俺と義理の兄と学園と。 5
受験は思ったより簡単に終わった。
それも兄さんや康兄が勉強を教えてくれたからである。二人とも寮暮らしだというのに時々帰ってきて俺に勉強をわざわざ教えてくれたりしていたのだ。
母さんも敬一郎さんも俺が兄さんたちと仲良くやっているのを見て笑ってくれた。敬一郎さんの事は――これから父さんって呼ぼうって思っている。いや、ちょっとドキドキするんだけど……。いざ、呼ぶとなるとやっぱりドキドキするよな。
そのあたりのことも兄さんと康兄にも相談したら、是非とも呼べばいいと言われた。
それにしても受験も合格できたし、もう中学校卒業したら兄さんたちと同じ学園かーって思うと凄い楽しみだ。
なんだか同じ中学に通っているクラスメイトたちは、俺が全寮制の男子校に行くことを知ってショックを受けたり、「えー」といっている人がおおかった。そんな風に言う生徒達と一緒に卒業前に遊びに行くことにもなった。まぁ、普段、バイトばかりしていて遊んだりしてこなかった俺だが、最後ぐらいはいいかなと。
「ふふ、私の和仁は人気者ね。楽しんでおいで」
母さんは俺が最後には中学の人たちと遊びに行くと言ったらそう言って送り出してくれた。俺が人気者はではないって思うんだけどな? 多分、付き合いが悪い俺が遊びに行くからって皆、集まっているだけだと思うんだけど。
なんだか母さんや兄さんたちに色々言われた。
「お持ち帰りされないようにね」
などと謎の発言もされたが……まぁ、楽しんだ後は、すぐ帰る予定だけど。だって家で家族たちが俺の卒業を祝ってくれるって言ってくれているしな。
そんなわけで俺は中学最後のひと時を、クラスメイト達と遊んだり、家族たちと過ごした。俺って、バイトばかりしていたから友達らしい友達もいなかったしなぁ。こうやって過ごすのも楽しかった。
高校に入学したら……バイトもするかもだけど、学生らしく楽しもうかなとも思っている。まずは馴染めるかどうかも分からないし。
高校に入るための準備も着々と進めている。準備をしているだけでもワクワクしてくる。高校かぁ……中学校とはまた雰囲気も違うだろうし。何より同性愛が溢れている場所だしな。それはそれでよい経験になるかもしれないけれど。
「和仁、何か不安か」
さて、今日も実家に帰ってきている兄さんは俺の傍にいる。俺に学園の事を教えてくれていたりしている。兄さんは実家に来ている間、俺の傍によくいてくれている。
もっと他に会いたい人とかいないのかなとちょっと思ったりするのだが、そのことを敬一郎さんたちにいったら「令は和仁君を気に入っているんだよ」と笑ってくれた。
兄さんが俺を気に入って、沢山話してくれるのは嬉しいなぁとも思う。
「――学園、どうなるかなって。やっぱり新しい環境は緊張するよ。もちろん、兄さんや康兄がいるなら楽しいだろうけど、友達とか作れたらいいなって」
「心配は何もいらない。和仁なら大丈夫だ」
「えー、何その自信? なんだろう、根拠のない言葉でも兄さんの言葉だと本当に大丈夫な気がする」
なんというか、兄さんの言葉って本当に心強い。俺がどれだけ不安になったとしても、何でも大丈夫な気がする。兄さんがいると思うだけでも学園生活が楽しいものになるだろうと思う俺は単純なのかもしれない。
「根拠のない事何て言わない。俺は和仁なら大丈夫だって思っているからな。それに俺の弟に変な真似はさせない」
「わ、兄さんその言い方超かっこいいんだけど!! 俺の自慢の兄さんかっこいい!!」
そんなかっこいいという気持ちでいっぱいになっている俺は、そんな言葉を言い放ってしまう。興奮してそう告げる俺の言葉に兄さんはちょっと恥ずかしそうに、そっぽを向いた。
うん、俺の兄さんは凄いかっこいいなぁと本当に思う。
「――兄さん、高校に入ったらよろしくね。でも俺、兄さんに迷惑をかけるようにはしないから。出来るなら俺は俺の力で学園で居場所を作れるように頑張るよ」
兄さんは俺のことを守ってくれるだろう。
兄さんは俺のことを気にかけてくれるだろう。
だけれども、兄さんに甘えてばかりというのも何とか嫌だ。
兄弟だからこそ、ちゃんと俺は俺の力で居場所を作れるように頑張れたらなって思うんだ。
俺の言葉に兄さんは柔らかく笑う。その柔らかい笑みはびっくりするぐらい綺麗だ。兄さんの笑みを見ると嬉しくなる。
「それでこそ、俺の弟だ」
兄さんが不敵な笑みを浮かべた。
――こうやって笑う兄さんにとって、もっと自慢になれる弟になれるように――俺は頑張ろうと思う。
そして兄さんとの学園生活を楽しみにしながら中学校の卒業式を迎えた。
なんだか同じ学校の生徒たちに驚くぐらい泣かれたり、「またね」って言われたりしたけど、まぁ、うん、なんか感極まっていたんだろうなと思っている。
もうすぐ俺も学園に入学する。ドキドキするけど、ワクワクの方が大きい。
どんな学園生活になるだろうかと俺は胸を高鳴らせるのだった。
end