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君は、僕の犬でしょう?

※今日も二つ隣の部屋は騒がしいと同じ学園。

立花の友人

ヤンデレ×ヤンデレ

 華院家。

 それは、古くから日本に存在する、由緒正しい家。

 その家に、代々仕えている家がある。

 僕は華院家の次男である。

 ―――自分の使用人になる人間がどういう人間か見極めたくて、僕は学園に居たんだけど。

 その使用人は本当駄目な人間で、だからあんなのいらないって切り捨てたんだけどね。

 よくわからない、学園にやってきた毬藻みたいな頭の子追い回してたし、本当いらないよね。

 ―――僕は、何でも基本的に切り捨てるよ。

 ただし、僕の犬を切り捨てる事は僕はきっとしないだろうけど。

 「お腹すいた」

 家名を隠してこの学園に居る僕は、見た目も平凡なのもあるし、本当にこの学園では目立っていない。

 まぁ、目立たないほうが断然いいんだけど。華院家って知られたら媚売ってくるバカがいそうだし。

 ――この学園に僕の犬がいるけれど、犬は目立つからあんまり接触しないようにしている。

 待て、といったらちゃんとそれを聞いてくれた、本当従順で可愛い子。

 「今日さ、立花様が――」

 「寛人様と本当仲良いよねー」

 聞こえてきた噂話に、少し耳を傾けた。

 立花――ってのは、僕の友人でもある、生徒会の書記だ。

 友人とはいっても、表だってあったら立花の親衛隊が煩いから会ってないけど。

 家の関係で、学園に入る前から会った事あったし、立花は僕の家柄とか事情知ってるんだけどね。

 目立たないように当たり障りのない友人を作っての学園生活。

 地味だけど、まぁいいんじゃない? って思えるような生活。

 僕は次男だから、華院家を継ぐわけではないけど、将来は仕事を任されてやらなければならないわけで、今も少しは仕事を取り入れたりもしている。

 前の使用人が使用人じゃなくなって、今は新しい使用人を誰にするか会議されてるらしいけど、別にどうでもいいとさえ、思う。

 ―――なんか楽しい事ないかな、なんて思いながら生活をしていく中で、ある噂が僕の耳に届いた。

 ――僕の犬が、ある学園の生徒と恋仲になっているという噂だ。

 僕の犬なのに? 僕のモノの癖に? 誰かのモノになる気なの?僕の言う事だけ聞いて、僕のためにだけに、動く。それが、犬じゃないの? 僕以外に尻尾を振るの? 僕以外の誰かを追いかけるの?

 ――――そんなの、許さない。

 だって、君は、僕の首輪をつけた時から、僕の犬でしょう?

 だって、君は、僕の手を取った時から、僕の犬でしょう?

 いら立ちが募る。

 噂話にどうしようもなく、喚き散らしたくなる。

 ―――あれは、僕のだ、って告げてしまいたくなる。

 犬の所にいかなきゃ。

 しばらく放っておいたから、あの子は拗ねているのかもしれない。

 だって、そうじゃなきゃあの子が、僕以外に近づくはずがない。

 ――――もし、本気で僕以外に尻尾を振り、本気で、僕以外のモノになる気なら、躾てあげなきゃ。

 もし、それでも駄目なら――閉じ込めるか、殺すかしなきゃ。

 だって、あれは僕のだから。僕以外の誰かのモノになるのを、僕は許していないから。

 そうだよ、あれは、僕の。この僕が唯一欲してるものなんだから、他の奴にあげるわけない。

 僕は携帯を取り出し、立花にメールをする。

 『僕の、犬、何処に居るかわかる?』

 僕と犬の関係を知っているのは、立花だけだ。

 それに立花は人脈が広いし、情報通だから、すぐに見つけてくれるとそうおもったから立花に連絡をした。

 返信はすぐにきた。

 『裏庭。誰もいなそうな所に居る。まぁちらほら見物者いるけど。

 面白そうだから写真撮ってるけど。送ってやろうか? 噂の子と一緒に居るけど』

 ああ、立花はきっと楽しんでる。

 僕が、犬の事だけは正気でいられないと知ってるから。

 それにしても、噂の子と一緒に居る? そんなの、許さない。

 恋仲だと噂されるほど、誰かに近づく事を僕は許してない。

 僕に、親しい人物を紹介するようにいってたはずなのに、本当に大切な人が出来た…?

