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君のことをずっと見ていた。

 君はいつだって、噂の中心にいた。誰かの中心にいた。君は何でもできた。

 君は影で努力していた。君はいつだって一番だった。いつだって、人の前にいた。

 僕はそんな君にあこがれた。僕はそんな君に追いつきたかった。僕はそんな君と並びたかった。

 だから、僕は―――、君に追いつく努力をはじめた。

 君は、きっと僕の存在すら、知らない。

 だけど、僕は君に恋をしていた。


 ――――そして、高一の春。



「生徒会長に任命された八王子隼人だ。これからよろしく頼む」

 僕は、ようやく君の前に立てた。

 僕は、ようやく君の瞳に映れた。

 「書記に任命された間宮比呂です。よろしくお願いします。先輩方」

 ―――同じ生徒会のメンバー・生徒会書記として八王子隼人……その人の目の前に立つ事が出来た。

 八王子先輩にあこがれ、恋し、追いつきたいと願って、八年の月がたって、ようやくこうして僕は八王子先輩の前に立てた。

 八王子先輩は初等部の頃から生徒会とかを進んでやった。

 中等部、高等部は、抱きたい抱かれたいランキングで生徒会が決まる。(とはいっても成績も関係しているが)

 中等部では、ランキングはあと一歩のところで生徒会入りを果たせなかった。

 だから、高等部でこそ、生徒会入りいたいと思って、だから頑張ったんだ。

 周りが票をいれてくれるような、そういう人間になろうって。

 全ては、近づきたいってそう願ったから。そんな不純な動機だったけれど。

 ―――そうして、僕ははれて生徒会書記になれた。

 これで、近くで八王子先輩を見る事が出来る。喋る事が出来る。

 それだけで、どうしようもなく嬉しい。

 八王子先輩は人気で、だから理由もなしに近づいたら親衛隊に攻撃される恐れがある。

 生徒会ってのは別格なのだ。

 特に生徒会長――抱かれたいランキング№1なんて事になると。

 同じ生徒会役員になれた。だから一緒にいても不自然でもない。親衛隊にだって嫌がらせされないだろう。

 僕は、その立場を手に入れた。

 「八王子先輩、終わりました」

 頼まれた仕事を片付けて、仕事をこなしている八王子先輩に近づき、書類を渡す。

 こういう仕事だってできるように、家の仕事も進んで手伝ったんだ。八王子先輩に呆れられないように。

 「もう出来たのか」

 少し驚いたようにいう八王子先輩に何だか嬉しくなる。

 こんな近くに、八王子先輩がいる。会話を交わしている。

 それを思うだけで、どうしようもなく嬉しくてたまらなかった。

 生徒会に入って一ヶ月が経過した。今は五月。

 生徒会メンバーは、生徒会長に八王子先輩。

 副会長に腹黒そうな笑みを浮かべる中田先輩と、儚げな美人の水野先輩。

 書記が僕と、親衛隊の子と遊びまくってるらしい千賀先輩。

 会計が僕と同じ年の双子でそっくりな本川兄弟。

 その七人で形成されている。

 双子と千賀先輩は結構サボり癖があったりして困るものである。

 また八王子先輩から仕事をもらって黙々とこなす。

 そうしていれば、理事長に呼ばれていた水野先輩が帰ってきた。

 「水野先輩、理事長は何ていってましたか?」

 八王子先輩が問いかける。

 あ、ちなみに僕と本川兄弟が一年。八王子先輩と中田先輩と千賀先輩が二年。三年は水野先輩一人だ。

 「何でも転入生が来るんだって。しかも明日らしくて…。理事長の甥らしいけど。急でびっくりしてしまいました」

 「理事長の甥?」

 「転入生ですか?」

 僕と中田先輩が、水野先輩の言葉に口を開く。

 「それで、生徒会から案内をとの事だったよ」

 「そうですか…。

 じゃあ、中田。お前いってこい」

 「…わかりました」

 そうしてその話はそこで終わった。

 

 まさか、その転入生が学園をかき乱すとはその時は全く思ってはいなかった。


 次の日、転入生を迎えにいっていた中田先輩は上機嫌で帰ってきた。

 普段そんな上機嫌な笑みを浮かべたりしないから、何だか警戒してしまう。何かあったのかと。

 その時は、めずらしく本川兄弟とか、千賀先輩もそろっていた。

 「なにかいい事でもあったか、中田」

 「ええ、転入生を気にいったんです」

 そういって微笑む、中田先輩。

 へぇ、転入生って中田先輩に気にいられるような性格だったのか。なんて他人事のように思う。

 正直そこまで関心はない。

 「へぇ、面白そう。みにいきたいかもー」

 「「僕らもー」」

 「あの子は僕のですから手を出したら許しませんからね」

 出会って一日で僕の宣言……。中田先輩って惚れっぽいのかな?

