目当ては彼ではなく、君です。 4
「なぁ、和希」
「んー、何?」
あー、可愛い。なんというか、俺の名前を達哉が呼んでいるだけでどうしようもない幸福感というか、俺こんなに人のこと好きになれるんだってことに、自分で驚いている。呼び捨てにされ、呼び捨てに出来る仲になれただけでも良い進歩状況。このまま、じっくり達哉と仲良くなるのが一番の目標。
「……力哉、凄い大変そうなんだけど」
「だろうな」
「俺の方に何もないのってさ……」
「いっただろ? 俺がちゃんと守ってあげるって」
「やっぱり、和希のおかげか……。ありがとう」
「気にしなくていいよ。俺がしたくてやってるだけだから」
俺は興味がない相手なら、こんなことをしない。俺が勝手に達哉に惹かれて、達哉のことを手に入れたいと思っているからしているだけのことだしな。それに打算だらけだし。俺は達哉に好かれたいって気持ちもあって達哉を守っているわけだしな。
それにしても俺の親衛隊は中々優秀だ。きちんと人脈を作って根回ししたのもあって、俺が達哉と仲良くしても誰も騒がないようにしているし、そもそも、馬鹿みたいに騒ぐ連中は親衛隊を動かしてる。俺の周りはおおむね平和。あとは、邪魔な力哉だけどうにかなればいい。正直達哉とのんびり過ごそうとしている時に俺の名を呼んで突撃とか、部活中にこられると気が散る。力哉が居なくてももう俺は達哉と仲良くできているし、居ない方が平穏だ。
「和希は……」
「ん?」
「俺になんで、そんな親切にしてくれてるんだ?」
「なんでだと思う?」
脈あり、だとは思う。達哉は俺のことを嫌ってはないだろう。だけどそうはぐらかしてしまった。絶対、俺の性格知っている奴らには笑われるだろうし、面白がられるだろうけど、俺が本気で好きになったのは初めてだから、正直どうするべきか悩んでいるというのもある。
「わかんない」
達哉はそういった。分からないと、本当にわかってないのか、勘付いていて言わないのか正直わからなかった。もっと達哉に近づけるようになっていけたらとそう思った。
俺は達哉とのんびりと過ごせればよかった。力哉のことはどうでもよかったのだが……、まぁ、力哉からしてみればそうではなかった。
それは想定内だったが、めんどくさいの一言に尽きる。ただ、達哉は力哉と血のつながった兄弟なわけで、達哉はどうでもいいといっていたけどなんだかんだでかかわりはあるだろう。
「和希! どうして俺の側に最近いないんだ!」
「はは、ごめんな、忙しかったんだよ」
なんかわめいているのと、力哉の周りの連中が俺のこと睨んでいるけど、正直俺にとってはどうでもいい。というか、俺に絡まれないで力哉をどうにかしろよというのが感想。この連中、力哉に惚れて、親衛隊を上手く使えない馬鹿だしな。というか、力哉が俺に絡んでいるのが気に食わないんだろうけど。色々と立場が弱くなっていることも気づいてなさそうだ。
このまま破滅していけばいいだけなんだが、達哉と俺に被害がいかないようには根回ししているけどこいつら次第ではそれも調整しなければならないかもしれない。それにしても、このままじゃ役職全て失って、地に落ちていきそうなのだから少しぐらい頭が働くのならばそっちの対応するだろうけど、この連中ときたら相変わらず力哉を追い回している。
「おい、雪野和希」
「なんですか、会長」
「――――お前の所の親衛隊はおかしな行動をしているな。お前は親衛隊などと仲良くしているようなろくでもない奴だ」
なんかいきなり言われた。ろくでもないのはお前の頭だ。とは言わない。
「会長、親衛隊はそこまで酷い存在ではありませんよ。それにろくでもないなんてひどいですね」
「そうだぞ! 和希に酷いこというな!」
あ、力哉が俺の援護した。まぁ、俺の本音は冷たいって散々言われるような人間だけどな。そう考えると会長の言い分もちょっとは正しいのかもしれない。しかし、力哉相変わらずうるせぇな。もう少し声を小さくしろ。達哉といるときに絡まれなくてよかった。力哉も、周りの連中もめんどくさいからな。
「ところで、力哉、最近大変らしいけど大丈夫か?」
「ああ。俺は親衛隊になんか負けないぞ!! 和希も親衛隊にだまされないようにな!」
「大丈夫だよ。俺の親衛隊は良い子ばかりだからね」
俺の言うことを聞いてくれる使い勝手の良い駒だからな、本当に。聞き分けが良いし。俺の邪魔はしないから。
「そうか! ならよかった! 和希の親衛隊の所は確かに俺に嫌がらせもしないしな! 俺和希の親衛隊となら仲良くできるかも!!」
多分、佐竹は絶対拒否すると思う、とは口にしない。とりあえず力哉をいい気にさせて、さっさと破滅してくれないかと俺は思っている。そして取り巻き連中全員どうにかなって、達哉とのんびり過ごせればそれでいいし。
そんなわけで俺は適当に力哉の気分を良くさせた。取り巻き連中は何か言いたそうだったけど、力哉の機嫌を損ねたくなかったのか、特に何も言わなかった。
さっさと破滅しないかなと思いながら、俺は達哉の元へ向かった。
その一週間後に力哉が階段から落とされたとかで、凄い騒ぎになった。
end
中途半端だけど、とりあえずこれできります。