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君は今日もあいつ命、で、俺は今日も君を見てる。 5

 梓の事を好きなんだ、梓の事を愛してるんだ。その言葉を俺は梓に告げた。それから、梓と一度も会えていない。

 あーあ、俺の計画的には、梓が会長に酷い目に合わされて傷ついたところをどろどろに甘やかして俺の元へ落とそうと考えていたのに。会長のせいでその計画が失敗してしまった。俺はその腹いせに、会長の秘密を風紀委員長にばらした。その結果、風紀委員長に迫られて、貞操の危機らしいけど俺は知らない。うん、俺を好いているらしい会長の好意が風紀委員長に向いている方が嬉しい。

 梓は俺になんていうのだろうか。

 俺は梓に振られたとして、どう動くのだろうか。俺は、梓を諦められるのだろうか。諦められるかというと、諦められはしないだろう。俺は、俺自身が驚くぐらいに梓に惚れている。だからあきらめないし、粘着っぽく梓を思い続けるかもしれない。今振られたとしても、ずっと梓に言いつづければ優しい梓は俺に振り向くかもしれない———まで考えて、俺は結構振られるかもしれないって柄にもなく不安になっている。それはそれだけ、俺が梓を愛しているからだろう。

「珍しく中里君、落ち込んでいるじゃんか」

「浜中……」

「周防君に思いを伝えたんだって?」

 浜中は俺を見ながらニヤニヤしている。その顔が腹立つ。

「会長を脅したりとか、そんなことしているからそういうややこしい状況になるんだよ。そういうことせずに周防君にまっすぐに思いを伝えるとかそういうことできていたらもっと違ったんじゃない?」

 そんなことを言われるけど、俺はそんな風に性格がよろしくない。俺は梓が傷ついてでもどうしても梓を手に入れたいというそういう性格が悪いのが俺だ。

「うるせぇ」

「ははは、それで荒れてるとか、本当中里君面白いことになってるね。というか、会長が風紀委員長といい感じになっているのも中里君の差し金だろ?」

「それが?」

「ああ。もう本当性格が悪いね、中里君は……」

「うるせぇよ」

「でも、あれだね。なんだかんだいって周防君のこと大切にしているし、周防君に無理やりってことしないあたりがなんだかんだ甘いよね」

 浜中がうざい。俺のことをからかっているのか、色々言って来てて本当うざい。俺はただでさえ、梓がなんていうんだろうって苛立っているのに。

「それだけ周防君のことが好きだからってことでしょ?」

「悪いかよ……」

「悪くない悪くない。ただ、本当中里君って性格悪いけど、その辺純情だよね~」

「はぁ……お前どっかいけよ」

「周防君の前ではもっとにこにこしている癖にそれ以外には冷たすぎるよね」

「はぁ、当たり前だろうが。梓以外になんで俺が優しくしなきゃならないんだよ」

 本当、こいつ、どれだけ側にいるんだよ。さっさとどこかいかないかなと苛々しているのにまた問いかけてくる。

「そんなに周防君のこと、どうして好きなの?」

「はぁ、何で浜中にそんなことを言わなければならないんだよ」

「いいからいいから」

 促されるままに、俺は口を開く。普段こんなこと言わないのに、俺はよっぽど梓がどうこたえるのだろうって気持ちがいっぱいで思わずいってしまった。

「梓は可愛い。一生懸命で、俺と違ってまっすぐで」

 梓は可愛い。可愛くて、真っ直ぐで。―――それだけで惹かれたわけではないけれど、気になって、好きだなってそう思えた。

「気になって近づいたら、梓のこと、欲しいなと思った。梓をどろどろに甘やかして、俺のことだけを見てくれないかなと思って」

 どろどろに甘やかして、俺のことだけ見てほしいって。そんな願望があいたのは、梓が初めてで。俺は他人に関心が持てない人間だったのに、梓の事が欲しくて。

「……それで、周防君が会長を好きだからって会長に冷たくするようにけしかけたんだよね」

「ああ。―――だって、傷ついた梓も絶対可愛いから。そこでどろどろに甘やかして、俺の方に堕ちてくれないかなって思ってたんだよ。失敗したけどな」

「はは、あながちそうでもないかもよ?」

「は?」

「後ろ、後ろ」

 浜中が、笑いながら後ろを見るようにいう。俺が後ろを見れば、そこには、梓が居た。

 梓がいて、俺は動揺してしまった。まさか、梓がいるとは思ってなかった。俺が思わず浜中にいってしまった梓への気持ちを、梓は聞いていたってことか。ちょっと恥ずかしい。というか、浜中、あいつわかってていったのか、もしかして。

「里桜……あのね」

「……ああ」

 梓は俺のことを見てる。俺は梓がなんていうんだろうって緊張して、らしくないぐらい心臓が痛い。

「里桜は……僕のこと、本当、好きなんだね」

「ああ……」

「僕は里桜のこと、ずっとそういう風に見た事なかった。考えた事もなかった」

「ああ……」

「でも、僕は嬉しかったんだ。里桜の気持ち」

 梓はそういった。そうして、俺の方をまっすぐに見つめる。

 俺は梓を見返す。

「だから。里桜、あのね——、僕も——里桜のこと、近すぎて全然分かんなかったけど、嫌いでは全然ないんだ。里桜のこと、大好きとか、そういう気持ちではないけど、僕は——里桜に甘やかされて里桜の恋人として生きること想像して嫌だって思わなかった。寧ろ、そういう生活を、してみたいって思ってしまったんだ。それは僕が……里桜のことを好きだからかと思うんだ」

「梓……」

「だから、里桜、僕は———里桜と付き合ってみたい。里桜が僕を思ってくれているぐらいに僕が里桜のこと好きになれるかとか、わからないけど、僕は里桜の恋人になってみたいと思ったから」

「梓……」

「里桜ほどの気持ちはない、けど、僕は——里桜の恋人になりたい。そんな答えじゃ、里桜は嫌?」

「いや、梓——」

 俺は梓の体を抱きしめる。梓が驚いたように体を硬くする。

「俺は梓が、俺のものになってくれるだけで嬉しい。梓、俺は梓のことを思いっきり甘やかす。梓がいやだっていっても、離れていかないように。いいや、梓が、俺から一生離れたくないって思うぐらいに」

「……うん」

 ああ、梓が俺の腕の中にいる。それだけでも本当に夢みたいで。梓が俺のものになってくれたんだっていうのが嬉しくて。梓をどんどん甘やかして、俺の側からずっと離れたくないっていうぐらいに、俺にはまらせてみせる。

 これはゴールではない。第一歩でしかない。梓は俺に惚れこんでいる、といかいうわけではないから。だからこれから俺と梓の第一歩が始まる。――――これからの未来を決めるのは、俺の行動次第。俺は梓と共に居たいから。だから、俺はこれから梓が俺の側にずっと居たいって思うように行動してみせよう。梓、覚悟して。俺は梓を手放せないから。




 ――――君は今日もあいつ命、で、俺は今日も君を見てる。 5



というわけで凄く難しかったのですが、君は今日もあいつ命、で、俺は今日も君を見てる。シリーズはこれで終わりです。最終的にくっつけることは決めていたけど、どのような答えにしてくっつけるかなど色々考えて難しかった話です。楽しんでもらえていれば嬉しいです。



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