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GAME.2

 『月華』なんて呼び名のついている俺は相変わらずのんびりと学園生活を送っている。概ね良好。『紅龍』には全然会えていない。『紅龍』の情報とかは超集めているけどな。他の連中? 正直ただのゲームの参加者って認識しかないし、有名な連中の情報は何もしていなくても勝手に集まってくるし、そこまで興味がない。

 っていうことを、配下の連中にいったら「うわー…」って呆れられたけど好意をそれなりに抱いている奴とそれ以外だと態度が変わるのも当然だよね、って俺は思うわけ。俺、まじめな一般生徒演じていて、それなりに友人も出来た。友人の中には生徒会の親衛隊所属者もいて、「会長様たちが惚れているという『月華』様ってどんな方なんだろう」とかつぶやいていたけど、俺だよ、俺。まぁ、言わないけどさ。

 『紅龍』に接触しようかなーと思いながらも、さっさと接触するよりあいつが気づくか見る方がいいかななんて考えていたわけ。

 そしたらなんか、転入生がやってきた。ゲーム参加者たち、あの転入生が『月華』だって勘違いしているらしい。生徒会も風紀もなんという、目の節穴具合。そして一番面白いのがあの転入生はそこそこ不良世界に通じているらしくて、俺の事もゲームの事も知っていたんだろう。『月華』と間違えられたことをなんか喜んでいるからか、否定も肯定もしない感じに答えてたのを俺は見ていた。それで奴ら転入生が『月華』だって勘違いして追い回している。馬鹿?

 『紅龍』はどうかな、あいつまで俺のこと間違えたら正直ショックなんだが。他の連中はどうでもいいけれど、『紅龍』だけは、俺が好いている奴だからな。あれだけ俺の事大好きオーラだしておいて間違えたらショックだが。と、そんな風に思いながら『月華』と勘違いしているのならばあの転入生に『紅龍』は接触するだろう、なんて考えながら俺はよくあの転入生や生徒会、風紀を観察していた。この学園の連中の注目は今あいつらだから俺が少しぐらい注目していても不自然ではないし。

 俺の配下の連中は、あいつらが俺のことを間違えていることに対して憤っていた。「『月華』様とあんな転入生を間違えるなんて」と。そのまま突撃しそうな勢いだったけれど、それは俺が困るから止めた。

 それにしても俺に求愛しているのに俺を間違えるとか本当に馬鹿みたいな連中だななんて思う。そもそもさ、ゲームは俺を見つけたら考えてやるってものなのに。俺がわざわざ『月華』だって悟られるようなマネするわけないっていうのがあいつらにはわからないのかね。ま、いいや。

 

 そんな風に思っていたら『紅龍』があの転入生に接触したということが分かった。


 残念ながら俺はその場を目撃していなかった。授業中だったし、まじめに授業を受けていたんだ。ただあとから凄い噂としてこちらにまで入ってきていた。『紅龍』は親しげに話しかける転入生に一瞥しただけで興味がなさそうに去っていったらしい。『月華』に関心を持っているとされている『紅龍』がそんな態度だったのもあって学園内は騒がしくなっているらしい。

 で、それを聞いて俺は凄く機嫌が良い。『紅龍』が俺と勘違いされている奴に興味をしめさなかった。それは俺にとって十分に嬉しいことだった。配下の連中にはそこまで喜ぶのならば、さっさと『紅龍』に会いに行けばいいといわれたけど、それだと俺が楽しくない。

 「ふふふ~ん」

 思わず鼻歌が口から洩れる。

 あいつが、俺を勘違いしなかった。あいつはちゃんと、俺を見つけようとしてくれている。それだけで俺は心が温かくなる。

 あいつは、俺を夜の街で必死に探しているらしいけど、残念ながら俺はまじめな学園生活を送っているので夜の街には全然顔を出していない。あいつ、俺が同じ学園に居る事を知ったらどんな顔をするだろうか。驚く? 気づくか? 一瞬で気づいたら笑うけど。まぁ、気づかなくても俺は笑うかもしれない。

 そんな風に思いながら俺は、ふと、廊下から中庭を見下ろした。

「あ」

 小さく声が漏れる。

 『紅龍』がいる。なんか、あの転入生たちに絡まれている。ああ、御愁傷様。そう思いながら俺は見下ろしたままだ。周りに、人はいない。ふと、めんどくさそうな顔をしていた『紅龍』が上を見上げた。

「あ」

 また声が漏れる。

 目が合った。相変わらず、『紅龍』はイケメンだ。真っ赤に染められた髪が良く似合っている。鋭い眼光が、少しだけ驚いたように見開いた。

 うわ、あいつ何か勘付いた? 俺ちょっと、ビビる。『紅龍』はそれからあいつらを振り切ってどこかに向かった。こっち来るきか? うん、逃げよう。一瞬目が合っただけでなんか勘付いたのにはびびったし、笑いそうになるけど、ひとまず逃げる。ちゃんと、俺のこと見つけるまでがゲームだからな。



 そんなわけで俺はその場を急いで後にした。その後一般校舎で、『紅龍』が誰かを探していたと噂になっていた。



 end



『紅龍』は好意を抱きすぎて、一瞬で気づきます。



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