親衛隊隊長=愛玩動物 2
親衛隊隊長=愛玩動物 続き
「秋田君、おはよ」
「幸君、新作のお菓子持ってきたの!いる?」
「幸ちゃん元気ー?」
朝、教室に入ったらクラスメート達がそんな事を言いながら僕のそばにかけよってきた。
僕は2年A組に在籍している。ちなみに竜一君はS組なんだけどね。
S組は家柄がトップとか、成績の特待生とかばっかなんだよね。
僕ん家はそこそこの家で、僕はそこそこの成績だからこのクラスなんだ。
竜一君も同じクラスだったら、きっと楽しかったんだろうけど。
「皆おはよぉ」
笑って、皆に挨拶する。
クラスの皆は凄く優しい。
僕が親衛隊隊長って立場に居ても、普通に皆優しくて、お菓子くれたり、困った時助けてくれたりする。だから僕はこのクラスの皆が大好きだ。
「幸ちゃん、今日は会長さんとご飯食べる日だよね」
「うん、そうだよ」
今日は竜一君と二人で夕飯を食べる日なんだ。
メールで竜一君に何食べたいかしっかり聞いて、もう材料も買ってある。
竜一君、おいしそうに食べてくれるから、何だか竜一君にご飯作るの好きなんだ。
「幸ちゃん、襲われないようにねっ!」
「秋田君可愛いから心配…」
「会長って本当幸君の事好きだよな」
「そういえば転入生に絡まれたりしてないの?」
一気に皆が喋り出す。
”転入生”という言葉に何だか怖くなる。
だって、転入生君何か怖い。大声で怒鳴ったり、腕つかんで離してくれなかったり、本当怖い。
「うん、大丈夫。転入生君とは会ってないよ」
僕が答えれば皆はそれぞれ口を開く。
「そっか、よかった。転入生の奴、副会長達が仕事するようになって構わないからって荒れてるみたいでさ」
「もう、俺らの癒しの幸ちゃんに何かあったらと思うと――」
「幸ちゃん、何かあったら俺らか、親衛隊の子か、会長にでもいうんだよ?」
本当、皆心配性だなと思わず苦笑してしまう。
親衛隊の子達も、竜一君も、クラスのみんなも、僕の事心配だっていう。
むー、僕これでも男の子なのになぁとちょっとへこみそうになる。
「でもね、幸ちゃん本当気をつけなよ?」
「あの転入生さ、一匹狼の三木の事連れてるらしいから…」
「生徒会の皆さまが仕事するようになったっていっても、転入生の取り巻きまだいるからさ」
取り巻きか、と僕は思う。
僕にとって転入生は怖い存在で、竜一君達に迷惑かけてた困った存在で、あんまり好感がもてないのだけれどもそんなに周りから見れば魅力的なのだろうか?
それにしても、不良さんを連れてるのかぁ…。ちょっと怖いかも。
仲良しの不良さんなら全然怖くないけど、知らない不良さんって怖いもんだよね。
なんて思っていたら、
「ゆーきっ、おはよぉ」
後ろから声をかけられた。
振り向いたら、少しチャラチャラとした金髪の男――クラスメイトの順也君がにこにこと笑っていた。
「順也君、おはよう」
順也君は竜一君とも結構仲良しだったりする。
竜一君の親衛隊メンバーの一人なんだけどね。
まぁ面白そうだからって親衛隊に入ったらしいけど。
ちなみにあゆちゃんはS組に所属してるんだ。
「今日は竜一とぉ、夕飯の日だよね?」
「うん」
「じゃあ、昼は予定ある?」
「昼はね、特に誰とも食べる予定とかないかなぁ」
僕は基本的に特定の人とずっと一緒にご飯食べてるとかしてない。
というか、親衛隊の子達とか、仲良しな先輩とか後輩とか、クラスの皆とか、結構誘ってくれるから、日によって誰と食べるか違うんだよね。
「じゃあ、一緒食べよう!」
「うん、いいよ」
そう言って笑えば、順也君はにっこりと笑ってくれた。
*
順也君と一緒に食堂へ歩く。
順也君は親衛隊に入ってるから親衛隊が居ないけど(というか、親衛隊の人間に親衛隊がいたらますます風紀が大変だし)、結構もてるみたいで、歩いていたら周りが騒いでいた。
「順也君は、人気者だね」
「いやー、幸のが人気だと思うよ?」
「え、そんなわけないじゃん。順也君の方が絶対人気だよ。
でも順也君が人気なのわかるなぁ。かっこいいし、優しいもんね、順也君は」
本当、僕の周りに居る人達って優しい人ばっかで、皆大好き。
にっこりと笑っていった僕の言葉に、順也君は一瞬だけ固まった。
「どうしたの、順也君?」
「いや、幸は本当可愛いなぁと思って」
そういって順也君は僕の頭をなでる。
皆よく僕の頭なでるんだよね。まぁ、なでられるの好きだし、いいけど。
食堂の中に入って、席につく。
食堂に来るのも久しぶりな気がする。
というか、僕は結構自炊したり、購買で食べたりとか色々してるからなぁ。
「幸、何食べる~?」
「そうだね。僕はオムレツ食べたいかなぁ。あとアイスとか食べたいかも」
「んー、じゃあ俺はA定食食べようかなぁ」
