと言ったんでしょ?」
「ん? 両方ヤンデレっていっただけ」
そういえば、こむぎは呆れたように息を吐いた。
「ヤンデレ? 僕はただ時弥が僕以外のものになるのを許可してないだけだよ。
だから、僕以外のものになるなら殺さなきゃとは思ってるけど、これってヤンデレって奴なの?」
自覚なし、とか凄いよね。
十分ヤンデレだと思う。というか、普通に恐ろしい事をさらっというあたり、こむぎらしいけど。
「うわ、すげぇ恐ろしい事平然といってんだけど」
「ふむ、面白いな」
若干びびってる夜は後でからかうとしよう。
というか、面白いで片づける風霧は流石だよなぁと思う。
「こむぎ。俺はこむぎ以外のものには死んでもならないから」
「うん。なっちゃだめだよ。時弥は僕の犬なんだから」
「こむぎも他の犬とか作らないでね?作ったら俺そいつぶち殺しちゃいそう」
「もちろん、しないよ。僕の犬は時弥だけで十分」
殺すだの、本当物騒な…、何て思いながらも俺は笑う。
出会った頃からこの二人はずっとこうだった。
見ていて面白いけど、恐ろしい。
それが、この二人。
「うわ、こわ。超こわっ」
「マジで、刃が二人じゃねぇかよぉ」
「……刃君が二人いるみたいだね」
「面白いだろ?」
俺が笑って、彼らに問いかければ、
「いや、怖いから。超怖いから」
夜はそういって、青ざめている。
「ああ、おもしれぇ。刃が二人いておもしれぇ」
そういう、風霧。
「俺の、英樹がおびえてんじゃねぇかよ」
そういって睨んでくる西園寺。
「マジで、刃が二人だ…」
何て呟いている忠。
「…か、彼方。俺は大丈夫だから」
ヤンデレに脅えながらも西園寺の制服をつかむ英樹。
「これは非凡だな、非凡」
笑っている義彦。
そんな俺らの隣では、
「こむぎ、こむぎ、こむぎ――」
「…どうしたの?」
「呼びたいだけ。寧ろ俺だけでいいよね。こむぎの可愛い声聞けるのって思う」
「ふふ、そう。僕も時弥の声だけ聞ければ満足だよ」
――ヤンデレな二人が会話を交わしていた。
ヤンデレ怖いヤンデレ怖いと夜が騒いだり、何とも言えない顔で忠が二人を見ていたり、面白そうに義彦と風霧が二人を見ていたり、西園寺と英樹が二人で会話を交わしていたり今日も生徒会室は騒がしい――。
end
会計様→野仲英樹
平凡君彼氏→由井月忠
『月夜』→花崎夜
会計様彼氏→西園寺彼方
ヤンデレ君→掘田刃
平凡君→田村義彦となります。