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小森さん家の末っ子 2

「あ、莉兎様だ」

「可愛い顔しているなぁ」

 俺がこの全寮制の男子校に入学して、早一週間。

 俺は普通に過ごしているだけなのに、兄ちゃんたちのせいで目立ってしまっている気がする。本当に兄ちゃんたちは!!

 あの入学式の時に蓮嘉兄と流嘉兄が俺の事を弟だと暴露して、あれから散々俺の周りに「莉兎は可愛いな」とかいいながらよくやってくるので悪目立ちしているのだ。まったくもう……と思ってならない。

「はぁ……、こんなに注目を浴びなきゃいけないなんて」

「……あの生徒会長と風紀委員長の弟だと目立つだろう。まぁ、そうでなかったとしても莉兎は目立ったと思うが」

「えー、なんでだよ?」

「その性格と見た目。この学園じゃ人気者になる要素あるだろ」

 祐樹はそんなことを言った。

 兄ちゃんたちほど俺の顔立ちは整っているわけではないけど、そんなに悪くないはずだ。まぁ、昔から兄ちゃんたちのほうが女の子にキャーキャー言われるタイプで、そんな人気者になったことはないんだが。

 どちらかというと、俺は背が低い方だし、弟のような扱いをされている方が多かった。

 そんな俺がこの学園じゃ人気者になれるなどと言われて凄く不思議な気分である。ああ、でもあれか、同性愛者があふれている学園だからこそ、そういう目線になるのか? とはいえ、普通に外の女の子の方が可愛いだろうに。

 閉鎖的な学園とはいえ、外に出れないわけでもないのに何で同性愛者のあふれる場所になっているのかはなはだ謎である。

「ふぅん」

 頷きながらちらっと周りにいる生徒たちを見れば、俺が視線を向けた事に気づいて顔を赤くしてきゃーきゃーいっている。うーむ、面白い。俺がこんな反応されるとかレアじゃね? 兄ちゃんたちの弟っていうのがブランドみたいなものになってんのかな? 不思議だなと面白くて、色んな所に視線を向けてしまう。それで周りの反応を見て遊んでいたら、祐樹に「遊ぶなよ」と注意された。

「ああ、そうだね。遊んじゃ駄目だな。ごめんね、みんな!」

 遊んでしまったことに対して、周りを見て謝れば許してくれた。結構この学園ってびっくりするぐらいの陰険な虐めあったりとか大変な事あるっていうのも聞いてたけど、俺のクラスメイトたち良い子たちでよかった! 俺が挨拶をするとちゃんと返してくれるし。

「いや、このクラスが仲良いのって莉兎の影響だろ」

「え、なんで?」

「……何でも何も、この学園は顔がいい奴が崇拝されてそれ以外はひどい対応されることもあるっちゃあるんだよ。全員がそうとは言えないが。莉兎はどんな奴にだってクラスメイトだからって「おはよう」って声をかけるだろう。それであの生徒会長たちの弟である莉兎に嫌われたくないとかいう思いが働いて、皆仲良くなっているんだろ」

「えー、なんだよ、それ」

「まぁ、それがきっかけになってしゃべって、実際に仲良くなれたというパターンもあるようだが」

 俺がきっかけになって仲良くなれたのなら、まぁ、良かったんじゃないか? っては思うけど。それにしても幼稚園からここに通っているとそういった価値観になってしまうものなのだろうか。

 俺は普通にクラスメイトとは仲良くしたいなーって思って声をかけているだけなんだけど。

 あ、でもそういえば幼稚園も小学校も俺のいたクラスって皆仲良かったなぁって今考えれば思う。それって俺の影響もあったりするのかなーって自惚れた思考を祐樹の言葉に考えてしまった。それだったら嬉しい。というか、小学生の頃の友達に会いたくなったなー。ここに入学しちゃったから夏休みとかにならなきゃ遊べないけど。

 連絡だけでも取ろうかななんて考えてしまう。

「まぁ、仲良しなのは良いことだな」

「そうだな。他のクラスは此処まで仲良くなってなかったり、大変らしいから」

「そうなのか。仲よくしたほうがいいのにな」

「そうだな。でも莉兎と同じクラスで良かったよ。このクラスだと楽しそうだし」

「俺も祐樹と同じクラスで良かったよ」

 そんな風に祐樹と会話を交わしていたら、「莉兎―!!」と大きな声が聞こえた。これは蓮嘉兄の声だな。

「蓮嘉兄、何――?」

「近くを通ったからよっただけだ!」

「そうなの? ってか、蓮嘉兄も流嘉兄も俺の所来すぎじゃない?」

 この学園の生徒会長と風紀委員長って普通の学校のに比べて仕事がおおくて忙しいって聞いてたんだけど、俺の元にめっちゃくるんだよな。一瞬間、学年違うのに毎日両方見てる気がする。

「ははは、莉兎がいるのに来ないわけないだろ」

 蓮嘉兄はそう言って近づいてきて、椅子に座っている俺の頭をぐりぐりと撫でまわす。

「可愛いなぁ、莉兎はっ!!」

「兄ちゃん!!」

 髪がぐちゃぐちゃになるから怒れば、蓮嘉兄は笑いながらやめてくれた。

「よし、莉兎成分、補充した!! じゃあな、莉兎!」

 ……蓮嘉兄は忙しいのか、そう言って嵐のように去っていった。

 蓮嘉兄がやってきたことに、きゃーきゃークラスメイトたちはいっていて、よく蓮嘉兄と流嘉兄がやってくるからと他のクラスの人間もこのクラスを見に来たりもしている。



 兄ちゃんたちが騒がしかったりするけれど、クラスメイトと仲良くなれたし、俺の学園生活は現状とても楽しい。




 ――小森さん家の末っ子 2



莉兎は割と誰とでも仲良くなれるタイプです。

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