そんな会話をしながら、カードで注文をして、そのまましばらく待つ。
しばらくしたら、ウエイターさんが料理を運んでくれて、そうして僕らは食事を始めた。
食事をしてしばらくがたった時、
「あー、お前親衛隊の奴じゃないか!! お前のせいで志紀達が仕事なんて無理やりやらされてんだぞー!」
なんか、いきなり声が聞こえた。
しかも、声のしたほうを見れば転入生君が僕の方へと近づいてきていて、正直いって怖い。
しかも副会長さん達、自分から謝って仕事してるって竜一君いってたのに、何いってるんだろう、って正直思う。
僕の目の前まで来た転入生君はいきなり、僕に怒鳴りかかってきた。
「お前らなんて最低だっ。俺に制裁しようとしたり、竜一を騙したりっ。竜一はいい奴なんだ、だから騙されてでもしない限りお前なんかと一緒に居るはずないっ」
一気にそう言われて、怖くなって、順也君の服の裾をつかむ。
順也君はにっこりと笑って、転入生君とその隣に立つ赤髪の不良さんを見つめた。
「ねぇ、何言いがかりいってんのー? 幸と竜一は仲良しだよ?」
大丈夫だよって、安心させるように手を握ってくれる順也君。うぅ、本当に転入生君何か怖いよ。
「そんなわけないだろっ。てゆーか、お前誰だっ」
「俺~? 君に名前教える必要なくない? しかもさぁ、竜一って幸の事だーいすきなんだよ? そんな、騙されてるとかありえないしー?
てか幸って騙すとかできない子なんだからさ。そんな怒鳴るの辞めない?」
「お前――或に何いってやがる」
順也君と転入生君の会話の中に入っていった、不良さんがいた。
不良さんはぎろりと順也君をにらんでいる。なんだか怖い。僕は不良さんに視線を向けられただけで恐ろしいけど、純也d
「何~? 君にはなしかけてないんだけど、俺はさ、転入生にいってるんだよ?
幸に変な言いがかりつけるのやめないかーって、てかさ、君も君で何でこんなのにひっついてるわけ?」
にっこりと笑う、順也君。
順也君の言葉に不良さんは不快だとでもいうように、顔を歪めた。
今にも衝突しあいそうな、そんな緊張感がその場に走る。
――そんな中で声をあげたのは転入生君だった。
「何喧嘩しようとしてんだよっ。友達は喧嘩しちゃいけないんだぞっ」
「ん? 俺いつ三木と友達になったのー? 俺こいつと友達じゃないんだけど」
不思議そうに言葉を零す順也君。
そうだよね。あってすぐの人は別にお友達でも何でもないよね。
あ、というか、この不良さんがクラスの皆がいってた一匹狼っていう三木って子かぁと納得したように気付きて僕はその不良さんを見た。
「あ? 何見てやがる、てめぇ」
思いっきり睨まれて、そんな言葉を発せられた。
……なんかちょっと怖かった。
「つか、てめぇが或に制裁とかしやがったんだろう。或に何かするとかゆるさねぇぞ」
……言い争いを始めた順也君と転入生を置いて、近づいてくる不良さん。
怖いなぁ、どうしようと思っていたら声が響いた。
「幸ちゃんに近づくなっ」
「隊長脅えてるじゃんっ」
「あーもう、幸かわいーっ」
「幸ちゃんが可愛いのはいつもの事でしょ? それよりはやく幸ちゃんを保護するの!」
「はいっ、歩先輩っ」
「じゃ、俺らは三木の足どめするー」
あっという間に現れた親衛隊の子達の数名は僕を囲み、残りが不良さんと向かい合う。
「幸ちゃん、大丈夫?」
「隊長、転入生に絡まれてるって聞いて僕はらはらしたんですよ?」
「とりあえず、竜一様呼びますし、隊長の部屋でお食事します?」
「ここではもう落ち着いて食べられないでしょ?」
にこにこと笑いながらそういう皆。
本当に心配性なんだからと、苦笑が漏れる。
ふと、不良さんと向かい合ってる皆は大丈夫かなとそちらを見れば、
「なんだ、てめぇ――」
「僕たちは生徒会長親衛隊メンバーっ!」
「あ? 親衛隊が何邪魔してやがるっ」
「お前が僕らの可愛い可愛い隊長を苛めるからだろ!!」
「そうだよっ。あんなに可愛い隊長苛めるなんてっ」
「幸先輩を脅えさせるなんて許さないんだからっ」
「幸ちゃんには笑顔が一番なのにっ!!」
皆して、不良さんに色々いっている姿に皆凄いなと思う。
僕、不良さんって怖いからあんなに言えないもんなぁ。
なんて思いながらも、親衛隊の子達に連れられて、そのまま僕は食堂を後にした。
―――順也君を転入生の所においていってしまったことに気がついたのはそれからしばらくたってからだった。
*
「幸っ、転入生に絡まれたらしいが、大丈夫だったか?」
あの後順也君においていった事を謝るメールを送り、親衛隊の子達の昼ごはんを作り、テーブルに並べていたら、部屋に訪問者がやってきた。
――やってきたのは竜一君である。
「あ、竜一君だ。おはよー、ってあれ、今昼だからこんにちはの方がいいのかなぁ?
