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寂しがり屋の王様に、温かい手を 2

「なあ、菫ちゃんさー」

「……俺様を菫ちゃんなんて呼ぶな」

「もう、なれなよ。菫ちゃん。俺は菫ちゃんの事を菫ちゃんって呼びたいの」

「はぁ、勝手にしろ」

 うんうん、菫ちゃん可愛いよね。

 満足気に俺は笑いながら菫ちゃんを見てしまう。

 今いる場所は、菫ちゃんと初めて出会った裏庭である。菫ちゃんの足元には、猫がいる。

 無事に菫ちゃんと友達になった俺は菫ちゃんと何度もスマホでやり取りをした。菫ちゃんは生徒会長として忙しいからかすぐに返事はくれないけれど、それでも返事をくれるあたりやっぱり菫ちゃんは寂しがり屋なんだと思う。

 それにしても文句を言いながらも勝手にしろと許してくれるの可愛すぎない? 

「ところで菫ちゃん、俺たちは友達になったわけだけどさ」

「なんだ?」

「此処でしか会ってないじゃん? どこか遊びにいかない?」

 そう問いかけたら菫ちゃんの目が輝いた。

 お、これは想像通り菫ちゃんは友達と遊びに行くと言うのをしたことがない感じだろうか? ちなみに菫ちゃんと友達になった事は、学園外の友達にしかいっていない。この学園で下手に菫ちゃんと仲良くなっているって知られたらややこしいし。いや、まぁ、ばれても俺に支障はないのだけど。それでも菫ちゃんの可愛い部分を他の連中にすぐに知られるのも面白くないし。

 それで菫ちゃんと順調に仲良くなるためにどうしたらいいか、というのを問いかけたら遊びに出かけることを言われたのだ。

 ちなみに腐男子や腐女子の友人には「恋?」って聞かれたけどそういうものではない。ただたんに菫ちゃんが面白くて、可愛くて――友達になりたいって思っただけだしな。菫ちゃんも男からそういう気持ちばかり向けられていて、疲弊しているみたいだし。そんな菫ちゃんにそう言う気持ちを向けていたら、菫ちゃんはこんな風に仲良くなってはくれなかっただろうしな。

「……どこにいくんだ」

「菫ちゃんは何処がいい? 俺は結構友達と色んな所に遊びに行ったりしているから、沢山の場所に案内出来るよ?」

 俺はそれなりに友達がいるから、色んな場所に遊びに行ったりしているから、菫ちゃんの事をどこにでも連れていける。菫ちゃんは夜遊びとかもしてなさそうだからなぁ。菫ちゃんはこんなワイルドな雰囲気でも真面目さんみたいだし。

 俺の問いかけに菫ちゃんが悩み始めた。おお、本気で悩んでいる。やっぱり菫ちゃん、友達がいないからこそ誰かと出かけることにあこがれを抱いているんだな。

 なんだか初めての友達と出かける弟か何かを見ているような気持ちだ。微笑ましいっていうか。

「……カラオケというものにいってみたい」

「え。菫ちゃん、カラオケいったことないの?」

「いった事ない……」

 うん、菫ちゃん本当に一人だったんだなぁ。いや、まぁ、菫ちゃんがずっとこの学園で生きてきたのならば遠巻きにされても仕方ないよな。しかも菫ちゃんって孤高って雰囲気だしているし。うん、カラオケにいる菫ちゃんとか似合わないしな。

 でも俺は菫ちゃんが望むのならば、面白そうだし連れて行くけどさ。

「じゃあ、カラオケ行こうか。俺の友達も呼ぶ? いっぱいいた方が楽しいと思うけど」

「……え、いやそれは」

「あ、緊張するのか。じゃあ、俺と二人で行こうか」

 うん、やっぱり可愛くない?

 こんなワイルド系のかっこいいイケメンを見てもそう思ってしまう。なんていうギャップ萌え。

 そういうわけで俺は菫ちゃんをカラオケに連れて行くことにした。カラオケにいきたい菫ちゃんだが、学園の生徒に知られるのは嫌らしい。そういうわけで変装した菫ちゃんと一緒に街に出た。ちなみに全寮制の学園だけど、外出許可は割と取れるよ。俺と菫ちゃんが同じ日に外出許可を取ったわけだが、俺たちが一緒に出掛けるとは学園の誰も思ってないだろう。

 そんな感じで菫ちゃんとカラオケに出かけた。

 菫ちゃんは流行りの曲しか知らないようだ。かっこいい曲が本当に似合う。というか、なんという美声か。菫ちゃんって出来ないことあんまりないんだろうなっていうのが一緒にカラオケにいって思ったことである。

 ちなみに俺は敢えて菫ちゃんが知らなさそうなネタな歌とか歌った。衝撃的な顔をしていた菫ちゃんが面白かった。うん、菫ちゃんにはなじみがないようなアニソンの電波ソング歌ったからな。

「こんな曲がこの世にあるのか……」

 なんて呟いていた菫ちゃんに、皆知っている曲だよとうそを言っておいた。……ちなみにすぐ三日後ぐらいにその嘘がバレて、菫ちゃんにちょっとおこられた。

 親と話してその嘘が発覚したらしい。菫ちゃん、友達はいないけれど、家族とは良好な関係を築いているらしい。でもなんか親に「友達が出来て良かったね」と言われたそうだ。

 うん、まぁ、菫ちゃんいい子だけど、友達がいないのならば親も心配していただろうし。俺が親とかでも心配する。


 カラオケに連れて行って、菫ちゃんがとても面白かったので、もっと色んな場所に菫ちゃんを連れて行こうと思った。




 ――寂しがり屋の王様に、温かい手を 2

 (少年は寂しがり屋の王様とカラオケにいき、楽しく過ごす)

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