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秘密の部屋で

 僕は周りには言っていないが、この全寮制の男子校の理事長の甥である。理事長である叔父さんはそれはもう僕のことを可愛がっている。それこそ、うっとおしいくらいに。と、そんなことを言えば叔父さんが僕に恋愛感情を抱いているように見えるかもしれないが、そんなことはない。叔父さんは奥さんがいるし、僕のことは甥として可愛がっているだけである。

 この学園の人たちは妙に、そういう風に結び付けたがるからな。

 ――まぁ、おじさんは奥さんがいようとも美形だからか、この学園では大人気である。僕は父の遺伝子を受け継いだため、割と平凡な顔だ。綺麗な母には「清司さんに似ていていいわ」と言われるが、そんなことを言うのは母さんぐらいである。

 で、そんな平凡な見た目の僕が理事長の甥だというのはややこしいことになる。そもそも叔父さんと親類で、母さんがそれなりにいい所の出というだけで、僕に関しては普通だしな。

 ただ叔父さんにさぼり場に使えそうな部屋の鍵は渡されていたりするけど。……理事長とは関係ないですって顔をしながら、そういうのは享受するのかって? そりゃそうだよ。生活しやすいように望むのは当然じゃないか。

 僕はそんなわけで、あまり人がやってこない校舎の中でも端の方にある部屋でのんびり過ごすのを日課にしている。僕は周りを見渡して、中へと入り、のんびりと過ごす。

 そうしていれば、なぜかドアを何度も何度もノックされた。……外からは電気がついているようになっているのも見えないはずなのだが……そう思いながらなんだか必死なので開けてあげた。

「あれ……会長さん?」

 僕は驚いてしまった。そこにいたのは、会長さんだった。この学園の中で最も人気だと言っても過言ではない。

 そんな超絶美形で、超絶超人と言える存在が目の前にいるのに驚いた。

「ちょっと匿え!!」

「あ、はい」

 事情は分からないが、これだけ切羽詰まっているなら中に入れようと中へと入れる。そして鍵を閉める。僕はとりあえず会長さんがいようがどうでもいいので、のんびりしようと思い至ってソファに腰かけてマンガを読む。

 会長さんはなんか息切れしている。

 そうしている間になんだか廊下の方がバタバタしていた。……会長さん、人気者だし、厄介なファンにでも追われてたのかな。というか、人気者には親衛隊なんて訳の分からないものがある学園だし、俺が此処に会長さんと一緒に居る事バレたら厄介そう。

 いやでもまぁ、会長さん自身は悪い人ではないと思うし、とりあえず悟られなければいいか。

 バタバタした足音がしている間も、それが止んでからも僕は漫画を読んでいた。ちなみにここにある漫画は僕が持ち込んだものと、叔父さんが用意してくれたものである。完全に個室化している。ちなみに間違って誰かが入っても大丈夫なように自分の持ち物は鍵付きの収納に入れてある。

 この部屋って、昔は叔父さんが使っていたさぼり場らしいよ。叔父さんは追われまくって大変だったらしいし。

 パラパラと漫画をめくりながら思わず笑ってしまっていたら、僕は視線を感じた。

 その視線を感じてそちらを見れば、会長さんがじっとこちらを見ていた。

「あれ、会長さん、まだいたんですか? もう追ってた人たち居ないと思いますが」

「……そうだが。お前はこんな所で何をしているんだ?」

「さぼってます。僕の憩いの場です。今回は非常事態っぽいので開けましたけど、そもそも何で会長さん、僕が此処にいるの分かったんですか? 外からは人がいるように見えないと思うんですけど」

 よく考えてみれば不思議だ。この部屋は基本的に明りをつけても外から見えないように遮断されているし、音も漏れないようになっているはずだから何で僕が此処に居るってわかったんだろうか。

「……前に此処に人が入るの見たことがあったんだ。誰かまでは確認していなかったが。それでこんな状況だしもしいたら匿ってくれないかと思ってな。そして生徒会長の俺の前で堂々とさぼり発言をするとは良い度胸だな?」

「……会長さんも生徒会の特権でさぼってるじゃないですか。僕は特待生特権ですよ!! 成績さえ良ければさぼっても問題なしって良い学園ですよねー。おかげ様で、僕は最低限授業に出れば後は自由なんです!!」

「……そうか。なら、まだいいか」

 そうこの学園は金持ちだらけの学園で、中々自由である。生徒会や風紀、あとは成績の良い特待生とか――何かしらの事情がある人は最低限授業に出れば中々さぼり放題である。まぁ、僕は気が向いたら授業に出ている程度で、あとは結構この部屋にいたりする。あとは寮に戻ってのんびりしていたり。



 そんな初対面を僕と会長さんは果たして、その後会長さんは出て行ったわけだが――、

「よう」

「……会長さん、また来たんですか?」

 会長さんは、この場所に度々くるようになった。

 まぁ、別に会長さんが僕の緩やかな日常を邪魔したりはしないから別にいいけどさ。





 それから僕と会長さんはこの部屋で交流を深めていくことになるのであった。



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