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あいつのために俺ができること 8

 目が覚めた時、正直俺は色々混乱していた。

 どうして寝ていたのだろうとまず考えて、思い出そうと考える。

 そして思考して、思い出したのは信吾のためにと動いて、倒れてしまった事。意識を失う直前に、心配そうな前園泉の顔が見えた事。

 「……どれだけ、寝てた?」

 慌てて立ち上がろうとするけれど、力が入らなかった。今は、何日だ?

 充電器に刺さっているスマホを見る。………一週間も過ぎてる。

 斉藤は……? 俺が止めていたのに、このままでは。どうなっているのだろうと頭が混乱していたら、三森が入ってきた。

 「悟様!! 目が覚められたのですね!! 良かった……」

 「三森……、学園はどうなっている?」

 「学園の事は前園様と私たちでどうにかしていますから、心配はしないでください。それより悟様は倒れたのですからまだ寝ていてください」

 前園泉と、三森がどうにかしている? 正直どういう状況なのかは分からなかったのだけど、起き上がろうとしたら三森にベッドの中に押し込められた。

 「俺は、もう大丈夫」

 「……大丈夫っていって倒れましたよね? 寝ていてください」

 学園に行こうとしてもやっぱり駄目だった。おとなしく布団の中へと入りながら、三森に俺が倒れてからの事を聞いた。

 「前園様が動かれて、親衛隊と斉藤の取り巻き達の仲を取り持ったりして、斉藤にもきちんと今の状況を言い聞かせて、学園内で斉藤が狙われる事がないように動いています」

 「……なんで、前園泉が」

 「……悟様、分からないのですか?」

 正直なんで気まぐれで俺に構っているような、あまり周りに関心なんて持たない前園泉が斉藤を守るために動いたのかさっぱり分からなかった。

 「前園様は悟様に関する誤解も根絶させる勢いで消しています。それが、何のためか、悟様は本当に分からないのですか?」

 「……全然分からない」

 本当に、全然分からない。なんで前園泉がそんな風に動いているのか。前園泉は斉藤の事に興味がなさそうで、俺が斉藤を守っているのにも眉を潜めていて……。そんな前園泉がなんでと思う。

 「そうですか」

 そういって三森はなぜかくすくす笑っていた。

 「……信吾は?」

 「越前様は相変わらず斉藤にべったりです。悟様のお見舞いに何度か来ましたが追い返しました」

 「いや、何で?」

 「正直悟様が倒れる原因になったのは越前様と斉藤ですから、僕としてはそんな原因の存在でありながら悟様を追い詰めている存在に少し苛立ちを感じていましたので」

 「俺が勝手に信吾を好きなだけで、信吾はそれを知らないんだから……」

 「悟様の気持ちを知らなかろうとも、親友であるのならばもう少し悟様について理解していただかなければいけません。恋愛に現を抜かすのは勝手ですけれど、悟様を親友と思っていらっしゃるのでしたら、悟様をもっと信じて、悟様を理解するのは当然です」

 ばっさりといわれて少し悲しくなる。そうなんだよ、信吾は俺を信じてはいなくて。俺がやるわけないって否定はしてくれたけれど、生徒会で責められた時はショックを受けた表情をしていた。それは俺がやったかもって少しは信吾が思ったって事の証で。

 ……信頼されていなかったのかって今考えても悲しくなる。信吾はずっと斉藤の傍に居て。斉藤が襲われかけた時から、前にもまして傍に居て。

 ずっと傍に居て、ずっと信吾を好きだったのは俺のほうなのにって、そう思ってしまう。

 「越前様は悟様が疑われていて、大変な立場にあっても斉藤の傍に居ました。斉藤と悟様両方が大変な時、越前様は斉藤の傍に居て、悟様を守ってくださったのは前園様の方です」

 ズキズキと胸が痛む。三森が言っているのは事実。事実だけれども、思い起こすと悲しくなってくるのだ。俺は信吾にとって守る対象ではなくて、俺ではなく斉藤がこんな立場だったら、きっと信吾は……って思ってしまったから。

 「だから、正直僕は悟様が越前様のためにって必死になって動いて、それで傷つかれるのは嫌だったのです。ですから、前園様が動いて、現状が打破されたのは喜ばしい事だと思います」

 三森はそんなことを言っている。

 確かに大変だった状況が好転したのはいい事だ。でも、俺が一生懸命に動いてもあんな状況にしかできなかったのに、前園泉が動いたらそんな風に好転するのかともやもやしてしまった。

 信吾のためにって、斉藤を守ろうとして。だけど結局斉藤は襲われかけてしまった。全然俺はダメだなって落ち込む。

 でも落ち込んでいる気持ちを悟られたくなくて、眠ろうと目を瞑った。


 次に目を覚ました時には、夜だった。



 三森は帰ったのかいない。ただ「これを食べてください」と冷蔵庫の中に食事が入っていた。

 明日は教室に行こう。三森から話を聞いただけでは、実際どうなっているか分からない。……信吾が、笑っててくれたらいいなと思う。

 斉藤が襲われかけて、信吾もばたばたしていたと聞いていたから。疑われてから気まずくて信吾と話していない。顔を見ていない。信吾に笑っていてほしいと、信吾が初めて本気になった相手だから幸せになってほしいとそんな風に思って動いていたのに、本当に全然だめだ。

 「……っ」

 涙が出てくる。

 信吾に笑っていてほしくて。でも結局親友である俺を疑わせてあんな顔をさせてしまって。

 信吾に幸せになってほしくて。でも結局信吾の好きな相手である斉藤を完全に守る事なんて出来なくて。

 俺が全然できなかった事、前園泉は簡単に解決をして。俺が動いた事は無意味だったのではないかなんて、考えても仕方がない事を考えてしまう。

 「……信吾」

 信吾に会いたいなと思う。

 ずっと顔を合わせていなくて。あんな表情しか俺に向けない事が悲しくて。前園泉が動いて現状が好転したといっていたけれど、もしかしたら疑われてしまっているままかもしれないけど。でも、会いたいなと思う。

 ……ずっと昔から、一緒に居て。こんなに話さない事なんて今までなかったから寂しいと思ってしまっているのかもしれない。

 すきだ、なんて言わない。信吾は俺をそういう目で見ていないから。でもやっぱり、斉藤と信吾をくっつけようと自分で動いているのに、斉藤に嫉妬してしまう俺は醜い。これが斉藤なら、「おめでとう」って素直に言うのだろうか。

 そんなことを考えて、ただ涙を流した。




 明日、信吾に会えたらなんて言おう。





ちょっと中途半端ですが、こんな感じになりました。

あと一回データが消えて書き直したら大分別物になりました。

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