 八王子先輩はそんな中田先輩に呆れたような表情を浮かべていた。

 「会いにいくのはいいが、問題事は起こすなよ」

 「わかってます」 「「はーい」」

 「うん、わかったー」

 何て、勢いよく返事した癖に問題事を起こすとは、その時は思っていなかった。



 そして、昼休み。



 僕はお弁当を作ってる。

 で、八王子先輩は結構購買で買ってたりする。

 水野先輩は彼氏が作ってくれてるお弁当。

 それで生徒会室で昼食をとっていた。中田先輩たちは食堂に、転入生に会いにいっているた。

 八王子先輩以外基本的に僕は興味ない。

 八王子先輩の瞳に少しずつでも僕が映っていってくれるようになればいいと思う。 有能だ、とかそれだけでもいい。僕を、八王子先輩が少しでも印象もってくれれば、それで幸せだから。

 勉強も、運動も、あと喧嘩とかも、全て出来るようになろうってそう願ったのは、全て八王子先輩に追いつきたいと勝手に僕が願ったから。

 八年前の僕は、勉強も運動もそんなに出来なかった。

 でも憧れた。好きだと願った。その瞳にうつりたいと願った。

 だから勉強だって、運動だってした。

 自分の身を守れるぐらいに強くなりたくて、土日に実家に帰って、空手とか合気道とか習った。

 ちらっと八王子先輩を見る。

 見ただけでどうしようもなく鼓動が早まる。

 ……僕はどうしようもなく、八王子先輩が好きなんだなって自分で自覚してる。

黙々とお弁当を食べていたら、メールの受信音が鳴る。

 メールを見れば、それは僕の親衛隊隊長の鷹先輩からだった。

 そのメールの内容を見て僕は驚いた。

 ……内心、えぇー? である。

 そうして僕は、八王子先輩を見た。

 「八王子先輩」

 「どうした?」

 「……僕の親衛隊隊長が食堂にいて、メールもらったんですが、中田先輩達がやらかしたっぽいです。これを見てください」

 そういって、何とも言えない顔で僕はメールを八王子先輩に見せる。

 そこに書かれてるのは要するに、転入生(外見毬藻らしい)に中田先輩達が接触。

 名前呼びで親衛隊の反感を買う。双子を何故か見わけて惚れられ、千賀先輩には何故か気にいられ抱きつかれる。

 よって、親衛隊の反発が半端なく、転入生は狙われる事間違いなし。

 ということである。

 水野先輩も八王子先輩もそれを見て、顔をしかめた。

 ああ、めんどくさい。

 何やっちゃってんだろう、中田先輩達。

 「八王子先輩、中田先輩たちの親衛隊って過激派ですよね、確か…」

 「ああ。双子と千賀と中田の所はそうだな」

 丁度穏健派なのが、僕と八王子先輩と水野先輩の親衛隊だ。

 で、過激派が問題起こしてる人達の方。

 これ、絶対学園荒れそうだと思って、ちょっとうんざりしてしまう。中田先輩達何やってるんだろう…。

 八王子先輩の親衛隊は、八王子先輩が悪いようにもよいようにもしないというか一切干渉してない感じで、八王子先輩は親衛隊が荒れるような行動しないし、穏健派なのだ。

 で、水野先輩の所は結構お茶会とかしてるらしく、ほのぼのとしてるって本人がいってた。

 僕の所は、中学で親衛隊が出来た時に「好きな人がいる」って告げて、「間宮様の片思いを応援する隊」にさせた。

 ……荒れたら八王子先輩に迷惑かかるだろうし、だからはっきり、ずっと八王子先輩が好きだからと告げて納得してもらった。

 だから何と言うか、色々親衛隊に相談して意見をもらってたりもする。

 「…とりあえず、おこっちまったもんは仕方ねぇ。中田達に注意するか」

 八王子先輩は、面倒そうに顔をしかめてそういったものである。

 「狙われるならなおさら僕があの子のそばで守らなければいけません」

 「そうだよねぇ。本当親衛隊って最低」

 「僕らが~」

 「「守るんだもんね」」

 ……八王子先輩が注意して彼らが言った言葉はそれである。

 内心僕はおいおい、と思っていた。だってそうだろう。

 一緒にいたらますますその子が狙われるじゃないか。

 鷹先輩に聞いた所その転入生は外見は毬藻らしいし、趣味が悪いのかこの人達。

 「僕はあの子の所にいきますから!!」

 「あ、待ってよ、俺もいく」

 「「僕らも行く」」

 何ていって、去って行ってしまう彼ら。

 ……生徒会室に残された僕はため息を吐いた。

 「…八王子先輩中田先輩達、仕事終わらせてないですよね」

 「…ああ」

 自分の仕事も終わらせずに転入生に構う気なのか。

 千賀先輩と本川兄弟はサボり癖があるにしても、中田先輩はこれまできっちり仕事をこなしていたんだが…。

 あんな調子で、べったりする気満々だなんて…。

 ああ、でも、転入生は一般生徒として編入だから授業免除とかはないはずだから転入生が授業中は仕事をしてくれるかな。

 なんて、そんな風にただ面倒だなと楽観的に僕は考えていた。



 ―――なのに、転入生がきて、一週間たっても、あの四人は仕事を一切片付けなかった。



 そして、授業免除もないというのに転入生は中田先輩たちとサボり、遊びふけているらしい。

 ………幾ら理事長の甥だろうと、留年でもしたいのだろうか?