 その考えが頭に浮かんで、僕はその瞬間裏庭に走り出していた。

 周りのクラスメイトの制止の声なんて無視だ。

 僕の耳にはクラスメイトたちの声なんて入ってこなくて、ただ僕は僕の犬の事だけを考えていた。

 僕の犬の癖に。僕の犬なのに。僕のモノなのに。他の奴のモノではないのに。

 噂されてる? あの子のいちばん大切な子がいる? 付き合う予定?

 何その、戯言。

 噂してる人間全員喉潰してあげたい。僕のモノなのに。あれを違う人のモノみたいに言うなんて。

 裏庭へと到着すると、立花がいっていたようにちらほら見守っている面々が居る。

 多分、犬の親衛隊の子。

 「時弥様…」

 「ああ、絵になる」

 「お似合い…」

 あれは、僕のだ―――。

 一人の生徒の肩に手を回そうとしている犬を見た瞬間、僕はかけだしていた。

 そして―――、見物している面々が、突然隣を駆けた僕に唖然としている間に、ダンッと後ろから犬を思いっきり蹴りあげた。

 「なっ」

 「え!?」

 周りが驚いたような声をあげてるけど無視。

 僕は、犬―――時弥の上に馬乗りになって、時弥の首に手をあてる、そして、問いかけるのだ。

 「ねぇ、時弥。

 君は、僕の犬でしょ?」

 何をやってるの? 僕の犬の癖に。 何で他の人間を好きみたいな事になってるの? 時弥は僕のモノでしょう?

