君は今日もあいつ命、で、俺は今日も君を見てる 4
現在、会長を脅して、会長に梓を傷つけてもらって、傷ついた梓を俺がドロドロに甘やかすという計画を進行中。
会長は、いい感じに動いてくれている。変わりに俺と電話したいなんて気持ち悪い事言ってきた。浜中が会長がかわいそうと煩いから、一回だけ電話してやったら、滅茶苦茶喜んでいてうわぁと思った。
「……会長様が」
梓が会長にひどい事言われたといって落ち込んでいるのを俺は慰める。正直悲しんでいる梓に心が痛まないわけではなかったけれど、でも、俺は梓が欲しい。梓を自分のものにしたい。……無理やり、梓を自分の物にすることぐらい俺には出来る。例えば、梓を脅してとか、でもそうはしたくない。こんな会長を脅して梓を手に入れようとしている俺が言うべきことではないかもしれない。でも、俺は梓の心が欲しい。梓に、俺を求めてほしい。だから、わざわざこんな回りくどい事をしている。
梓を好きになってからずっと、梓は俺の気持ちにも気づかないで、会長を好きだって全身であらわしている。それに胸が痛くなる。
俺は梓が好きだから、自分の恋人になってほしいって思うのは当然で。
好きな人の幸せのために、自分は身を引くなんて真似は俺には出来ない。俺は梓が欲しいから、梓を手に入れるために、動く。
梓を慰めて、梓が俺を好きになってくれるようにやさしい言葉をかけて。上手くいっていた。でも、俺の梓を手に入れたいっていう思いからの計画は失敗する。
「……里桜が、会長様にひどい事言わせたって本当?」
何処からか、ばれた。俺と、会長しか知らない、俺が会長にひどい事をさせた事を。
俺ははぐらかしたけど、「会長様が泣いてたんだよ! なんで、そんなこと。里桜は僕が嫌いなの?」って言われた。
ああ、会長からばれたのか。……本当使えない。
梓が泣いている。俺のせいで泣いている。……性格悪いだろうけど、梓の心が俺でいっぱいになっているってそれを思うだけで俺は愉悦を感じてしまって。ああ、もっと俺の事で心をいっぱいにしてほしいってそう思って。
「ごめんな、梓。俺は確かに会長を脅して、そういうことさせたよ。でもそれは、梓が嫌いだからじゃない」
「……じゃあ、何で。僕が会長様を好きな事知っているのに」
ああ、梓が泣いている。梓を、俺が泣かした。梓には何も知られずに計画を終わらせる予定だったのに。こうやって泣かせるつもりはなかったのに。
何故、そんなことをしたかなんてごまかしても仕方がない。ごまかし続けたら梓に本当に嫌われる。会長を脅した時点で、嫌われているかもしれないけれど。
「梓、俺はね、梓が好きなんだよ。梓は全然気づいてくれなかったけど」
「え?」
「俺はね、梓が会長を好きなように、梓の事を好きだ。いや、愛している」
梓の涙が止まった。驚いたように俺を見ている。本当に全然気づいてなかったのだろう。俺はあれだけ梓が大好きだって態度で示していたのに。周りは皆気づいていたのに。
「俺がね、優しいのは梓にだけだよ。梓に俺を好きになってもらいたいから、下心があったんだよ。梓が会長の事を好きで、俺の気持ちに全然気づいてくれないだろ? 俺はそれが嫌だった」
こんな気持ち、梓に言うつもりなんてなかったのに。会長がばらしたから、路線変更。
「だから、会長に梓を傷つけてもらって、俺が梓をドロドロに甘やかして、梓を俺のものにしようって思ったんだよ」
「それは……」
「俺は梓が好きだから。ごめんな、俺が優しいのは梓にだけだよ。梓が思っているような人間じゃ俺は決してない。俺は梓が好きだから、下心で梓に優しくしていた。俺は梓が好きだから、梓をどうしても自分の物にしたいって思ってたんだ」
梓が俺の言葉に何を思ったかは分からない。何を考えているかもわからない。だけど、これが俺の気持ちで。
「梓、俺は梓が好きだよ。本当に好きなんだ。……こんなこと俺が言って混乱していると思うけれど、後からでいいから返事頂戴。振ったって構わないから。友達をやめたってかまわないから。悲しいけど梓が無理だっていうならそれでいいから。でも俺が梓を好きだって気持ちを受け入れて。そして、ちゃんと考えてほしいんだ」
俺はそれだけ言って、黙ったままの驚いた様子の梓を置いてその場を後にした。
これでどうなるかは分からない。梓が俺の気持ちを知って、俺に答えてくれればいい。俺を意識してくれればいいとそんな風に期待してしまうけれどそうなるかどうかは五分五分だろう。だって人の気持ちは分からないのだから。
とりあえずばらしやがった会長は許さない。秘密をばらしたり合成写真をばらまいたりもしたいけれど、やったら梓は俺がやったとわかるだろうし、本格的に嫌われそうだし。
会長の秘密を会長と敬遠の仲の風紀委員長にばらそう。それくらいはいいだろう。
end
中途半端ですが一旦これで終わりです。
次で最後になるかと思います。