 七人分の仕事を三人でやるのは結構きつい。

 授業にだって出れないぐらいだし、クラスの子にわざわざノートをコピーしてもらって届けてもらっている。

 僕は、天才ではない。だから勉強しなければおいていかれてしまう。

 折角、勉強も一番をとって、運動だってできるように少しずつ鍛えて、色々やってるのにこれで駄目になるとか嫌だ。

 ……僕って負けず嫌いなのかもしれない。

 今一位をキープしてるなら、下に落ちたくないと思ってしまう。

 どんどん、親衛隊は荒れていくし、仕事はたまっていく。

 勉強とかだってしなきゃだし、…困ったなと思う。

 ―――今、生徒会室に居るのは僕と八王子先輩だけ。

 水野先輩は職員室に書類を提出しにいっている。

 もうすぐ新入生歓迎会だってあるのに。本当、困る。

 つかれたように息を吐く、八王子先輩が目に映る。

 そもそも生徒会長の仕事は他の役員よりも多いのだ。

 それなのに必要以上に仕事をやらなきゃいけないからと、顔色が悪い。

 「……八王子先輩。休憩しましょう。顔色が悪いですよ」

 「だが、しかし……」

 「会長印とかいらない奴なら僕が片づけますから」

 八王子先輩は責任感が強い人だ。ずっと見ていたからそれを知ってる。

 そして、役員達を見捨てる気もないことも知ってる。

 リコールの話が風紀から出てるのも八王子先輩がストップしてるからだ。

 ―――戻って来てくれると信じてる。

 ああ、そんな八王子先輩を苦しめる中田先輩達が嫌いだ。

 千賀先輩と本川兄弟も前まで少しはしていた仕事を一切しないし、完璧にこなしていた中田先輩は何もしなくなった。

 中田先輩は有能な人だ。だから結構千賀先輩達がサボった分も処理していた。

それなのにそれが一切なくなったのだ。

 僕も他の役員の仕事に少しは手をつけているが、正直余裕はない。

 もうすぐテストもあるし、どうにか、しなきゃやばいよなとは思う。

 仮眠室に眠りにいった八王子先輩を見届けて、仕事をこなしながら、思う。

 ―――八王子先輩のために、生徒会役員の目を覚まさせてあげたい。

 そもそも、仕事以外で授業免除を使ってるあたり、中田先輩たちは色々駄目なのだ。

 特権はサボるためのものではない。






 *


 八王子先輩の印鑑がいるもの以外を片づけた時にはもう、2時間経過していた。

 八王子先輩はまだ起きない。水野先輩は少し彼氏の所にいってくると行ってしまった。

 …仕事やら親衛隊問題やら色々あるために、彼氏に中々あえにいけないらしい。

僕はよく知らないけど、彼氏風紀らしいし。

 僕はなにか食べよう、なんてそうおもって、食堂に向かう事にした。

 …もしかしたら食堂に中田先輩達がいるかもしれない。いるならば、注意しに行こう。

 最も、僕の意見を聞いてくれるかどうかは別だけれども。

 それから、食堂へと僕は向かった。

 「きゃぁあああああ!!」

 「間宮様ぁああああ」

 「かわいいぃい――」

 「お綺麗です――!!」

 「あぁ、やべぇ、だきてぇ」

 ……食堂は煩いからあんまり好きではない。

