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バカの面倒を見るのはごめんです。

今日も~、君は僕の~、わんこと俺と~と同じ世界観の話です。違う学園です。理事長の秘書さん目線。


これでエブリスタから移行するBL短編は最後です。次話は気が向いたときにちまちま更新予定。

しかし40万字も書いている自覚がなかったので、移行して結構書いてたなとびっくりしました。

 「光は可愛い。ああ、心配だ。あの可愛い光が…」

 突然だか、はじめまして。私の名前は高原哲也といいます。

 学園の理事長を務める目の前の気持ち悪い男の秘書をしています。

 うちの学園は同性愛者の溢れている少し周りからみたら異常とも言える学園です。

 その学園で美形だからと人気な若き理事長が目の前に居る気持ち悪い彼なのです。

 理事長は、学歴だけはあるようですが頭が足らない節があります。

 どうして、私がこんな理事長の下につかなければいけないんだと、正直苛立つほどです。

 とはいっても幾らバカでも上司ですし、秘書としてうまく立ち回りたいと思っているので私は頑張っているつもりです。

 しかしです、普段からバカだとは思っていましたが、目の前の理事長はひどく気持ち悪いのです。

 この目の前の気持ち悪いのは何なんでしょう?

 自分の甥っこをこの学園に呼ぶといっています。

 別に手筈を組んでくださればそれは別に構いません。

 しかしです、甥が可愛い可愛いとデレデレしているおっさん理事長に私はドン引きです。

 可愛い顔に欲情するだの、あの子は可愛いから…だの、ぶっちゃけ気持ち悪いです。

 甥っこさんにぜひとも言いたい。こんな変態の居る所に来てはいけませんと。

 それに加えて、素行調査書をバカは私に見せてもくれないのです。

 嫌な予感しかしません。バカな理事長に可愛がられている甥など…。

 そもそもこの理事長は、本当にバカなのです。

 あまりにもバカっぷりを発揮するというならぜひとも理事長職を下りてもらいたいです。

 まったく、決定的なバカな言動をバカがやるならばさっさと理事会に報告しているというのに…。

 「あの子に手を出したら、高原君の事を私は許さない」

 何て言う、釘までされてしまいした。

 それにしても私は別に同性愛には偏見はありませんし、似たような学園に中高と通っていたためバイですが…、可愛いからって惚れるものではないのではないかと思うのです。

 そもそも、この理事長が可愛がっている時点で性格がアレな気がしてならないのです。

 とりあえず、理事長の甥が面倒事を起こさなければいいのですが…と、思っていました。

 しかし、

 「光!!」

 「お、叔父さんいきなり抱きつくなよ!!」

 まさかしょっぱなから気色悪いまでにデレデレとした理事長が甥子さんに抱きつくとは思ってませんでした。

 「光が可愛いからつい…」

 「か、可愛いって何だよ。俺は男だ」

 「でも光は可愛いから心配だ」

 なんでしょう、ころゲロ吐きたくなるような気持ち悪い会話。

 そもそも甥は何故にいかにもなカツラと瓶底眼鏡なんてかけているんでしょう?

