籠の中の鳥は学園に入学する 6
僕は生徒会室に居る。というのも帝の一言により、転入して間初日なのに生徒会というものに入る事になってしまったからだ。帝は寧ろ、僕と帝以外の生徒会のメンバーをやめさせて二人っきりの生徒会もいいななどと呟いていたけれど、止めたらそれはやめてくれた。帝は有言実行する人だから、全部本気なのだ。
正直言って、帝が僕の事を好きだと感じるのは僕にとって嬉しい感情だけれども……そういう周りと仲が悪くなってしまうような事はやめてほしい。
他の生徒会のメンバー達は帝の発言を聞いた時、茫然としていた。本当に帝って、僕が関わらないと完璧超人らしいからなぁ。
本当に帝は、僕の事になるとおかしくなる。その事実が嬉しいと思ってしまう僕自身もやっぱりどこかおかしいのかもしれないけれど。
「会長……凄い、笑顔」
「会長は本当に……お嫁さんの事が好きなのですね」
……なぜか、生徒会でもお嫁さん呼ばわりになってしまっている。というのも帝が僕の名前を誰かが呼ぶ事を嫌がったからだ。帝は本当に我儘で、不遜で——、帝らしいなぁと思ってならない。
お嫁さん、と呼ばれるのはやはり恥ずかしいし、僕は男なんだけれどと思ってならないけれど——、それでも帝が僕の物だっていう証だと思うから、少しだけ気分が良い。そんな僕は帝に毒されてるんだなと思う。
「緋色が居るんだから当然だろ?」
帝はそんな風に笑って、僕の隣にいる。僕にひっついて、僕のすぐ隣で仕事をする。僕の方をちらちら見ているというのに、書類をこなすスピードが速い。帝は生徒会の仕事や家の関係の仕事といったものを、別の事をしながらでもこなす。本当に超人のような思考能力だと思う。並列思考とかそういうのなのだろうか。僕の場合、帝ほどの事は出来ない。
帝ぐらい仕事が出来れば、とても気分が良くなれるんだろうな。
「しかもスピードはやっ」
「……会長、凄い」
その場に居るのは副会長と書記の人だけだ。名前は……帝が覚えなくていいと言ったからきちんと挨拶はされていない。
帝はそれからてきぱきと、仕事を終えるとまだ教わった仕事をしている僕の事を急に抱きしめる。
「わっ……帝、僕、仕事中だよ?」
「知ってる。でも、やっぱり、緋色がここにいるのいいなと。それに制服。緋色の制服ヤバイ」
「……ああ、そう?」
「ああ。緋色、その仕事終わったら部屋戻ろうな」
にこにことしながらいう帝の目はぎらぎらしていた。僕の事を美味しく食らう気満々であるのが見て取れて苦笑してしまった。
副会長はどこか、ウブな所があるのか「……うわぁ」と口にしながら顔を赤くしていた。この学園って結構男同士でそういう関係の人いるらしいけど、副会長はそういうのとはないらしい。
僕も初めての学園で、ほとんど初めての外出で、帝と二人っきりになりたいという気持ちがある。だからこそ、一旦もっと僕を抱きしめていたそうな帝を離す。そして黙々と仕事をこなして(とはいっても初めてなので簡単な仕事だが)、帝と一緒に生徒会室を後にした。
その間、ずっと副会長と書記の人は何とも言えない目をしたり、こちらへの視線をそらしたりしていた。
「緋色と学園歩けるのも、中々いいなぁ」
「……だったら最初から一緒に入学したらよかったかもね」
「いや、それはどうだろ? 緋色が望むから俺は緋色を転入させたけど、でも出来れば俺は緋色は俺だけを見つめてればいいと思ってる。それに俺が生徒会長として権威をふるえるようになってからのほうが良かっただろうから、これでいい」
帝は僕の手を引きながらそんな事を言う。
僕が、帝だけを見つめてればいいと帝は思っていると躊躇いもせずに口にする。そして僕の事を引き寄せる。周りに生徒達の姿があるからそちらに視線を僕が向けていたのを見かけたからだろう。
「なぁ、緋色。俺だけ見て。他は見なくていいから」
「……少し、見ただけだよ。僕の視界にはずっと、帝ばかりが映っているよ。それに、他を見るからこそ、帝の良さが分かるんだよ。……ちゃんと僕は帝の事を、見ていたくて見てるんだよ」
「緋色……っ」
何だか感涙極まったような声の帝にぎゅっともっと強く抱きしめられた。と、思ったら急に体が浮いた。お姫様抱っこされている……。そしてそのまま、僕の事を抱えたまま寮室に帝は戻るのだった。周りの声が騒がしかったけれど帝は一切気にしていない様子だった。僕の事、ぎらぎらした目で見ていた。
そして寮室に連れ込まれるやいなや、キングサイズのベッドに放り込まれて美味しくいただかれた。
……初めて入った帝との相室をちゃんと見る間もなかったのだった。
―――籠の中の鳥は学園に入学する 6
(籠の中の鳥の外への一日目は終了した)