幼馴染と俺
幼馴染である浩太が全寮制の男子校に入学して早三年、高校に進学する俺は浩太に誘われて浩太のいる学園の高等部に入学した。
のだが……、
「おい、浩太。ここがこんなに同性愛者ばかりしかいないなんて聞いてないぞ!!」
幼馴染である浩太は、この学園の特異性を一切話してくれなかったのだ。
全寮制で、設備が整っていたり、進学校で大学に入学するのに利点があったりすることは聞いていたが、ここまで変な特異性があるとは知らなかった。
……この学園、初等部から金持ちが多く入る男子校らしく、閉ざされた環境の中で女がいないからと男を見るなんて知らねーよ!! 誰が想像するんだよ!! 男が男に親衛隊とかいって訳の分からないファンクラブを作って、それで制裁とかおっそろしいことが起こる事もあったりするとか。
なんで、入学を進めておきながらその特異性をこいつは俺に言わねーんだよ。
「……だって言ったら志信は入学しなかっただろうが。俺は志信と一緒に高校に通いたかったんだよ」
しゅんとした顔をされた。
子の幼馴染、男の俺から見ても顔が良い。女子に昔からキャーキャー言われていて、近所のお姉さん(俺の初恋)にも「かっこいい」とか言われちゃうような美少年だった。今は、かわいらしい美少年から成長して、色気むんむんの美青年に成長している。
そんな幼馴染は、昔からの仲だからか結構俺の後ろをペットか何かみたいについてきていた。家の関係で、此処に入学する事になった時も「志信と離れたくない」とか泣きわめいて大変だった……。
「はぁ……」
俺に入学してほしかったからと特異性を隠していた幼馴染には飽きれてため息が出る。
浩太はでかい図体なのに俺のため息を聞いて、俺が怒ったのではないかと不安そうな表情をしておろおろしだした。本当に、昔からこの幼馴染は変わらない。
「そんな顔をするな。隠してたには文句を言いたいが、まぁ、利点があるのも楽しいだろ。三年ぶりに浩太と学生生活を送れるのも楽しそうだしな。……つーか、ちゃんと言ってくれたら特異性理解した上でちゃんと入学したっつーの。お前が隠してたからなんも心の準備とかできてないんだぜ?」
「大丈夫。志信に何もないように、俺がちゃちゃっと手は回してるから!!」
「なんじゃそりゃ」
「俺、親衛隊もちだから根回ししとかないとややこしいから、ちゃんと根回しした。志信と一緒にいたいから」
綺麗な顔して、へらりっと浩太は笑う。
浩太は見た目とのギャップが激しい方である。見た目はクールそうな美青年なのに、こうやってアホみたいな笑みを浮かべるのだ。特に俺の前では犬のようだと共通の友人が言ってたっけ。
それにしても親衛隊ねぇ……、ファンクラブとかかわいらしい名前じゃなくて、親衛隊なんて堅苦しい名前なのとか意味があんのかね?
「そうか。まぁ、いいや。とりあえずこれからよろしく、浩太」
「うん!! よろしく、志信!!」
これからよろしくと言えば、浩太は満面の笑みを浮かべるのであった。
――幼馴染と俺
(幼馴染に進められて俺は全寮制の学園に入った)
おまけ
「やったー、志信と一緒に学園通える!!」
「よかったですね、浩太様!!」
「浩太様の思い人様が入学するなんてすばらしい!!」
「是非、落としましょう!!」
「うん!! 絶対、この学園にいるうちに志信に意識させて、志信と恋人になる!!」
「頑張ってください!!」
「応援してます、浩太様!!」
――志信は知らない。浩太が意識させたいがために志信を学園に誘い、浩太の親衛隊が「浩太様の初恋を実らす会」などといった訳の分からないものになっていることを。
志信
幼馴染に進められて特異性を知らないままに入学。
しかし聞いてもまぁ、幼馴染が喜んでいるし三年間楽しもうと思っている。
面倒見がいい男前。
浩太
志信の事が大好きで、いつも後ろをついて回っている。ギャップがひどい。見た目はクール系、しゃべるとアホの子。
志信より背は高い。志信とラブラブになりたい。
浩太の親衛隊
見た目はクールなのに中身がアホな浩太に庇護欲にかられている集団。面倒を皆で見てる。全員浩太のお母さんみたいな(性別的にはお父さん)。
浩太の思い人が入学して大歓喜。応援する気満々。浩太と一緒に「志信様ご入学おめでとう+作戦会議パーティー」とかいってパーティーまでしてる始末。