総受けになっている親友の後ろでこっそりと恋愛してます
―――俺には、猛烈にわからない事がある。
全寮制の男子校。腐った人達が喜びそうな王道学園の二年に最近進級したばかりの俺の名は笹井烙。
中等部からこの学園に通っているから、男同士の恋愛とかにも嫌でも慣れた。
たまに学園内で見るカップルのイチャイチャとかも、別にいいんだ。そんないちゃついてようが。
だがな、
「可愛い――」
「なぁ、功俺様と…」
「違います、私と――」
何で同室者で親友である功に、最近モテ期がきているんだろうか…? それが俺にとって最大の疑問である。
功は平凡顔である。正直何処にでもいる人間だと俺は思う。
なのにだ、何故か生徒会やら一匹狼やら、色んな人といつの間にかフラグを立たせ、取り巻きを形成させてしまっているのだ。
本当にいつの間にかこうなっていた。
少なくとも始業式の時はこんな取り巻きいなかった。
始業式からたった一ヶ月である。
それで、取り巻きが出来ているってえぇえ?お前魔性の男だったの?って聞きたくなってしまう。
「…あなたには渡しませんからね!!」
「同室者だからって手を出したらゆるさねぇ」
……そして一番厄介なのは、何故か俺が功に惚れていると勘違いしている事だ。
違うと否定しても、功に惚れないはずないとか思いこんでるって何なんだろう。
俺は普通に親友だから一緒に居るだけなんだけど…。
そもそも取り巻き達は功を可愛いと言うが、俺にはよくわからない。
功は普通にいい奴だと思うけど…、取り巻き達限定でフェロモンでも出てるのか…?
そもそも俺はこの学園にきて染まってしまったから、ノンケではないものの、何故に、功に惚れるのかわからない。
大体、俺好きな人居るんだが…。
「あの、烙にそんな事言わないでくださいよ。先輩達」
苦笑しながらそういう功は悪い奴ではない。
というか、俺が片思いしている事は功にもいっていない。
だって好きな奴居るとか言うの、なんか恥ずかしいじゃないか。
「でも気をつけてくださいね。男は狼ですから!」
「なにかあったら言うんだぞ?」
「いや、ないですから…」
取り巻き達は、何故か増えてきている取り巻き達に焦っているみたいで、いつも目の前で逆ハー展開をやっている。
別に悪い人達ではない。腐った奴らの読む本(ちなみに俺は腐ってない。友人に読まされた)みたいに功に構って仕事放棄とかはしていないし。
親衛隊も自身で統制しているわけだし。とはいっても、やっぱり、功を気にいらない人間は結構いるわけだけど。
「―――笹井。功に何かないようにそばにいろよ」
……風紀委員長にそういわれる。
この人は別に俺にどうこういわない。
というか、俺風紀委員だし。委員長いい人だから俺が功に興味ないのちゃんとわかってくれてる。
それにしても、うちの委員長まで落とすとは…、本当に功には驚く。
というか、びっくりしすぎて、何とも言えない。
委員長ノンケだって言い張ってたんだが。
つか、功ってノンケだよな。イケメンだろうと男に口説かれて気持ち悪くないのか…?
