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籠の中の鳥は学園に転入する 2

 僕、伊集院緋色はなぜか、帝と手をつなぎながら、担任の先生の後ろを歩いている。担任である先生は、僕と帝をちらちら見ている。

 職員室は、僕を嫁と宣言したことによりひどいことになっていた。どうにか立ち直った担任の近藤先生が僕を教室に連れていくから、帝は先に教室に行くようにといったのだが、帝は「嫌だ」と一言言ってなぜか僕と一緒に教室に向かっている。

 帝、ご機嫌だ。

 「帝、何で僕は帝と一緒に教室に向かっているんだろうね?」

 「俺が緋色と一緒に居たいから、当然」

 「……転入生である僕はともかくとして、帝は本来なら教室にいるべきでしょうが」

 「俺は緋色と一緒に居たい。緋色と一緒に教室に行きたい」

 「ああ……そう」

 「呆れた顔の緋色も可愛い」

 なんで、今すぐでも僕を食いたいって顔をしているんでしょうね、帝は……。

 「ええっと、伊集院の嫁の方は……」

 「なんですか、その呼び方」

 「いやだって、下の名前で呼んだらそいつ煩そうだから」

 嫁呼ばわりはなんともまぁ、複雑な気分になる。

 「お前、転入って形だけど、前の学校とかの経歴ないのはどういうことだ?」

 「ああ、僕帝に基本監禁されてたから、正直こうして外出るのも初めてっていうか、そんな感じなので」

 「はぁああ!?」

 「ずっと帝の家で暮らしてたし、外への興味とかなかったからそのまま暮らしてたけど、一度くらい学園生活送りたいなと思ったので、頼んで学園に通うことにしたのです」

 「……そ、そうなのか」

 近藤先生は僕の言葉に、何とも言えない複雑な顔をした。僕にとってはそれが事実だし、別に隠すようなことでもないけれども、まぁ、世間的に見ればそういう反応になるものなのだろう。

 「つーかよ、伊集院、お前が寮に今まで入ってなかったのって……」

 「緋色のもとに帰るために決まってんだろ」

 「で、今更寮に入るのは……」

 「緋色と同室になるために決まっているだろ」

 「うわぁ……」

 近藤先生がドン引きしている。

 帝、僕のこと大好きだもんね。僕を基準にすべてを考えているというか、そんな感じで……まぁ、嬉しいけれど、学園でかぶっていた完璧な生徒会長という仮面がはがれているけどそれはいいのだろうか。

 「ええっと、伊集院の嫁はそれでいいのか?」

 「それいいというか、帝はずっとこうだし構いません。帝が僕に執着しなくなったらそれはそれでびっくりしますし」

 うん、帝はずっとこうだ。僕のことが大好きでたまらなくて、僕にどうしようもないほど執着していて、僕のことが関わらないと完璧らしいのに、僕が関わるとこんな風になる。帝の独占欲は強くて、だからこそ、帝は僕を監禁していて。

 それを他の人はおかしいとか、それでいいのかとかいうかもしれないけど、僕にとって、それは当たり前のことで。僕にとって、寧ろ帝からの執着がないというのはおかしいことなのだ。

 「緋色は、本当に可愛いなぁ。近藤、緋色に惚れんなよ」

 「……ほれねぇよ。俺は婚約者がいんだよ」

 「こらこら、帝威嚇しないの。大体僕は帝が言うほど魅力的でも可愛くもないからね」

 「いーや、緋色以上に魅力的で可愛い奴なんてほかにいない」

 ……普通に客観的に見て、僕ってそこまで言われるほどの見た目の良さはない。そりゃあ、帝はさ、本当に百人に九十人ぐらいは美しいと断言できるんじゃないかってぐらいかっこいいけれど、僕は……割と普通だと思うんだよね。なのに、帝は僕に盲目で、僕が一番魅力的などという。

 帝は、僕が外の世界を見て離れていくのではないかって心配しているけれど、僕はいつか帝の盲目な気持ちがなくなるんじゃないかっていう心配をしている。そうなったら仕方ないかなとは思うけど、僕はずっと帝が僕に盲目的であればいいなぁと思う。帝は昔から変わらなくて、僕はそんな帝との暮らしが気に入っている。

 帝に捨てられることが万が一あったとしても僕は生きていけるだろうけれども僕は帝と一緒に歩んでいく方がいいなぁと思うのだ。うん、やっぱ帝は僕が離れていくとか心配する必要ないよとそんなことを考えながら思った。

 近藤先生の呆れた顔が目に入る。帝は、ずっと僕と手をつないでにこにこしていた。

 で、教室についた。僕と帝の教室。帝が僕を同じ教室にしたようだから当然だ。というかさ、帝さきに入ったらと思う。うん、僕は転入生だけど、帝は普通にここのクラスの一員なんだから僕と一緒に入る必要なんてないしさ。

 っておもうけど、帝は僕と一緒に教室に入りたいらしい。

 近藤先生が先に足を踏み入れれば、「帝様が手をつないでいた方、転入生ですって?」「結局あの転入生はなんなの!?」「伊集院様は……」と凄い騒がしかった。帝は本当に人気者だ。というか、僕嫉妬されそうだなぁと思うけど、帝が僕に何かあるのを放っておくことはありえないし、心配はしていないけれど。

 「……あー、とりあえず入ってこい」

 といった近藤先生の声に、何故か僕だけじゃなくて帝まで入ってくるし。僕と帝手をつないでいるし、帝は……僕と一緒にこうして過ごせて嬉しいのかすごい笑顔だしで、教室は騒がしかった。

 「……転入生の伊集院緋色です。よろしくお願いします」

 「緋色、よろしくしなくていい」

 「……帝、あのさぁ、僕も作れたら友達ぐらいは作るからね?」

 本当、帝は……僕を独占したいって気持ちにあふれていて。でも僕の「学園に通ってみたい」って気持ちを尊重してくれて。けどやっぱり僕がもしかしたら帝から離れることになるかもってそれを不安がっているんだなって改めて思う。ずっと閉じられた世界にいたから、友達を作ってみたいって思いはあるけれど。僕は……、多分帝の側を離れなる選択肢はしないと思う。

 「い、伊集院様! そ、その方、伊集院という姓ということは伊集院様のごきょう———「俺の嫁」よ、よよよめ!? はああああ!?」

 多分ご兄弟ですか、と聞こうとした生徒、叫んだ。

 で、職員室と同じように酷い状況になった。僕は友達作れるかね……?




 ―――籠の中の鳥は学園に転入する 2

 (そして教室でも似たような目にあうのでした)



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