俺と義理の兄と学園と。
母さんが再婚した。
俺の実の父親は、俺が四歳の時に交通事故で死亡した。お父さんの記憶はうっすらと残っている。葬式の時の記憶も少しだけ覚えている。
母さんはそれから女手一つで俺の事を育ててくれた。一人で子供を育てるのは大変だっただろうに、弱音も吐かずに俺のために頑張る母さんのために俺も中学生に入学してからアルバイトを行っていた。
母さんは中学生の子供がいると思えないぐらいに綺麗な人だ。俺と歩いていたら姉弟に間違われたりするレベルである。なのでいつか悪い男に目をつけられたときに守れるようにってことで、強くなろうと決意した。小学生のころから色々習っている俺はそれなりに強くなったと思う。
俺の通う公立中学校では、よく分からないが不良になって威張ってたり、二つ名的なものをつけられたりしている人たちもいるが、俺は母さんを困らせたくないので門限を守っている。アルバイトは早朝にすませている。仕事をしている母さんのために夕飯を作ったり家事をしたりしているため、家事スキルは高い方だと思う。
なんかどっかで不良に絡まれている女の子助けている現場を見られたのか、不良に声をかけられて仲間にならないかとか言われたことがあるが、門限を守るっていったらいい子ちゃんかよと馬鹿にしたようにいって去っていった。うん、ぶっちゃけ、いい子で何が悪いんだ? としか思えない。寧ろ悪い子よりは全然いいと思うが。
さて、生活費のたしにしたり高校の費用にしようと企みながら早朝にアルバイトをこなし、日中は勉学に励み、放課後は家事をこなし(もちろん、たまに中学生らしく遊んだりもする)、そういう日々を過ごしていた。そんな中で母さんが再婚するなどという!
俺は母さんには幸せになってほしい。しかし、俺はぶっちゃけマザコンである。俺を育ててくれた母さんのことは大好きでたまらない。母さんが再婚すること自体は賛成だけど、相手次第では俺は認められない!! と思いながら挑んだ対面の日。
「君が和仁君かい? 私は東雲敬一郎」
そういって笑いかけてくる人は紳士で美形なダンディな人だった。かっけぇ! と男の俺でも思う感じ。しかも東雲グループのトップらしいって、母さん、どこでそんな人と出会ったの?? いや、でも金持ちで見た目が優しそうでも実態は分からない!! と笑顔を浮かべながら内心は警戒していた。
そしたらなんか、「調べてもらっても構わないよ」って器広いな!! と思いながら小遣いからお金出して素行調査したり、実際に調べてみたりしたけど、問題なかった!! てかいい人だった。
俺が認めたと同時に入籍と結婚式をそのうちするって話になってた。あと、その段階でまだあってないけど、義兄になる人がいるらしい。不良らしい。髪も赤く染めてるとか。えー、敬一郎さんと同じ綺麗な黒髪って話
だからそれを染めるなんてもったいない!! って思うんだけど。
まぁ、敬一郎さんは若いころはその位遊んでても問題ないっていってるから俺が口出しすることじゃないけど。でも最近の写真見せてもらったら凄いかっこよかった!! 黒髪みたい!! って野望に燃えている俺。仲良く出来るかな? 全寮制の男子校に通ってるらしい。金持ちの息子ばっかりいるところらしいけど、通わないか? って提案された。
今中二の冬だから、高校生からって話。あと色々特殊らしいから、入学までに教えてくれるらしい。その特殊さが嫌なら他の所でもいいって言われた。
……同性愛者があふれてるらしい。うん、びっくりした。へーって感じ。ちょっと危ない事もあるらしい。でも交友関係作ったりする場としてはとてもいい学園なんだって。人気者には親衛隊があるとか、アイドルなの? 義兄にもあるらしい。ふーむ、まぁ、いきなり入ったらびっくりだけど、学園の事知ってから入学するなら対処すればどうにでもなるかな? それにぶっちゃけ、同性愛に偏見はない。それなりにいるし。びっくりしたけど。うん、あと全くちがう環境に行くのも楽しそうだからいいかなーって思った。
そんな感じで敬一郎さんと交流を深めている中で、ようやく義兄に会えた。
「……東雲令だ」
「初めまして和仁です。よろしくお願いします!!」
「……ああ」
「兄さんって呼んでもいいですか? それともさん付け? お兄ちゃん? どれがいいです?」
「好きなのでいい……」
「じゃあ、兄さんって呼びます! あと家族になるなら敬語じゃなくてもいいですか? 俺は仲よくしたいです!!」
「ああ……」
「やった!! じゃあ、俺のことも和仁って呼んで!」
「ああ。分かった。和仁」
初めてあった兄さんは、あんまり笑わないし、怒っているのかな? と一瞬思ったけれど、ただ無口なだけのようだ。それにしても本当に綺麗な赤に染めている。赤似合うなー、兄さん。
でも敬一郎さんと同じ綺麗な黒髪みたいなーって思った俺。
「兄さん、髪の色、黒に戻さないの? 俺兄さんの黒髪みたい! 絶対に似合う!!」
って懇願しまくったら兄さんは黒髪にしてくれた。めっちゃ似合ってた! 黒髪の方が絶対いいよ。かっこいい!
なんて思って喜んでた俺は、学園に戻った兄さんの黒髪に学園が騒然としていたことも、口下手な兄さんが「黒の方が似合うって言われたから」と言って、恋人!? とか飛躍した考えで騒がれてたことも知らないのであった。
和仁
マザコン。一人で自分を育ててくれた母さん大好き。
アルバイトをして、勉強もちゃんとして家事もする。再婚相手がいい人で嬉しい。義兄がかっこよくておぉ! となってる。ちなみに本人も顔立ちは整ってる。
ちょっと鈍感なので周りからのアプローチに気づいていなかったり、母親第一で中学校終わればすぐに帰ったりするので周りがアプローチする暇もほぼなかった。
令
学園に通ってる。和仁の義兄になる人。
口下手で睨んでるように見えるけど、別に怒ってはない。美形。赤髪だったが、兄さん兄さんと話しかけてくる和仁に黒がみたいと言われて黒に戻す
不良やってて、喧嘩もよくする。学園の人気者。ちなみに和仁に関しては恋愛感情はなく、兄弟が今までいなかったので弟が出来ることが単純に嬉しい。初対面の時も実は喜んでいた。
学園に通ってなくても、義兄に影響を与え、学園を騒然とさせる和仁であった。