僕は嫌われもの 2
嫌われ者の僕は、高等部に進学した。
高等部に進学をしても、相変わらず僕は周りからの視線を浴びている。
雪乃様は、相変わらず僕のことを嫌いだって態度で示しているしね。優しい性格を装っているから、雪乃様は今は表立って僕に嫌がらせはしてこないけどさ。
それにしても友人たちが学園にやってくると言っていたけれど、何処にいるんだろうか。此処の学園は、内部生が多いから、外部生は目立つものだと思うのだけど……。
そう思いながら僕はきょろきょろと友人を探してしまう。
そうしていると急に頭に何かが乗った。
「円加、おはよう」
「……洛。おはよう。本当にここに入学したんだね?」
「ああ。俺だけじゃなくて幾人たちもな」
僕が後ろを振り向けば、にこにことしている友人たちがいる。
なんだろう、学園に友人たちがいるなんて不思議だなという気持ちになる。あーあ、それにしても洛たちは見た目が良いから、周りからの視線が痛いな。
僕はこの学園内では嫌われているし、そんな僕にどうして洛たちが話しかけてくるんだろうかってそういう気持ちで一杯なんだろうと思う。
あと雪乃様は嫌いな僕が、洛たちと仲よさそうに話しているのが嫌らしい。雪乃様は美形が大好きだからなと思う。僕個人としてみれば、どうしてそんな風に美しい男たちに囲まれたいのか全くもって分からない。
雪乃様の恋愛観というか、価値観としてみれば、そういう美しい男たちに囲まれたいんだろうと思う。多分、洛たちも雪乃様に話しかけられるんだろうな。取り巻きにしようとして……。
雪乃様は中々、外面がいいから。洛たちももしかしたら雪乃様に惑わされていくんだろうか。それはちょっと寂しいけれど、もしそんな風になったらそれはそれかな。
そんなことを考えているのが友人たちには分かったのだろう。
「円加、馬鹿なことは考えなくていい」
「とりあえず俺達と学園生活楽しもうぜ」
「円加は何も気にしなくていい」
本当にそういう生活をしていていいのかなー? なんて思ってしまうのは九年間、友人もいない暮らしを続けてきたからだろうか。
高等部に上がって、クラスも洛と同じだった。残念なことに他の友人たちは、他のクラスだったけれども、洛が同じクラスにいるというのだけでも不思議な気持ちになった。
周りは僕が洛と楽しく話しているのを驚いたように見ている。僕は友人たちの前では、結構喋る方だ。だけど、学園では雪乃様に睨まれているのもあり、割と大人しくしていたのだ。
学園では僕に近づこうとしてくる人なんていなかったし、僕も下手に誰かを巻き込んでその人まで雪乃様に目を付けられるのも嫌だったし、何より雪乃様が僕の傍に誰かいることを嫌がっていたから。
洛は、嫌な目にあったとしてもかまわないといった様子なのだ。というか、学園の外と学園の僕の姿は結構違うのに全くためらいもなく学園の顔を隠している僕に気づいたし。違う姿の僕でも気づいてくれるのは嬉しかったけど……やっぱり学園の僕を知られているのは何とも言えない気持ちだ。
「そいつと仲よくしていると大変ですよ」
「それは嫌われているんですよ」
そんな言葉を洛にわざわざかけてくるものもいた。というか、僕の目の前でそんなことを言うあたり、性格悪いなーって思う。
彼らには悪気もなく、この学園内は雪乃様の意向により僕を疎むのも、僕を嫌うのも当たり前のことになっているのだ。
彼らはただ良いことをしているといった風に洛に言う。
それを言われた途端、洛は雰囲気を冷たくした。
あ、怒っている。
友人として長く付き合ってきていたからその変化が分かる。一見すると怒っているように見えないかもだけど、洛は怒っている。
「――誰と仲よくするかは俺が決める。お前たちに何か言われる筋合いはない」
ああ、怒っているなぁ。などと思いながら僕は呑気に洛の事を見ていたけれど、洛に注意の言葉をかけた生徒たちは顔を青ざめさせた。洛が怖かったらしい。
「洛、そんな怒らなくていいよ。僕はそういう扱いをされるのがいつもだし」
「でも……」
「いいんだって。それより、笑って。洛。僕は洛が怒っているより笑っている方がいいなー」
にっこりと笑ってそう言ったら、洛は怒りを沈めてくれた。うん、やっぱりこう仕方がないなぁとでもいうように笑っている洛の顔はいいなぁと思う。
僕の言葉や、洛の態度に彼らは驚いた様子を見せて「ちゅ、注意を聞かない君が悪いんだから」と去っていった。
あーあ、これで雪乃様には睨まれただろうな。最近は嫌がらせはされなくなっていたけれど、また再開するかもしれない。
でもまぁ、いいか。
再開されたとしても受け流すだけだしね。
それに……
「円加、どうした?」
「なんでもない」
洛たちがいるなら、何だか楽しそうだし。
――僕は嫌われもの 2
(嫌われ者の僕だけど、友人達がやってきた)