小森さん家の末っ子 3
「お前があの二人の弟か」
「……えーと、どちら様?」
学園生活にも慣れてきた頃、俺は一人でぶらぶらしていた。この学園に来て一人になることはほとんどなかった。
なんだかんだ兄ちゃんたちが俺の傍にいたり、なぜか莉兎様! と呼んで、皆ついてきたりするし。まぁ、皆で一緒にいるのは楽しいよ。楽しいけど、たまには一人で探索もしたいなーと思っていたんだよね。
そんなわけで俺はちょっと一人でぶらぶらしていたのだ。
兄ちゃんたちや祐樹や皆は一人で行くのは――と言っていたけれど学園内だし大丈夫だろとぶらぶらしている。
そうしていたらなんか一人の背の高い生徒に話しかけられた。
綺麗な金色。
髪を染めているのだろうか。
あと凄く綺麗な顔立ち。兄ちゃんたちが綺麗な顔立ちしていて、もてもてだったりするから俺は美形を見慣れているけれどそれでも綺麗だなと思う。
「俺は甘崎霧人だ」
「へぇー、霧人さんですね? 先輩ですよね? あ、俺は小森莉兎です!」
何だか背が高くて、目つきが鋭くて、かっこいい感じ! 兄ちゃんたちとは違った意味で美形っていうか。
「……ああ」
「それで何の用ですか? 兄ちゃんたちの事を口にしていたってことは知り合いですか?」
「ああ。クラスメイトだ。久しぶりに学園に来たらお前の噂を聞いたからな」
「へぇー。兄ちゃんたちがいつもお世話になってます!! それにしても霧人さん、凄くかっこいいですね」
かっこいい。何だろう見ていて幸せになるかっこよさ。俺的には凄い、好きな顔!
そんな気持ちになって、思わず興奮してくる。あと凄く落ち着いた雰囲気で雰囲気がいいよねとにこにこしてしまう。
にこにこしていたら、
「お前、可愛いな」
などと、男に言う台詞ではないだろ? という事を言って霧人さんは優しく笑って頭を撫でてくれた。
「俺は男ですよ」
「ああ、すまん」
といいながらもまだまだ霧人さんは、俺に対して謝りながらもずっと頭を撫で続ける。髪がぐちゃぐちゃになるのでやめてほしいなと思うが、あまりにも霧人さんが優しい笑みなので注意しにくい。……初対面だしなぁ。というか、何で俺初対面の先輩に頭撫でられてんだろ?
「莉兎は何をしていたんだ?」
「探索です。ウロウロしようと思って」
「そうか。じゃあ俺のお勧めの場所でも教える」
「本当ですか? やったー」
霧人さんに良い所を教えてもらえると知った俺は嬉しくなって、喜んでついていった。
その時の俺はすっかり、兄ちゃんたちに「知らない人についていったら駄目だ」とか「莉兎は人を信用しすぎだ」とか色々今まで散々注意されていたことなどすっかり忘れていた。
その後、俺はすっかり霧人さんと仲良くなった。
霧人さんの優しい雰囲気は一緒に居て楽しかった。俺は話すのが好きだから、沢山くだらないことも含めて霧人さんに話してしまった。
俺は家族のことが好きだから家族のことをよく話した。
「そうか。莉兎は家族が好きなんだな」
「うん!! 兄ちゃんたちはちょっと俺に構い過ぎだけど」
そう答えたら霧人さんは笑っていた。
霧人さんは俺の話に頷きながら聞いてくれて、その庭園に結構な時間留まるのであった。
しばらくして兄ちゃんたちから、「莉兎何処だ」などと連絡が来たので、俺は教室に戻ることにした。
兄ちゃんたちに心配をかけたいわけではない。それに兄ちゃんたちは下手に俺の姿が見えないと暴走する部分があるから、今頃大騒ぎしているかもしれないし。
兄ちゃんたちが暴走すると大変なんだよな。びっくりするぐらい取り乱したりするし。俺のことを大切に思っていてくれることは嬉しいけどさ、ブラコンすぎない? って毎回思う。
「兄ちゃんたちが心配しているからもう行きますね」
俺がそう言って立ち上がれば、霧人さんは「ああ。また来い」と言ってくれたので、これからも時間があったら此処に来てみようと思った。
それから教室に戻ったら……何故か兄ちゃんたちが二人ともそこにそろっていた。二人とも忙しいのでは……と思うが、「莉兎、どこにいってた?」「何をしていた?」と心配そうに俺に言う。
クラスメイトたちも俺を囲って話しかけてきて――いやいやいや、俺ちょっと探索していただけなんだけど。なんて大事なと思いながらも、俺は何処にいたか答えた。あと誰と居たかも。
そしたらなぜかクラスメイトの一部が「きゃー」とか盛り上がりだし、兄ちゃんたちは「なんだと……。甘崎と一緒に居たのか?」「流石、俺の莉兎、しかし、駄目だ」などとよく分からない葛藤を見せるのだった。
……あとから祐樹から霧人さんは、そう簡単に人と仲よくしないし、お気に入りの庭園に人を招くこともないらしい。というか、一介の学生なのにあの庭園は霧人さんの場所みたいな認識らしい。人気者、凄いなと俺は思うのだった。
――小森さん家の末っ子 3