 親衛隊持ちが来ると、いつでもこうだ。

 そして、抱きたいとか言った奴気持ち悪いからやめろ。

 僕は八王子先輩以外にそういう風に見られたくない。

 ……八王子先輩にならぜひともその瞳で僕を映してほしいって思うけど。

 「比呂様、顔色が悪いですが、大丈夫ですか?」

 そういって、駆けよってきたのは、僕の親衛隊隊長の鷹先輩だ。

 「うん。大丈夫だよ。で、転入生と中田先輩たちは?」

 「……きてますよ。役員席にいます」

 そもそも、一般生徒を役員席に連れ込むのさえ、どうかしてるとしか言いようがない。

 まだ、親衛隊持ちなら役員席に連れていかれても周りは納得するだろうが、転入したばかりの一般生徒――それも身だしなみが不潔となれば生徒達や親衛隊からの反発は凄まじい事になるだろうに。

 授業妨害も結構しているらしいというのに、注意してもいう事を聞かないらしい。

 役員席に近づいていけば、役員達の他に、一匹狼と言われる不良とか、爽やかだと有名なバスケ少年とかもいる。

 ……何だか煌びやかな集団の中に、毬藻のような子と平凡そうな子がいるのが不思議だ。

 というか、平凡な子、泣きそうな顔してないか…?

 これ、無理やり連れてこられたのだろうか?

 そんな事を思いながら僕は呼びかける。

 「中田先輩、千賀先輩、本川君達。仕事もしないで何やってるんですか?」

 あの人に迷惑をかける人間なんて、嫌いだ。

 あの人――八王子先輩を困らせるだけの無能な役員なんていらない。思わず苛立った声をあげてしまう。

 「間宮じゃないですか」

 「「えー。仕事なんていいじゃん」」

 「俺ら、優ちゃんと一緒にいたいしー」

 ああ、何かイラッとくる。

 結局生徒会役員を引き受けたのはあんたたちだろうに。仕事をしたくないなら、引き受けなきゃ良かったのに。

 「なぁなぁ、お前誰だよ! 仕事仕事って学生なんだから遊んでていいだろ!」

 「転入生君。学生だから遊んでていいなんて、中田先輩たちはいっちゃいけません。遊びたいなら誘われた時に生徒会に入る事を断ればよかったんです。現に断った人もいます。

 しかし、中田先輩たちは断らなかったんですよ? でしたら責任を持って仕事をしたらどうですか?」

 そもそもこの学園で生徒会に入っていたという事は後に自慢になることである

 この学園はお金持ちばかりなのだから。この学園で将来のための人脈を作ったり、生徒会の仕事を後に役立てたり、色々出来るだろうし。

 中田先輩たちも仮にも跡取りだ。それなのに、こんなんでいいのだろうか?

 「ふっ、本気の思いを知ったらそんなものに時間をかけるわけにはいかないんですよ」

 …何だか恋に酔ってるような中田先輩の言葉に何だかなぁと思ってしまう。

 「「そうだよー。本気で好きだからずっと一緒にいるんだもんねー」」

 「優ちゃん大好きー!」

 「な、だ、抱きつくな」

 内心、何この茶番である。

 というか、ついこの前会ったばかりで何が本気の思いだ、とつっこみたい。

 そもそも出会ってすぐに気にいるって惚れっぽいのか? 一目ぼれか?