 僕は僕の犬が、時弥が僕以外のものになることを許していない。僕の犬だ。ずっと永遠に、死ぬまで時弥は僕のものだ。

 「この首輪は飾り? 違うでしょう? 時弥は、僕のでしょう?」

 僕があげたチェーンのネックレスを見つめながら、首に回した手の力をぎゅっと込める。

 時弥が苦しそうに顔を歪めて、だけど、何か言おうとする中で、

 「ちょっと、あんた何してるの! 時弥君に!! 時弥君は僕の事好きなんだから! あんたストーカーなの?」

 「時弥が君の事好き? 君の事? ストーカー? 違うよ。だって、時弥は僕のモノだもん。時弥は僕だけの犬だもん」

 「犬って、時弥君から離れなさい!!それに首絞めるなんて――」

 何て言いながら僕に触ろうとする、小柄な可愛い系の生徒。なんかすごく喉潰して耳障りなわめき声をどうにかしたい。

 その子の伸ばした手は、一つの声によって遮られた。

 「こむぎに触ろうとすんな」

 それは、時弥の声、僕に馬乗りにされたままの時弥の声。

 「え?」

 僕に触ろうとしたそいつが信じられないように時弥を見る。

 そして、それは僕をどうにかしようと近づいてきていた、時弥の親衛隊も一緒だった。

 僕は馬乗りのまま、時弥を見る。

 ――そうすれば、僕が相変わらず首に手を回したままだっていうのに、時弥は嬉しそうにこちらを見ていた。

 いつも通りの、僕に尻尾を振っているような満面の笑み。

 「こむぎ、とりあえず、一旦どいて」

 嬉しそうに頬を緩ませて、こちらを見たまま時弥がそう言うから、ああ、時弥は僕のモノだってそうおもって、僕はそこからのける。

 首には赤い手の後がついていて、それに対し親衛隊や時弥と噂になっていた子がひっと悲鳴を上げたけれど、僕にはそんなのどうでもよかった。

 立ちあがった、時弥は、

 「久しぶりのこむぎだ」

 って、嬉しそうに笑って僕を抱きしめてくる。

 「時弥。離れて。そして、ついでに何でこんなのにくっついてて、こんなのと噂になってたか、僕に理解できるように説明して。納得できないいいわけするようなら、怒るよ?」

 時弥にぎゅーっと、抱きしめられながら言えば、時弥が僕の頭の上で嬉しそうに笑ったのがわかる。

 あ、ちなみに時弥の胸に顔埋まってるから顔は見えてないんだけどね。

 「え、時弥君どういう事!? 時弥君僕の事好きなんでしょ!?」

 「えっと、時弥様っ、その平凡は…?」

 「メイ様の事好きなんじゃ…」

 怒ったような口調の噂の子と、茫然として意味がわからないといった様子で呟く、親衛隊の方々。

 「お前ら、まだいたの?邪魔なんだけど」

 そして、冷たい声を上げる時弥。

 「何で、何でそんな――僕に優しくしてくれたじゃん! 僕の事好きじゃないの!? そんな平凡より、僕のこ―」

 時弥が、一旦僕を抱きしめた手を緩める。

 そして―――喚き散らすそいつに、時弥は、

 「黙れ」

 と一言冷たく告げる。

 「お前の事なんか好きじゃねぇよ。

 優しくした? それは、まぁ、こむぎを引っ張り出したかっただけだし。お前に触られて超気持ち悪かったし。でも、こむぎがきてくれるって思ったから我慢してただけ」

 「な、何それ…」

 「こむぎに学校で近づくなって言われてたんだけど、俺そんなの嫌だったから。

 立花に相談したら提案されたからやってみただけだし。お前じゃなくても誰でもよかったんだよ。こむぎがこうやって、人前で自分から近づいてくれれば」

 どうやら、僕は時弥と立花にはめられたらしい…。

 …立花の奴、僕が時弥の事になると正気になれないって知った上できっと提案したんだろう。本当にあの友人は良い性格をしている。

 「きっと俺とこむぎが噂になる。これで、学園でも躊躇いなくこむぎに近づける」

 嬉しそうに、そうして、何処か狂気に満ちた笑みを浮かべる、時弥。

 「な、何、それ……!!」

 泣き崩れるそいつに、時弥は目も向けない。

 そして、僕の方を向いて言うのだ。

 「こむぎ、俺の部屋行こう」

 「うん」

 もう、いいや、と思う。

 目立つだろうけど、僕の犬は拗ねてたみたいだし、僕に近づけない事で。

 …僕も自分の犬に近づかれるのは嫌だし。

 そうしてもう、目立ってもいいやと開き直って、僕と時弥は時弥の部屋へと向かったのであった。



end






 「時弥、あいつに触られたんだよね? 何処触られたの?」

 「…肩とか、手とか、色々?」

 「僕を誘い出すためとはいっても、駄目じゃん。そんなに触られちゃ。しばらく僕にお障り禁止ね」

 「…え!?」

 「え、じゃないの。僕の犬のくせにあんなのと噂になって、僕の犬の癖にあんなのが好きみたいな噂になって。

 僕、噂してる奴全員喉潰してやろうかと思っちゃったじゃん」

 「こむぎ……、可愛い」

 「何でそうなるの? 僕怒ってるんだけど。時弥は僕のモノで犬なのに」

 「可愛いもんは可愛いもん。だって、それ嫉妬だろ? 俺こむぎにそんな風に感じてもらえるだけで嬉しいし」

 「こら、ひっつこうとしないの。お障り禁止っていったでしょ」

 「えー…」

 「えーじゃないの。あんなのに近づいて噂になった時弥が悪いんだから」

 「だって、こむぎと一緒に居たかったし、それにこむぎ可愛いんだもん。こむぎに誰かが近づくとかそれだけでも嫌だし、俺がそばにいれないのにこむぎのそばに誰かが居るのみると殺してやりたくなっちゃって。

 だから、立花に、『こむぎに近づきたい。でも駄目だって言われてる。こむぎに近づいてる奴殺したい』って相談したら提案してくれたから…」

 「我慢できないなら言えばいいでしょ? あんなのに触らせて、僕のなのに、僕のなのに」

 「だって、こむぎの命令に逆らうのやだし…。俺から近づいちゃだめならこむぎから近づいてもらおうと…」

 「………時弥。可愛い事いっててもお障り禁止はしばらく解かないからね」

 「えー…俺こむぎに触りたい。だって、前に同級生の男にこむぎ肩触られてたじゃん」

 「…あれは友人同士のスキンシップ。逆にそれぐらい触るなっていったら僕の平凡な生活が乱れるじゃん」

 「もう、俺との事広まったんだから乱れてるし、あんまり触らせないでよ」

 「えーどうしようかな」



華院こむぎ(学園では名字変えてる)

華院家の次男。今日も二つ~の立花の友人。家同士がまず付き合いがある。

基本的に使えないと思ったら誰でも見捨てる、が、自分の犬にのみヤンデレっぽい。



時弥。

こむぎの犬。こむぎ至上主義。学園内でも結構な規模の親衛隊がある。


ちなみに時弥はイケメンですが、この前の毛玉とは全く関わらずにいました。



立花

今日も二つ隣~で観察日記つけてた人。

前の日記で出てきた華院家がこむぎです。

生徒会書記。


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