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その者、人を化かす狐のようで。

 その学園には、様々な噂がある。

 全寮制の、同性愛の溢れている、他の場所とは孤立した場所にある噂—――。

 第三校舎の三階にある開かずの扉には、何かが潜んでいるとか、音がなるとか。

 第五校舎になぜかある小さな鳥居で願いごとをすると、願いが時々叶うとか。

 第一校舎にいる情報屋は学園中の情報を全て知っているとか。

 第四校舎では姿を現さない生徒会長を見かけたとか。

 第二校舎では黒い服を着た怪しい集団が集会をしているだとか。

 

 さて、そんな学園で、平然と暮らしている目立たない学園の生徒。





 流川四季るかわしきは今日ものんびりと過ごしていた。四季は、眼鏡をかけ、髪を伸ばして、やぼったい雰囲気を醸し出している少年はこの学園では目立たない。その他大勢に埋没している少年だ。

 「四季、聞いたかー?」

 「何を?」

 「生徒会長が現れたって噂だよ。川西夏也かわにしなつや様が」

 「ふーん」

 四季は、興味がなさそうに答える。

 「お前は……本当に興味がなさそうだな」

 「まぁね」

 四季は、そんな風に答えながら友人の話には興味がなさそうに外を見ている。

 「シュン様のことも興味がねぇんだろ?」

 「情報屋ってやつ、なんだっけ?」

 「そうだよ! すげぇんだよ。情報網が凄くてどんな情報でも集めてくれるって話だぜ?」

 「ふぅん?」

 四季、相変わらず興味なさそうだ。そんな四季の興味をひこうと、友人は色んなことを告げる。

 「第三校舎には地下室があるって噂は? 狐の仮面をかぶったものがうろうろしているって噂とかさ。秋広様っていうのが信仰されているとか、Fクラスのトップのトウヤの話とかさー」

 「ふぅん」

 四季は、それだけ言って、急に席から立ち上がる。

 「四季、どこいくんだよ!?」

 「秘密」

 四季はそれだけいってその場から去るのであった。

 残された友人は、「本当あいつ、興味がないなぁ、色々」とつぶやくのであった。



 そして教室を後にした四季は、第三校舎に向かう。

 周りに人気がないことを確認して、誰もいないことを確認しながらゆっくりと進んでいく。第三校舎の一階、あかずの扉と呼ばれている場所の隣の部屋は、第三理科室である。あまり使われることのない教室で、ホルマリン漬けが並べられている不気味な部屋で、此処は総じて人気がない。

 そこに入った四季。

 そこには、もちろん誰もいない。誰もいないことをきちんと把握して、四季は棚を移動させて、その先にある壁を回転させる。そして奥の部屋へと入った。もちろん移動したものは元に戻してである。

 「――ふぅ」

 四季がいるのは、あかずの扉の先である。あかずの扉の先にあるのは、四季の私室である。部屋の中にたどり着いた四季は、すわり心地のよさそうなソファに腰かけ、だらしなく座る。

 そして机の上に置いてある、書類に目を通す。

 ―――その仕事を、川西夏也の名でサインしたりしていく。

 それが終われば、パソコンを広げると、カチャカチャと指を動かし始める。

 ―――その画面には、シュンの名宛のメールが届いている。

 その後は、五台所有しているスマホの赤色のケースに収めているものを取りだす。

 ―――その画面には、秋広宛のラインが映っている。

 そして最後に、白いスマホにかかっている着信に出れば、

 ―――相手の人間は四季のことを”トウヤ”と呼んでいた。

 さて、たまっていたものをすべて終えた四季はソファに寝転がって、面白そうに笑った。

 「全然、気づかねぇな、ほんと」

 四季が何をいっているかというと、四季が今やっている遊びのことである。四季は権力を使って、この学園で遊んでいる。

 生徒会長・川西夏也

 情報屋・シュン

 狐仮面・秋広

 Fクラスのトップ・トウヤ。

 この有名な四人、全て言ってしまえば、四季である。四季が全てを演じて遊んでいる。その事実を知っているものはほとんどいない。単独のものは知っているものが居ないわけではないが、四人の人物が全て同一人物であるということを知っているものはいない。

 これは、四季が始めた遊びである。

 ―――学園生活を、楽しくするための流川四季の遊び。

 本人はどこにでもいる一般生徒として過ごし、四人の目立つ人物を演じているのだ。

 誰も気づかないことを面白いと思っている。だけれども、もし、誰かが気づいたならば———そんな期待に今日も四季は笑うのである。




 ――――その者、人を化かす狐のようで。



 

流川四季

一般生徒を装っているが、生徒会長とか、情報屋とか狐の仮面の怪しい人物とか、Fクラスのトップとか全部演じている存在。愉快犯。


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