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放送部Z様

「はいはーい。こちら、放送部のZです。

本日のお昼休みの放送は、この俺がお送りするよーって、わけで早速生徒から寄せられたリクエスト曲を流しちゃうぞっ」

 元気のよい放送が、学園中に響いていることだろう。

 さて全校生徒に向けられている放送をマイク越しに語っているのは俺、久能雅人である。何で俺がZなんて名乗っているかといえば、なんというか、そっちの方が面白そうとか言われて部長に押し切られたためだ。

 なんか俺の声を聞いた瞬間、「正体隠してやった方が絶対にいいよ!」と急に言われたのである。というわけで、正体を明かさないままに、放送をしている俺の正体を知っているのは同学年の放送部や部長ぐらいだ。他の連中にも明かしていないらしい。っていうか、部長が何故か俺を表に出したくないようで、そのせいで俺は放送部員とも交流を中々深められていなかったりする。

 しかも部長ってばこの学園に影響力が強い人だからって、わざわざ俺の正体ばれないように個室の放送室のようなものを作ってしまった。……本当意味が分からない。秘密の俺専用の放送室にやってくるのは部長以外いない。

 何であの人、あんなに俺のことを表に出したくないのか……。

 そんなことを考えながら今日の放送を終える。そのタイミングで丁度、部長がやってくる。

「おつかれー、まさ君!」

 にこにこと笑っている部長は、チャラい人だ。俺に会う度になぜか俺に抱き着いてくるし。スキンシップが激しい。まぁ、チャラいとは言ってもこの同性愛があふれる学園で大勢の人間と付き合っているとかそういう面はないらしいけど。ただなんか普段から言動が軽いだけというか、そんな感じの人である。

「……暑いです。離れてください、部長」

「えー、俺はまさ君にくっついていたい!!」

 部長はそう言って、俺から離れる気配はないようだ。

 なので、俺より背の低い部長を背中に引っ付けたまま俺は立ち上がり、飲み物を飲む。

「ねーねー、まさ君、それ一口頂戴」

「どうぞ」

 どうぞと言って、俺の肩に頭を乗せている部長の口元にペットボトルを持っていく。部長はごくごくとそれを飲んだ。

「おいしーね!! まさくん、お昼ご飯まだだよね? 俺作ってきたからたべよーよ」

「はい。いつもすみません」

 部長はようやく俺から離れたかと思えば部長は持ってきたリュックからお弁当を出してくる。茶髪で、ピアスをしていて、明らかに家事とか出来なさそうなのに……この部長、料理が得意だったりする。親衛隊もあるような人気者だし、そのギャップも人気の要因のようである。俺にはさっぱり分からないが。

 ただ部長の料理はとても美味しい。部長はいつも俺にお弁当を作ってくれるのだ。スキンシップが激しいのだけは困りものだけど、部長は俺に良くしてくれていて、本当に良い部長だと思う。

「ふふふ、いいんだよ。俺が作りたくて、まさ君に作っているんだから」

 にこにこと笑う部長と共にお弁当を食べた。

「ねー、まさ君、放送部のZ様の正体を探せって皆盛り上がっているみたいだよ?」

「え、俺の正体なんて知ってどうするんですか?」

「隠しているから知りたいんだと思うよ。でもまさ君、正体ばれないようにしよーね? 俺はまさ君の正体がバレてまさ君が注目を浴びちゃうのやだもん」

「はいはい。部長が言うならそうしますよー。でもまぁ、俺の正体がバレたところでどうもならないと思うけど。俺って部長と違って平凡だし、え、あいつがって一瞬注目を浴びるだけだと思いますけどね」

「もー、自己評価低いなぁ、相変わらず。まさ君は、もっともっと注目を浴びても仕方がないぐらい良い男なんだからね?」

「そういうの部長だけですよ」

 部長からの俺の評価は驚くほどに高い。何でこんなに高いのかはぶっちゃけ謎である。それでもこれだけ後輩として可愛がられて嫌な気持ちにはもちろんならない。寧ろ嬉しいとさえ思うのは俺も部長の事を先輩として慕っているからと言えるだろうか。

 なんだかんだで俺が正体を隠すなんて面倒なことを続けているのも、部長がそうしてほしいっていっているからだし。

「俺も全力でまさ君を隠すからね。まさ君のことは俺が責任をもってずーっと守ってあげるから」

「はいはい」

 何だか妙に力がこもっている言葉だったが、とりあえず頷いておいた。



 それから昼休みが終わったので、教室に戻った。

「Z様って誰なんだろうな」

「良い声しているよなー」

 と騒ぐクラスメイトたちの声を聞きながらも、俺は素知らぬ顔をしているのであった。






久能雅人

二年生。放送部に入部してすぐに部長によって、正体を隠すように言われる

割と色々気にならない性格な方である。部長のことは気に入っているので、部長の言う事を何だかんだ聞いている。声が良い。教室ではあまり親しい人もいないので一人でいるタイプ。


部長

三年生。雅人に一目惚れして、声も好みで、他に見せたくないという独占欲から実は正体を隠させているが、雅人は一切気づいていない。まさ君と雅人のことを呼ぶ。

弁当作ってきたりとか、見た目がチャラい割に献身的な人。卒業後もずっと雅人の面倒をみたい人。




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