 アレを可愛いと言えるなどと目がイっている事間違いなしです。

 やはり、私の上司は頭はいいけど、どこかイっているのでしょう。

 「光、おいで」

 座った理事長が、手招きをすると、甥が理事長の膝の上に乗ります。

 この時点で、何やってんの、この人である。

 普通、16にもなる男を膝の上にのせるのでしょうか。しかもデレデレで、あまあまな表情を浮かべているのがなおさらドン引きです。

 「叔父さん、ひっつくなよ。話せないだろ?」

 「大丈夫、この状況でも話はできるさ。まず、学園の――」

 ……ああ、気持ち悪い。何だか鳥肌が立ってきました。

 私が理事長の無能さに結構常に苛々していて、理事長という存在が嫌いだから此処まで気持ち悪いのかもしれません。

 とはいっても、16にもなって叔父の膝に乗るのに抵抗がない男も男で気持ち悪いです。

 確かにこの学園には可愛らしい男子生徒が恋人といちゃついてる所も見ますが、それは見た目が可愛いし相思相愛っぷりは何だか温かい気持ちになるからいいのです。

 しかし、目の前の光景はなんでしょう。

 ショタコンなおっさんとモジャモジャ毬藻のラブロマンスとでも言うのでしょうか…。

 非常に気持ち悪いです。

 なんでしょう、あのデレデっぷりは。

 なんでしょう、この甘ったるい気持ち悪い声は。

 「ところで、叔父さん、何で俺にこんな変装してこいっていったんだ?」

 「ああ、だって光は可愛いから素顔なんて見せたら狙われちゃうからね。

 可愛い光を誰にも見せたくないんだ。

 それに、光は族をやっていただろう? 敵対チームが此処にいるんだ」

 「か、可愛いなんていうなよ。って、え、いんの?」


 未だに膝の上に甥を乗せたまま甘い笑顔と声を理事長は存分に振りまきます。

 それにしても幾ら可愛くても襲われるって事はないと思いますが…。

 確かにたまにそういう輩は居ますが、美形には親衛隊が出来て襲われないように守ってくれているはずですし…。

 可愛い=襲われる、とでも思っているのでしょうか…?

 やっぱり、理事長はバカなようです。

 それに暴走族だなんて、素行がよい悪いで判断すると、確実に悪いですね。

 この時期に転入してくるだなんてよっぽどの問題児でしょうし…。

 理事長は自分の株をますます落としたいのですかね?

 ただでさえ、職員を見下している節があるから不評が広まっているというのに。

 もちろん、理事長はバカなのでそんな事気付いていませんけれど。

 結論を言うと、転入生は嵐だった。

 生徒会の連中や、一匹狼、爽やかなスポーツマンと名高い生徒、風紀委員長――など親衛隊持ちを次々に落としていっている。

 そもそも気に入った理由がよくわかりません。

 自分に逆らったからとか、怖がらないとか、面白いからとか、見わけてくれるからとか…。

 それって転入生だけじゃない気がしますし…。

 学園は荒れに荒れています。

 私は理事長のバカっぷりにもはや呆れています。

 転入生が起こした問題を権力で解決しようとしているあたり、教職についておきながら何とも言い難い行いでしょうか。

 まぁ、私にとっては嬉しい事ですけれども。

 理事長失脚のために私はせっせと証拠をかき集めております。

 だって、これはチャンスです。

 あの転入生は嵐ですが、チャンスでもあるのです。

 理事長を失脚させるための!

 とはいっても、それよりもしなきゃいけない事があります。

 あの、転入生と美形達による謎の『転入生争奪戦~お姫様の心を手に入れるのは誰だ』の被害者のケアをしたりしなければならないのです。

 あ、ちなみに『転入生争奪戦~お姫様の心を手に入れるのは誰だ』というのは、転入生争奪戦に失笑しか浮かべられない小説家志望の生徒が争奪戦を元に書いた小説の題名です。

 転入生がやってきて、もう一ヶ月でしょうか。

 すっかりもう、転入生争奪戦は学園の見世物のような、別次元で行われている昼ドラを見ているような感覚に生徒はなっていたのです。

 今ではその物語は学園中ではやっています。

 親衛隊と呼ばれていた、転入生に落ちた生徒達に惚れていた面々も、『あんなのに惚れて迫ってるなんて正気じゃない』と半ば呆れ気味の生徒が多いようです。

 もちろん、中には恋愛感情を維持しているものもいますが、徐々に親衛隊にさえも彼らは呆れられているのです。

 生徒会で唯一仕事をしているのは、主席で生徒会補佐入りをした秀才の割と平凡顔な方です。

 一人で抱え込もうとしているのを、転入生がやってきて一週間後に発見し、それからは私や教職員の面々で分担して作業を行い、補佐の生徒の負担を減らしています。

 転入生にまきこまれて初めは、親衛隊に囲まれたり、取り巻きに暴言を吐かれたりうんざりしていたようですが、今は転入生争奪戦は周りの生徒からすれば一種の劇のようなので、その子も間近でバカげた茶番を見ることをすっかり楽しんでおり、転入生の扱い方も大分心得たようです。

 転入生が備品を破壊したり、色々している面に関しては使い物にならなくなった風紀委員長の代りに風紀副委員長が指導をしています。

 もはや、風紀の中には委員長を慕うものは一人もいなくなったそうです。

 そういえば、副委員長さんとはよく遭遇します。

 何ででしょうね?