まぁ、いいや。委員長達が此処に居るなら、俺風紀室行こうかな。
正直睨まれるのは、いやだし。
「功、俺ちょっと出かけるから」
「わかった」
さて、あの人はいるかな、そんな事を期待しながら、俺は寮室から出た。
あの人――、要するに俺の好きな人は同じ風紀委員なのだ。
風紀室へと足を運ぶ。
見なれた何人もの人が、そこには居る。おはようございますと、挨拶をする。
視線をソファへと向けると、あの人―――清志先輩がいた。
だらしなく寝転がりながら漫画を呼んでいる。
学園の風紀は、主に強姦とかを防ぐのが目的だから、結構服装をちゃんとしていない人間が結構いる。
清志先輩なんて、髪は金髪に染めているし、着崩している。
「清志先輩、こんにちは」
「おう、烙か。委員長は相変わらずお前の同室者ん所か?」
「はい。ついでに生徒会長とかも部屋にいたんで、居づらくてこっち来たんですよね」
――それに、清志先輩にも会えるかなと思って。なんて恥ずかしいことは告げられない。
「あー、生徒会のバカもいんのか」
「そうですね。あと他にも色々きてて…」
思わずそういって、苦笑してしまう。
本当こんなモテ期になる現実に居るなんて思ってなかったから、何とも言えない気持ちになる。
「清志先輩、副委員長はきてないんですか?」
「副委員長なら委員長の変わりに喧嘩収めにいってる」
「あー、副委員長、委員長の事応援してますもんね」
委員長と副委員長は幼馴染で親友だ。
だから委員長が功と結ばれる事を願ってるらしく、結構功の所にいってる委員長のかわりに仕事をしていたりするのだ。
「それにしても、俺、何で功がこんなにもてるかよくわかんないんですよね。中学から親友やってますけど」
「安心しろ。俺にもわからん」
清志先輩は漫画に視線を向けたままそういった。
清志先輩は、委員長や生徒会ほどの規模ではないにしろ、親衛隊持ちだ。
だから功に人気者が次々と落ちていった時、清志先輩が惚れないかひやひやしていたものだけど、清志先輩はこうして興味ないという態度をしている。
それに、ひどく安心する。
「何笑ってんだ?」
清志先輩が、功に惚れなくてよかったって、笑みがこぼれていたら、いつの間にか漫画から視線をそらして、こっちを見ていた清志先輩にそう言われた。
「何でもないですよー。そういえば、清志先輩、最近食堂にパフェの新作出てきたらしいですよ」
「マジ?」
「はい。食堂でバイトしてる友人がいってたんですよ。今日の朝から追加されたらしくて、だからそれ食べに夜一緒に食堂いきませんか?」
清志先輩とは、普通に先輩後輩として仲が良いと思う。
俺も清志先輩も結構甘い物とか好きだから、こうして一緒に食べに行こうとか誘い安くて嬉しい。
「ああ、もちろんいく」
そうして笑う清志先輩の顔を見ると、ああ、好きだなぁって思う。
風紀委員に入ったのは、俺が合気道習ってて、絡まれた所を返り討ちにしたのを清志先輩に見られて、勧誘されたからだ。
別に最初から清志先輩が好きだったわけじゃない。勧誘されて、何となく流されるままに風紀に入って、そして、視ているうちにいつの間にか惹かれてた。
俺は初等部から此処に通ってるわけでもなくて、中学から入学した。だから、清志先輩に惚れるまで、俺はノンケだった。
男に惚れるわけないって思ってた。
でも今は、清志先輩の特別になれたらいいのにとかそんな思考にまで陥ってしまう。
それにしてもあの時風紀入って本当よかった。一緒に夕食食べたりできるぐらい仲良くなれて、凄く嬉しい。
それに甘い物食べてる時の清志先輩凄く幸せそうで、そんな清志先輩を見るのが俺は好きなのだ。
親友がハーレム作ってる。
それは、正直俺はどうでもいい。
功がノンケを貫きとおそうと、誰と付き合おうとそれは功の自由だし。
まぁ、でも功が人気者と仲良くなって、そいつらが部屋によくきたりするから非難するって理由で風紀室にも前より来るようになったし、
今まで一緒に夕飯とか結構食べていた功が人気者に誘われて食べるようになったから、清志先輩が大変だなって、誘ってくれたりしてくれるようになったから嬉しいけど。
少しずつ、少しずつでいいから、もっと、清志先輩に近づけるように頑張ろうと思う。
俺の恋心は、俺しか知らない。
功のハーレムみたいに目立たなくていい。俺はこっそりと、地味でいいから、清志先輩の特別になりたいから、少しずつ近づくんだ。
end
笹井烙。
主人公。総受けの親友で同室者。
取り巻きに睨まれたりもするけれど、こっそりと風紀の先輩に片思い中。
風紀委員で結構強い。
清志。
主人公の片思い相手。
金髪。規模は大きくないが、親衛隊あり。
功。
総受けと何故かなり果てる平凡君。
主人公が何故功がモテるか本気で謎に思うぐらい結構普通の子。