無関心 2
無関心の続きの話
「あー、綾人!! この一週間ずっと探してたんだぜ!! 教室にもいないし、何してたんだよ!!」
……総輔と一緒に久しぶりに教室に行こうと廊下を歩いていたら、なんか、話しかけられた。
ちなみに俺と総輔は頭結構いいほうだから特待生の授業免除あるんだけどね。
というか、こいつ誰だろう…?
呼び捨てにされてるし、俺こいつに会った事あるんだろうかと記憶に全くない俺は首をかしげてしまう。
「綾人、知り合いか?」
「んー、いや? 知らないと思うけど」
「何言ってんだよ!! 俺達友達だろ!! 総輔も意地悪言うな」
「えー、俺に君みたいな友達居ないよ?」
「は? てめぇ誰だよ。何呼び捨てしてやがる」
なんかよくわからない生徒の言葉に俺と総輔は同時に口を開いた。真面目に誰なんだろうかと意味がわからない。しかも俺ら人の顔覚えるの苦手だしなぁ。
「何でんな意地悪言うんだよ!! そんな嘘よくないんだぞ」
嘘というか、本当に誰なんだ、こいつ。
俺さっさと教室行きたいというか、めんどくさい。
そう思った俺は総輔に呼びかける。
「総輔」
「ん?」
「なんかよくわかんないし、興味ないしいこー」
「ああ、だな」
そうして、俺と総輔は特に話しかけてきた人物に興味もないので、そんな会話をしながら、総輔と一緒にその場を後にしようとする。
だけど、
「待てよ!!」
なんか、俺と総輔は腕を掴まれた。
「……教室行きたいんだけど」
「俺が話しかけてるのに、無視するな!!」
そうやってなんかいってくるそいつに思わず眉をひそめてしまう。
俺早く、教室行きたいのに。
総輔の方を見れば、総輔も機嫌が悪そうだ。
「何腕掴んでんの?」
「つか俺の総輔に触らないでほしいんだけど。それに腕痛いから離して」
何なんだろう、この人。まじ、掴まれた腕痛いよ。
大体総輔に触らないでほしいよね、本当。
総輔は俺のなのにーっ、って何か嫌な気分になってしまうよ。
「なんだよ! そんなに強く掴んでないだろ」
「いや、痛いから。本当離して」
離してほしくて開いたもう片方の手でその人の手を払い落とす。
うわ、赤くなってるし。こいつどんだけ力強いの。
総輔が赤くなってるの見て、表情変えてるし。
「何すんだよ!」
「ほら、総輔怖い顔しないのー」
そういって俺は笑いながら、総輔の腕をつかんでいるその手を無理やりはがす。
「うわ、総輔の手にも赤く跡残ってんじゃん!
嫌だなあ、俺以外が総輔に跡つけるなんて…」
「俺も嫌。つか大丈夫か、すげえ跡ついてるけど」
「お前ら何俺を―――」
「んー大丈夫。てか総輔にそんな腕掴まれたあとついてんの本当嫌。
だからさー上から跡ん所にキスマークつけて俺の跡つけていい?」
本当、嫌だよね。俺の総輔にそんな跡がついてるとかさ。
俺の言葉に総輔は口元をゆるめて笑った。
やっぱり俺総輔の笑顔好きだな、と見ながら思う。
「何で無視すんだよ! それにキスマークとか、お、お前らセフレって奴か!」
「じゃ、手貸してー」
俺はそういって、総輔の掴まれて赤くなっている手をつかんで口元にもっていき、そのまま吸い付いた。
そのまま、総輔の手に俺の証を刻む。
総輔に証が刻めるのは俺だけで、俺に証が刻めるのも総輔だけ。
「よし、ついた」
満足気に俺は笑って、手を離す。
総輔の手首についた赤い跡に気分がよくなる。
そんな風に笑っていたら、総輔に頭を撫でられた。
「可愛いな、綾人は」
「総輔は男前だよね」
「………っ!
俺を無視するな、それに破廉恥だ!」
総輔に頭撫でられて気分よく笑っていたら、いきなり何かいきなり俺と総輔の間に乱入しきたボサボサ頭は、叫んだ。
……何だ、こいつ。邪魔すぎる。
「お前、なんなの? 邪魔なんだけど」
というか何俺と総輔の間に割って入ってんだろう。
「友達にそんな言い方ないだろ! 大体俺の事は名前で呼べよ!」
なぜか俺を真っ直ぐ見つめてそんな事をいうそいつ。
……本気でこいつ誰?邪魔なんだけど。
「総輔、クラスいこう」
そいつを押しのけて俺は総輔の手をとった。
総輔も握り返してくれて、一緒にのんびりと歩きだす、が、
「まてよ!」
なんか今度は制服を掴まれた。
……俺はやく教室いきたいのに。
離してくんないかなあ、なんて思ってたら、
「綾人様、総輔様! 転入生と何やってるんですか?」
聞き慣れた声が響いた。
「るーちゃんだ。久しぶり~」
「流衣か、何かこいつが俺と綾人に絡んでくるんだ。
俺ら教室に久しぶりに行こうとしてんのに」
振り向けば見知った顔がいて、俺と総輔は同時に口を開く。
るーちゃんってのは俺と総輔の親衛隊隊長だ。
最初は俺と総輔の親衛隊別々だったけど、付き合いだしたから合併したらしい。
俺は興味ないからあんまり知らないけど、活動内容は俺と総輔が平和に過ごせるようにする事らしいよ。
「そうですか、では綾人様が転入生に制服を掴まれているのは不可抗力な事なのですね
綾人様達は転入生に絡まれたくないのですね?」
「うん、こいつね、俺と総輔の腕掴んでくるし邪魔なの」
俺が笑ってそう言えば、るーちゃんは笑って行動を開始した。