 熱くなるのも早いなら冷めるのも早いんじゃないだろうか、何て思ったり。

 「…中田先輩たちの本気の思いとかどうでもいいので、とりあえず仕事してくれませんか?」

 「お前、そんな言い方するなよ! こいつらの事どうでもいいなんて!」

 「…転入生君になんて言ってません。僕は中田先輩達に言っているんですけど」

 「転入生君じゃなくて名前で呼べよ! お前そんな言い方して友達いなくてさびしいんだろ!俺が友達になってやる」

 「…友達はいるけど」

 なってやるって言ったよね、転入生君。

 何、僕には友達がいないんだから俺が友達になってやるって? いや、普通に友達ぐらいいるんだけど…。

 「嘘つくな。こいつらは親衛隊のせいで友達いないっていってたぞ!」

 「それは、中田先輩達の親衛隊が過激派だからでしょ? 僕の所は穏健派ですし、別に普通に仲良いけど?」

 「嘘つくな!!」

 「嘘じゃないし。大体僕の親衛隊は僕の邪魔はしないよ。そんな風に僕がしたんだもん」

 大体、親衛隊は親衛隊持ちの行動次第で過激派にも穏健派にもなるもんだし。

 何、友達がいないの親衛隊のせいにしてるんだ。つか、そもそも中田先輩達って友達いなかったの?

 うわ、寂しい人達だなぁ、本当…。

 八王子先輩は一人でいるのが自然な人だし、そういう所凄くかっこいいからいいけど、何中田先輩達って友達欲しくてたまらないって思ってるのに自分で線引きして、距離置いて誰も自分と友達になってくれないとか思ってたわけ?

 友達欲しいし、誰かに理解してほしいなら中田先輩達の線引き無くせばいいのに。

 「そんなわけない。親衛隊は最低だ!」

 …おい、此処に親衛隊メンバーどれだけいると思ってる。

 そう思わず聞きたくなる。大体親衛隊に面白そうだからって入ってる人だっているし、結構な人数が親衛隊に所属しているのにその発言って…。

 何したいの、転入生君。

 ああ、苛めてくれっていってるのかな?

 「流石、優は優しいです」

 「「優ちゃんさいこー」」

 「優ちゃん大好き―」

 そして、中田先輩たちはバカなのか?

 こんな頭の働かない一方通行な言葉しか聞かない人間とは一緒にいて得も何もないと思うし、一緒に居たいとは思わないんだが。

 「あの、中田先輩達、あなたたちが転入生君好きでもどうでもいいんで、さっさと仕事してください。しないなら、役員やめてくださいよ」

 何だかめんどくさいなぁなんて思いながらも、自分と八王子先輩のためだしと強く言う。

 「あなた、私にそんな口聞いていいと思ってるのですか」

 「「間宮って僕達の家より格下だよねー」」

 「ぶっちゃけ、比呂君って何で生徒会はいれたの? あ、誰かともしかして寝た?」

 ああ、確かに僕の家は大企業ってわけじゃない。八王子先輩達、他の生徒会のメンバー達の家に比べて、格下だ。

 でもだからって、何で寝たって思考にいく?

 生徒達が投票してくれたのは、僕がいれてもらえるように色々やってたからだ。

 だって、高校では八王子先輩の前に立ちたかった。生徒会に入りたかった。

 ………ようやく、僕は勉強も運動もできるようになったし、親衛隊だって中学で出来て、親衛隊の皆が応援してくれて、自分に自信がもてたから。

 鷹先輩たちも、「八王子様にも並べますよ」って笑ってくれて、それが嬉しくて、投票してもらいたくて、頑張ったのに、何でそんな言われなきゃいけないの?

 「な、そんな体を大事にしなきゃだめだろ!セフレなんて駄目だ」

 「いや、あのね、転入生君。僕そんなのいないから」

 つか、立派に童貞で処女だけどなにか文句でもあるか? って言いたい気分だ。

 初等部の頃から八王子先輩しか興味ないし、他の人間とそういう行為するなんてとてもじゃないけど考えられない。

 僕はタチネコでいうとネコ側だから、タチに狙われた事会ったけど、習ってた武術で負い返したり、鷹先輩達が守ってくれたし、未遂だ。

 「だって、こいつらの家より下なんだろ! こいつらが生徒会に何で入れるか疑問に思えるぐらいなんだろ!」

 「だからって、何で寝ただのそういう思考に行くの?」

 「だって、そうじゃなきゃ考えられないしー」

 「「だよねー」」

 千賀先輩の言葉に頷く本川兄弟。

 ああ、何だか苛々する。言葉の通じない猿かこの人達。寧ろ宇宙人?