えーっとね、転入生君は順也君がなんか言い争いして、不良さんが、怖かったけど皆が助けてくれたから大丈夫だよ」
にっこりと安心させるように僕は笑った。
僕は皆に心配かけてばかりだから。
あんまり心配かけたくないんだけどなぁ、と思う。
「そっか、よかった」
そう言いながら、竜一君は僕に向かって笑った。
その笑顔は優しくて、僕竜一君の笑顔見るの好きだなぁ、ってただ思う。
「竜一様、隊長の作ってくださったご飯ありますよー?」
「会長よんですぐ来ましたね。やっぱ、愛ですね」
「幸ちゃん可愛いもんねぇ」
そんな事を言う、親衛隊の子達はからかうように竜一君を見ている。
…何で皆僕の事可愛いっていうんだろうね?
僕男の子なのになぁ。それにもっと可愛い子いっぱいいるのに。
「竜一君」
「ん、何だ、幸」
「心配してくれて、ありがとう」
僕がそう言えば、また竜一君は笑ってくれた。
そして、それから僕たちは寮室でのんびりとご飯を食べながら過ごすのであった。
end
オマケ(不良side)
或は俺にとっての特別だ。
だって、俺を怖がったりしない。或は俺に、友達だっていってくれた。
他に誰もいないのに、俺は一人だったのに。
だけど、笑いかけてくれた。
だから、傍に居たいと望んだ。
或に嫌がる事する奴は全員殴ってやろうとそうおもって、だから食堂で小さい親衛隊の奴に話しかけて、それでどうにかしようと思ったのに、生徒会長の親衛隊に何故俺は囲まれ、そして、思いっきり色々言われてるんだろうか。
「隊長は可愛いんだぞ!」
「可愛い可愛い幸ちゃんを脅えさせる真似をするなんてっ」
「幸先輩に危害を加えるとか許さないんだからっ」
「はっ、三木って手がはやいって有名だし、まさか幸先輩にも手を出す気だったんじゃっ」
”隊長”だとか”幸”だとか、そういって、彼らは騒いでる。
…俺が絡んでたあの親衛隊の奴は、生徒会長の親衛隊隊長だったらしい。
「あぁ? 本当に何だてめぇら。大体会長の親衛隊っていったらただのヤリマンのアホだろーが」
生徒会長はセフレが多く、中でも隊長とは寝てばかりだという噂は聞いていて、だからそういった。
そうしたら、
「なんて事言うんです!! あの可愛い可愛い隊長は純粋なんですよ?」
「セフレの意味もしらない無垢な幸ちゃんに、なんていう事をっ」
「竜一様にはセフレはいないですし」
「つーか、竜一様が幸先輩をセフレにするとかいったらなぁ?」
「うん、僕ら全員で竜一様を闇討ち、でもしたくなるよね」
そんなこと言われた。
「は? つかお前ら会長の親衛隊だろ?」
会長の親衛隊のくせに、何を闇討ちだの物騒な事をいってやがると、思わず驚いてしまう。
「そうだよ?」
「でも、僕ら『隊長を見守る会』でもあるし!」
「竜一様の事は好きだけど、幸ちゃんのが何倍も好き」
「大体僕ら親衛隊っていってもそんな過激な事しないしねー」
「幸先輩優しいし、そういうの嫌いだしね」
「俺らの活動って”隊長を保護と、”竜一様の片思い支援”だしなぁ」
………保護? 見守り?
いや、何こいつらと思っても仕方ないと思う。
しかも、活動内容が、会長の片思い支援って、お前ら親衛隊じゃねぇのかよっ!?
「というわけでっ、僕らは『隊長を見守る会』の一員として、君に罰をあたえまーすっ」
「というか、もう二度と僕らの幸ちゃんに手を出せないようにっ、出す気がないっていうようにやるからねっ」
「ふふふ、その名も、『隊長の可愛さを理解してもらえ作戦』だー」
「イエーイっ」
………なんか、どっからつっこんでいいかわかんねぇ。
なんて思っていたら俺はそのまま、親衛隊の奴らにつれさられ、生徒会親衛隊の会議室であの隊長のアルバムを見せられ、あの隊長の可愛さをいかに語られたのだった。
end
順也
幸のクラスメイト。外見はちょっとちゃらい。
少し遊んでるらしいけど人は選んでるから問題事起こした事はなし。
幸の事は弟みたいに思ってる(順也は長男で下に何人かいる)
親衛隊メンバーで竜一と親友。
三木
不良君。
幸に絡んだからと親衛隊メンバーにアルバムを見せられ、ひたすら語られていた。
ちなみにアルバムは、親衛隊内でとった写真がつまってます。
基本的に皆幸ばっかりとるので、幸専用のアルバムとかあったりするという