……まあ笑ってるとはいっても目は笑ってないけど。
るーちゃんは冷たい笑みを浮かべながら俺らに近づいてくると、パシっと制服つかんでるそいつの手を払い落とす。
そして口を開いた。
「綾人様と総輔様に触れるなど、無礼な行為はよしなさい」
「なっ、なんだよ、お前っ」
「私ですか? 私は綾人様と総輔様の親衛隊、別名『綾人様と総輔様を見守る会』隊長をつとめます、宮沢流衣という」
「親衛隊っ!? 親衛隊なんて最低だ! お前らが綾人達の友達を奪って――」
何か喚いてる。
それを放置して俺はるーちゃんに問いかけた。
「ねえ、るーちゃん、俺達ってそいつに会った事あんの?」
「………流石お二人です。しっかり覚えてないのですね。綾人様、一週間前に食堂に行ったの覚えてますか?」
「食堂? んーいったかも」
「その時に生徒会とこの転入生にお二人は絡まれたのですよ」
「ん? 俺、絡まれたの?」
「俺もこんな奴知らないけど」
俺と総輔が不思議そうにそう答えれば、るーちゃんはいった。
「……人が飛んできたのは覚えてますか?」
「え、人ってそんな簡単に飛んでくるの?」
「綾人! 何直紀の事忘れてんだよ! 直紀は俺の親友なんだぞ、友達の親友忘れちゃだめだろ」
俺はそんな声が聞こえてくるけど、るーちゃんの方を見て返事を待つ。ボサボサ君は無視である。
「………一応飛んできたのは会長なのですが、流石です
それで綾人様はその時総輔様を待っていたのですが、その転入生に綾人様が絡まれていて」
「え、俺こんなのに絡まれたっけ?」
興味ない事すぐ忘れちゃうし、全然思い出せない。
だけどるーちゃんがいった次の言葉にぴんときた。
「………なら、綾人様の大好物のチョコレートパフェを奪った人間と言えば思い出しますか?」
「あー俺の大事なパフェ奪って返してくれなかった奴か」
「人が飛んできた事よりパフェ奪われた事が印象に残ってるなんて綾人様流石です」
「こいつと何時会ったかはどうでもいいんだけど。流衣、俺ら教室に行っていいか?」
「どうぞ。総輔様。クラスの皆さんも久しぶりに綾人様と総輔様が来れば喜ぶでしょうし、行ってください」
「じゃあね、るーちゃん」
俺はるーちゃんの言葉にそういって手をふりながら、総輔の手に自分の手を絡める。
「じゃあ総輔、行こう」
「ああ」
そうして俺らは、
「あ、何処に行くんだよ! 待てよ」
「綾人様と総輔様を邪魔する人間は許しません」
「なっ、俺は―――」
そんな声なんてもう気にもしないで教室に向かうのであった。
授業に出るのも久しぶりだな、なんて事を考えながら。
end
オマケ(流衣side)
「なんだよ、お前!」
ぎゃーぎゃー喚く転入生に苛立ちを感じる。
私としては、転入生が生徒会や他の人気者を落とそうが、どうでもいいのだ。
生徒会親衛隊はそれはもう荒れてるが、どうでもいい。
私の最優先事項は綾人様と総輔様の平穏なのだ。
「転入生、綾人様達に迷惑をかけるのはやめなさい」
そもそも綾人様も総輔様もスキンシップが好きではないのだ。
お二人は恋人だから手を繋いだりはするけれども仲の良い人以外に触れられたくないらしい。
そんな綾人様と総輔様にこいつは触れていたのだ。
私は綾人様と総輔様が仲良くしている様子を見るのが好きなのだ。それを邪魔する者は許さない。
「なっ、綾人と総輔は俺の友達だ」
「何を寝言を言っているんだ。
お二人は他人に滅多に興味を示さない
それにお前は綾人様達に覚えられてさえいない」
そもそも一回会っただけの人間を綾人様と総輔様が覚えるなんて滅多な事だ。あの人達は基本的に無関心なのだ。
綾人達と総輔様が二年前にお付き合いを始めて(綾人様と総輔様は元々同室者で友人関係にあった)、そうして綾人様と総輔様の親衛隊は合併した。
私はその時隊長の座を手にいれた。
最初の方は挨拶をしても、もちろん次にあった時には忘れられていた。
だけど私は覚えてもらいたくて毎日毎日挨拶をし、話しかけた。
時には綾人様の大好物の甘い物をさしあげ、時には親衛隊で撮影した綾人様の愛らしい笑顔の写った写真を総輔様にさしあげ、綾人様と総輔様がより快適な生活を送るように行動した結果覚えてもらえたのだ。
「なっ、お前らがいるから綾人達は遠慮してるんだ! 直紀達が親衛隊のせいで友達作れないっていってたんだ!」
会長達は馬鹿ですから仕方ないです、とは言っても仕方ないので言わなかった。
こいつに話が通じない事は知っている。
―――とりあえず隊員全員に綾人様達に転入生が近づくのを全力で阻止するように通達して、お二人の平穏を私が守らなければ!
私はそう意気込んで、喚く事しかできない転入生に冷たい目を向けて、その場を後にするのであった。
ちなみに腕掴んできたので、合気道の技を使って気絶させて放置した。
―――綾人様と総輔様の平穏を壊す人間に優しくする意味は何もないのだ。
さて、親衛隊会議でも開いて対策でもねろう!
宮沢流衣
親衛隊隊長
綾人達と同じ歳だけど様付け。
燐とした雰囲気をもつ合気道の達人。
綾人と総輔に努力して覚えてもらった人