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籠の中の鳥は学園に入学する 7

「ねぇ、帝、離れない?」

「やだ」

 僕と帝は今、中庭にいる。

 この学園は中庭も驚くほどに広い。僕が監禁されていた帝の家も広いけれど、それ以上に立派な中庭が此処にはある。景観を保つために庭師がおおく雇われているらしい。お金持ちの学園だからだろうけれど、お金をかけてるなぁと思う。

 帝は僕にべったりとくっついている。ちょっと暑いから離れてくれないかなと思うのだけど、帝は僕にくっつきたくて仕方がないらしい。

 それにしてもやだって。やっぱり帝が僕が来るまで誰も寄せ付けない孤高の存在って思われてたのって面白いなと思ってしまう。帝は僕の前だと少し子供っぽかったりアホだったりするし。でも僕の前でだけそうだと思うと嬉しくなって、思わず口元が緩む。

「緋色、何考えてるの?」

「急になに?」

「緋色が笑ったから、何かが緋色の興味を引いたのか? 緋色が興味を引くのも、緋色が見つめるのも俺だけでいいのに」

「……何勘違いしてるの。僕は帝の事を考えて笑っただけだよ。大丈夫だよ、帝。僕は帝をいつも見てるから」

 本当に何でこんなに帝は心配性なんだろうか。これだけかっこよくて、僕のことを大切に思ってくれてて、僕の前でだけ少しアホっぽくて、だけどそんなところも可愛い。そんな帝のことを、僕も大切に思ってて、帝の傍にいることが心地が良いのに。

 僕のことを大事で大事で仕方がないって思っているからだろうか。僕が他を見たら――って、学園生活が始まって一週間は経過しているのに、帝はよく心配している。

 帝は僕を監禁していた。そして僕はそんな帝の監禁を受け入れていた。

 それは外から見て見れば歪な関係なのかもしれないけれど、僕と帝にとっては心地よかった関係。その監禁と言う関係を壊したのは僕で、それで帝は不安がってる。

「帝、僕は帝が嫌っていっても、たとえ将来帝が僕のことを嫌いになったとしても、きっと帝のことを見ているよ」

「……俺が、緋色の事を嫌うはずがないだろう。逆ならともかく。なぁ、緋色。俺は緋色のことを愛してるんだ。緋色が何をしたとしても、緋色がやることなら全て許せるし、俺は受け入れられる」

「うんうん……知ってるよ。でも急に抱きしめるのやめよーね。そして、お昼の時間終わっちゃうからお弁当食べようよ」

 急に抱きしめられながら、僕はそう言った。

 まったく帝は本当に僕のことが大好きだなぁ。

 ちなみに今は昼休み。

 今日はお弁当を猿渡さんが用意してくれたから、お弁当を帝と食べている。僕もお手伝いしたから、僕が作ったものもあったりする。朝から僕もお弁当作りを手伝ったと言ったら帝は「食べるのがもったいないよなぁ。永久保存したい」とか言ってた。けど、ちゃんと食べさせてる。

「ああ。食べるぞ。緋色が俺のために作ってくれたものだからな」

「僕がやったのちょっとだけだからね? ほとんど他の人作だよ」

「そうだったとしても緋色が手を加えたものなら、どんなものより美味しいに決まってる」

 またアホなことを言っているなぁ……と思う。ようやく僕を離した帝はパクパクとお弁当を食べている。

「ほら、緋色。あーん」

 帝が卵焼きを僕の口に持ってきたので、僕はそれを食べる。そしたら何が嬉しいのか、「緋色は可愛いな」と帝はにこにこしていた。

 帝はいつも僕を見てにこにこしている。僕が多分どんな馬鹿なことをしてもその笑みは崩れないだろうし、帝が僕に冷たい目を向けることはないと思う。

「帝も、あーん、してほしい?」

「してほしい!!」

 凄い勢いで即答されたので、焼き魚を差し出す。そしたら帝は嬉しそうに食いついた。なんだか面白かったのと、帝が食べさせあいがいいというので交互にあーんした。

「美味しかった。流石、緋色」

 ……だから僕はちょっとしか手を加えてないっていうのに。帝は食べ終わったあと、それはもう満足そうに笑っていた。



 それから午後の授業のために教室に戻れば、ひそひそとこちらを見て何かをクラスメイトたちが話していた。

 ……耳を澄ませてみれば先ほどの昼休みのことを話していた。

 開け放たれた中庭でのお昼ご飯だったので、目撃者が多数いたらしい。

「帝様とお嫁様が仲良く――」

「なんて尊い……」

 ……もう本当にお嫁様呼びが定着しているのにはもう突っ込まない。

 帝も気にしてない様子だし、僕も悪口を言われているわけではないので放っておくことにする。




 ――籠の中の鳥は学園に入学する 7

 (籠の中の鳥は学園で生活を満喫している)



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