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籠の中の鳥は学園に転入する 3

 帝が、僕のことを嫁なんて口にしたこともあって僕はちょっと居心地が悪い。クラスメイト達は、僕と帝のことを遠巻きに見ている。帝が僕を見ながら凄い笑顔だからっていうのもあるだろうけど。

 というか……、

「帝、何でくっつけてるの、机」

「緋色まだ教科書ないだろ?」

「……それ、事前に準備ぐらいできたよね?」

「出来たけど、折角緋色が学園に通ってくれるんだからくっつけて授業受けたい」

「そう」

 帝は笑ってる。帝って素直だよなぁと思う。恥ずかしいけど、僕への愛情を隠さない。そういう隠さない愛情が心地よい。ちなみに今は朝のHRの後の、最初の授業までの間の時間だ。

「帝、僕折角学園に通っているから友達ってもの作りたいんだけど」

「緋色にかかわるの俺だけでいい」

「……帝、それじゃあ学園に通っている意味ないよ。そもそも帝の家で完結しているだけの生活ならともかく、こうして僕は今学園に通い始めたんだから帝だけとかかわっていく生活は出来ないよ」

「……そうだが」

「帝、籠から飛び出して僕は確かに外に出たけど、今までとは何も変わらないから。僕は外を知っても籠の中に絶対戻る自信はあるんだから」

 帝は、僕がこうして外の世界に出て不安が少なからずあるのだと思う。僕が、手の届かない所に行くのではないかって。本当に帝は心配性だ。僕は、帝にとらわれている生活が決して苦ではなかった。僕はあの、帝の家にとらわれている生活だって、とても心地よかった。

 今、こうして外に出てみて、僕は帝以外の人間とも沢山かかわっていくだろう。でも、僕はそれでも帝の傍に居る自信がある。籠の中に絶対戻ってくると思う。僕の世界が広がっても、僕が帝の傍に居る事は変わらない。――今までと、変わらない。

 帝は僕の言葉に、驚いたような顔をして、その後、不敵に笑った。

「俺の緋色は可愛いな」

 そういった緋色は嬉しそうに、僕を手繰り寄せた。って、何故僕を膝の上に乗せるんだ…。多分、僕を抱きしめなかっただけだと思うのだけど、周りが一気に煩くなった。

「帝様が……」

「何だか二人だけの空間が生まれてる……」

「きゃああ、帝様が凄く笑ってらっしゃる」

 帝様、帝様と周りは声を上げる。僕はそちらに視線を向けようとして、帝に声をかけられる。

「緋色、他を見ずに、俺の方だけ見て」

「……帝は、僕に見られるの好きだよね」

「ああ。緋色にならいくらでも見つめられたい」

 帝が僕の事を熱っぽい目で見ている。帝は、僕に見つめられるのが好きだ。僕に、自分だけ見て欲しいって言ってた。それもあって、僕を外に出したくなかったのもあるんだと思う。

 うん、でも僕も帝を見るの好きだなと思う。

「授業をはじめ―――って、伊集院、何をしている」

「緋色を抱きしめてる」

「自信満々に抱きしめてるじゃねぇよ! 授業始めるんだから机くっつけているのはともかく、席に嫁を座らせろ」

「……帝、僕座るね」

「ああ」

 帝は僕が言えばすぐに僕を離してくれた。

 そして僕は初めての授業というものを受けた。今まで帝に監禁されている中でも、僕は学んできた。それもあって授業の内容は分かるものばかりだった。だけど、授業というものだけが楽しい。僕はこうして教室で授業を受けるということはなかったのだから。教室の中で同じ年代の人たちがこうしてのんびり過ごす。なんて、面白いんだろう。

 で、帝はさ……、

「伊集院! 前を見ろ。なんで嫁の方をずっとみてんだよ!」

 なんで僕をじっと見ているんだろうか。僕だけ見ているとか、帝全然真面目に授業受ける気ないと思う。僕がいなきゃ多分授業も受けないんじゃないかな。だって生徒会の権限で授業でなくてもいいとかあるらしいから。

「緋色を見たいから。授業より緋色のが大事」

「お前は何をいってるんだ……本当に嫁が関わるとそれだけ豹変するんだな」

「当然だろ? 緋色の初めての授業だぞ? 見ないでどうする」

「……なんなんだ、それは」

 帝、担任が飽きれてる。

「……というか、帝どうせ映像とか撮ってるんでしょ?」

「ああ、当然」

「はっ!?」

 当然って答えているから担任が声をあげ、クラスメイト達がえっという顔をしている。

 正直帝は僕のこととっているし、会話も筒抜けだし、あとから見れるなら今見なくていいじゃないかと思ってしまう。

「なら、今見なくてもいいんじゃない?」

「いや、生で見る方がいいだろ」

「……そうなの?」

「ああ。緋色は何時でも何処でも世界一可愛いし、映像越しの緋色もいいが、生の緋色が一番良い」

「……そっか」

 帝は本当ぶれないなと思って、思わず笑ってしまう。帝は僕の笑みを見て、笑う。僕らが笑い合っていると、

「ちょっと待て、どんな変態だ。伊集院の嫁の方が許さなきゃそれは只の犯罪というやつだろうが!!」

 担任がそんな突込みをしていたが、帝は一切気にした様子がないのであった。




 ――――籠の中の鳥は学園に転入する 3

 (そして完璧な生徒会長の残念な一面はどんどん暴露されていく)



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