無関心 6
「新しい生徒会では――」
「ねぇ、総輔、ここ楽しそうじゃない? 今度出かけようよ」
「確かに楽しそうだな。今度のデートで向かうか」
「って、きけぇええ!!」
今日は痛い子――直紀(ようやく名前を覚えた)が総輔の部屋に遊びに来ている。痛い子痛い子と友達になった当初は呼んでいたのだが、直紀と呼んでほしいと何度も懇願してきて可哀そうになったというのと、流石に友達になって名前を覚えたので名前で呼ぶようになった。
とはいえ、スマホの登録画面が『痛い子』なのは内緒だ。まぁ、ばれたらばれたで直紀が凹んで面白いだけだろうし。
「綾人も総輔も会長が可愛そうだろう? もう少し話を聞いてやれよ。はい、会長、これ良かったらどうぞ。綾人も総輔もお互い以外は見えてないんで、いちいちそんな風に声を挙げてたらきりないですよ」
楸は声を挙げる会長を哀れに思ったのか、飲み物を渡して慰めていた。直紀は楸の対応に感動したような表情を浮かべている。
るーちゃんが言うには直紀って俺様でかっこよくて唯我独尊な感じで、キャーキャー言われるタイプらしい。目の前にいる直紀見ると全然そんな感じはしないけど。
「うぅ……楸は良い奴だな」
「いえ、そんな感動されても。綾人と総輔が冷たいだけですからね? あの二人、色々と周りに無関心ですから。寧ろ名前を覚えてもらえただけでも会長は喜ぶべきですよ」
「敬語はいらんぞ。俺様と楸は友達だろう」
「いつから友達に……まぁ、いいけど。じゃあお言葉に甘えてため口にする」
「ああ」
なんだか直紀と楸が仲良くなっていた。まぁ、直紀は友達が俺と総輔しかいないらしいから良い事だろうと思う。
それにしても時間があれば俺たちに連絡をしてくる直紀だが、俺も総輔も互いの連絡以外はスルーしたり、二人でいる時はスマホを見なかったりもよくする。だからなのか、直紀は俺たちに会いたい時は押し掛けてくるようになった。
それもあって俺達が直紀と仲よくしている事は広まってるらしいって、るーちゃんがいってた。俺は周りのこととか気にならないから気にしてなかったけど、るーちゃん曰く、俺達が直紀と一緒に居ると視線が凄いっていってた。
面倒なこと起こそうとしていた生徒もいたらしいけど、るーちゃんがどうにかしたんだって。流石るーちゃん。
「直紀、良かったね、友達三人目」
「そうだな。いい事だ」
「な、なんだ、その生暖かい目は!! お、俺様は確かに友達と呼べるような対等な存在が少ないが……こ、これからは作れそうなら作るのだ」
友達が増えて良かったとそんな目で見れば直紀は恥ずかしそうに声をあげた。
「会長……そんなに友達に餓えてるのか?」
「う、餓えてなどない! あと楸は役職名ではなく名前で呼んでくれ」
「いや、餓えてるだろう。会長――直紀が友達を作りたいっていうなら俺の友人たちを紹介しようか? 綾人と総輔も周りに関心なさ過ぎて友達少ないからなぁ……」
「本当か!? 俺様は友人と騒いだりしたいぞ。仲良い友人と言うのはお泊り会とか、ゲーム大会とかするのだろう!?」
「……そんなに友達と遊びたいんだな。よし、じゃあ俺がその場を整えてやろう」
「本当か!?」
「ああ。綾人と総輔は参加するか――って聞いてないな」
俺と総輔は直紀と会長が話し込んでいる間、次にデートする時に何処に行くかとかそういう話をしていた。
「ねー、総輔は他に行きたい場所とかある?」
「俺は綾人が一緒ならどこでも楽しい」
「俺も!! 俺も総輔がいればどこでもきっと楽しい」
正直何処に行くかっていうより、誰と行くかっていうのが重要だと思う。お出かけって、結局楽しい場所だったとしても好きじゃない人と一緒に居たら楽しくない気もするし。
そう考えれば総輔とだったらどこだってきっと楽しい。他の人にとって楽しくない場所だったとしても総輔とならきっと楽しいだろうと思う。
その後、話に夢中になっている俺と総輔は楸に「お泊り会とか企画しているが来るか?」と聞かれて断った。そしたら直紀が悲しそうな顔をしていたので、別途今度遊びにでかけることになるのだった。
end
会長と友達になってようやく名前を覚えました。