 「最低だ! セフレなんかより本気で好きな人とじゃないとそんな事しちゃダメだ! あ、お前本気で誰かの事好きになった事ないんだろ!」

 ………聞き逃せない一言をいわれて、僕は固まった。固まった僕に彼らは告げる。

 「「図星~?」」

 「好きな人いないから俺らにそう言う事言えるんだろ~?」

 「そうですよ。本気ならずっと一緒に居たいのは当たり前でしょ」

 得意げに笑う、彼ら。

 「やっぱりそうなのか! お前、本気の恋したことないからんなひどい事こいつらに言えるんだな!

 こいつらはお、俺に本気なのに」

 ああ、顔赤らめて言う転入生君が非常に気持ち悪い。

 可愛いと喚いてる中田先輩たちは目がイカレてるんだろうか? そもそも気持ちに気づいているなら答えてやるか、振るかしてやれよ。

 「……誰が、本気の恋したことないって?」

 でも聞き逃せないのはそれだ。

 どうして、ずっと八王子先輩が好きだって思ってた気持ちをバカにされなきゃいけないんだ?

 「え?」

 転入生君や中田先輩達がそういって僕を見る。

 声で僕が怒ってるのがわかったらしく、じっと見ている。

 「…残念だけど、それは転入生君達の妄想だよ。僕にはずっと好きな人がいる。

 本気の恋本気の恋って中田先輩達煩いけど、僕からすれば、君らの何が本気なのか全然わからない。

 会ったばかりで、一目ぼれて、そんな、互いの事よく知りもしないで、好き好きよく言えるね?

 大体僕が本気の恋してない? 何であの人を好きだって気持ちバカにされなきゃいけないの?

 君ら、僕の事何知ってんの?僕が何年あの人に片思いしてると思ってんの?八年だよ、八年。初等部の頃からずっと好きだったんだよ? ずっと憧れてたんだよ? ずっと目で追ってたんだよ?

 八年も片思いしてんのに、それが本気じゃないとか何で会って一週間かそこらで本気の恋語ってる奴らにいわれなきゃいけないわけ?」

 何だか苛々して一気にそう言ってしまえば、周りの生徒達ほとんどが固まった。

 「え―――――!!」

 そして、響いたのは生徒達のそんな声。

 そうして、騒ぎだす、生徒達。

 「間宮様って好きな人いたの?」

 「え、八年っていった今? え、嘘、誰?」

 「比呂ちゃんに好きな人!?」

 「うそ、ショック」

 「ま、間宮様って一途なんだ…」

 ……ああ、もう、何だか周りが騒いでて鬱陶しい。

 僕はそんな事を思いながら唖然と固まっている中田先輩たちに向かっていう。

 「僕が生徒会に入ったの不思議なんですっけ? 僕の家が中田先輩達他の生徒会より下なのに投票が入ってた事が。

 その理由ですけど、僕どうしても生徒会はいりたかったんですよ。だから人に優しくしようって思った。誰かに好かれるようにしようと思った。

 生まれながらに母から顔だけはよく受け継いでましたからね。活用するほかないでしょう?」

 ………思わず口走った言葉に周りが固まってるのがわかるけど、僕は続ける。

 「僕は八年前から、あの人に追いつきたいと勝手に願ってた。

 あの人は昔から、勉強も運動もできたし、目立ってたから、ずっと見てた。

 僕は、あの人に並べる人間になりたいって、勝手に思ってた。

 だから、勉強も運動も頑張った。

 あの人は僕の事一切知らないだろうし、僕が勝手に見てただけだから、勉強も運動も学年でトップになれた僕は自信がついたから、あの人の前に立ちたかったから、生徒会に入りたくて、色々やった、それだけです」

 ……てゆーか、一気に思わず、気持ちがバカにされた気分になっていっちゃったけど。

 これ、生徒会に好きな相手いるってばらしたも同然かも、ああ、どうしよう、はずかしくなってきた。

 「僕は――」

 「比呂君、ストップね」

 続けようとした言葉は、よく知った声にとめられた。

 後ろを振り向けば、水野先輩と……八王子先輩がいた。

 って、あれ……も、もしかして聞かれてた!?

 八王子先輩の顔を見た瞬間、顔がぼっと赤くなったのがわかって、思わず下を向いた。

 「比呂君、可愛いね。八王子君の事そんなに好きだったんだ」

 「な、み、水野先輩!?」

 「今更否定しても駄目だよ? 比呂君がいつも八王子君の事見てたの知ってるし。それに八王子君も気付いてるから、ほら、耳赤くなってるよ?」

 「え?」

 笑って言う水野先輩の言葉に顔を上げれば、顔を手で覆って何だか、耳を赤くしている八王子先輩。

 え、え…?

 何て戸惑っていたら、

 「八王子君も比呂君もしっかり話してきていいよ。あとはお二人でね。中田君達の事はしっかり片づけとくからね」

 そう水野先輩にいわれて、そのまま二人で食堂を追い出されてしまった。

 …そうして、しばらく食堂の前で無言だったのだが、「生徒会室、行くぞ」という八王子先輩の言葉に頷き、僕らは無言で歩く。

 生徒会室について、ソファに座って向かいあう。

 何だか気まずくて、僕は下を向く。

 しばらく、無言でそんな中で八王子先輩が口を開く。

 「……八年前から見てたってマジ?」

 「は、はい」

 どきまぎしながら僕は頷く。ああ、顔が上げられない。

 「え、っと迷惑かもしれませんが、僕はずっと、八王子先輩が、その、す、好きなんです」

 中途半端なままが嫌で、僕はそう言った。

 だって、中途半端でちゃんと言わないって何だか逃げてるみたいでいやだったから。

 そうしてしばらく無言な中で、八王子先輩が言った言葉に僕は仰天した。

 「……俺も、好きだ」

 「え?」

 驚いて顔を上げれば、何処か、顔を赤くしてはずかしそうにしている八王子先輩。

 え、え?

 今、す、好きっていった?

 正直困惑してならなかった。

 「え、え、う、うそ!?」

 ずっと好きで憧れてた八王子先輩が僕の事を好きなんてそんな都合のいい事あるはずない、と僕は聞き返す。

 だけど、八王子先輩はいった。

 「……お前、中等部で、図書室でずっと勉強してただろ」

 「…え、はい」

 確かに僕は勉強していた。うちは進学校で中一の始めの成績が思ったより悪くて、上位……それもベスト3には入りたくて、猛勉強した。

 だって、一つ上の八王子先輩はずっと首席だったから。

 「図書室な、中等部の生徒会室から見えるんだ」

 「え?」

 「それでな、毎日勉強してる綺麗な奴いるなって、見てた」

 そんな事をいわれて、何だか信じられなくて八王子先輩を見る。

 「ほ、本当、ですか?」

 「嘘はいわねぇよ、こんな時に」

 「じゃ、じゃあ、本当に八王子先輩が、僕の事…?」

 「そうだって、いってるだろ。お前は八年前から俺を見てたらしいけど、俺は三年前からお前を見てたんだよ」

 はずかしそうに笑った八王子先輩。

 …な、何だか、嬉しすぎて何とも言えない気持ちになる。

 「だから、俺と付き合えよ」

 「…はい」

 そうして、もちろん、そんな言葉に僕は頷くのだった。

 ……まぁ、そうして僕と八王子先輩のお付き合いが始まって、何故か結構祝福されてて。

 あとあの後水野先輩が何したか知らないけど、中田先輩たちは仕事をするようになって、転入生は退学したらしい。

 ああ、水野先輩は怒らせちゃいけないんだな、とそうおもった。

 まぁ、そうして学園は平和になって、僕は八王子先輩の恋人って地位を手に入れて、今、凄く幸せでたまらない。



end



ちなみに題名は両方の事です。

比呂は小学生から、会長はち三年前から互いに見てたという。

特に互いに知らなかったですけどね。

水野先輩にはバレバレです。




間宮比呂

一途な子。努力家。文武両道な八王子先輩に追いつきたいがために色々がんばりまくった子。

生徒会役員だが、普通に友達もいるし、クラスメイトとも仲良し。

仲良くない人には結構冷たい。八王子先輩の事が大好きでたまらない子。

抱きたいランキング3位。


八王子隼人。

生徒会長。抱かれたいランキング1位。

基本何でもできる万能な人。

何だか必死に毎日図書室で勉強する比呂を見てた人。



水野先輩。

三年生。生徒会副会長。おそらく彼氏に中々会えない事に苛立ってサボってた面々に恐怖を植え付けたらしい人。

結構怒らせたら怖いけど、美人さん。



中田・千賀・本川兄弟。

サボってた面々。何だか本気の恋によってたっぽい。


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