 「秘書さん」

 あ、考えながら廊下を歩いていたら目の前から副委員長さんが歩いてきました。

 副委員長さんは、平凡よりの美形という、この学園では目立たない方ですが整った顔立ちをしています。

 腕っ節も強いみたいで、風紀委員長に呆れた面々は副委員長さんと仲良くなっているようです。

 「副委員長さん、どうしたんですか?」

 「秘書さんに会いにきただけですよ」

 「そうなんですか。私に何か話でも?」

 「んー、理由なきゃ駄目ですか?」

 「理由もないのに会いに来たんですか? 副委員長さんは忙しいでしょう?

 それに、副委員長さんの名字の『月華』って、あの『華院』家の分家でしょう?当主のパーティーとかで色々忙しいんじゃないですか…」

 華院家と呼ばれる、権力を持つ家。

 その家に近いものは、『華』という字を持つ。

 副委員長さんの月華ツキバナという名字は、その分家の、華院家に近し者の証なのだ。 

 「よく知ってますね、秘書さん」

 「ああ、私の弟が華院さなぎさんと仲が良いみたいで…」

 そう私の弟――現在反抗期まっただ中なのか、不良とつるんでいる弟は華院家の長男と仲が良いのだ。

 「へぇ、さなぎと?」

 「そうなんですよね。私の弟なんか情報屋っぽい事やっているみたいで…それで、知り合ったらしいですよ」

 「へぇ…」

 副委員長さんはそういって、面白そうに笑った。

 そういえば、最近『華』の名をもらえそうなほどの功績を残していた家が、息子の不始末によりもらえなくなったとか弟が面白がって話していた。

 詳しくは知らないが、華院家の次男を怒らせたんだとか…。

 「ところで、副委員長さん、こちらは色々と理事長の不始末を資料にまとめている所ですが…、あなたの方がどうですか?」

 「ああ。あのバカを失脚させるには十分な証拠が手に入って清々してます」

 風紀委員長を、”バカ”と呼んで清々しい笑顔を浮かべる副委員長さん。

 何だかいい性格してます。

 「補佐君の方も生徒会の奴らは要らないと言ってました。

 でも、せっかく本とかにしてるんですから、最後は派手な方がいいですよね。準備は整ってましても」

 「そうですね。思いっきり派手にかまして、学園中の笑いのネタにでもなってもらいましょうか」

 「はい、そのために色々と計画をしましょうか。

 まずは、理事長に関しては理事会をこの学園にお呼びする手はずになっています。

 堂々と転入生がいる前で、「退職を促す宣言」でもしてもらおうと思います。

 そうすれば、きっと転入生はつっかかるでしょうし、学園内でやったら観客達(生徒達)も楽しめるでしょう?」

 理事会の一人はとても気さくな方です。

 カリスマ性を持っているその人は、私の提案を聞いたら意気揚々と頷いてくれました。

 話のわかる、頭のよい方はやはりいいです。

 「それはいいですね。ちなみに生徒会の方が補佐をリコールして転入生を迎え入れようというバカな動きをしているようです」

 「それならこちらもリコールをやり返してやればいいのでは?

 どっちにしろ生徒達は今は生徒会を見世物とでも思っているだけでしょうし。面白いですよね。

 自分たちが笑い者にされてる事にも気付いてないなんて」

 本当、生徒会も風紀委員長も理事長と同じ頭だけはいいバカなんでしょうね。

 そんな連中が学園のトップに立った事自体が間違いだったのでしょう。

 蹴落としてやるのが一番です。

 「それではそれを近いうちにやりましょうか。

 ぜひとも録画とかして上映したいですね。楽しそうです」

 「いいですね。

 きっちり防犯用のカメラに映る場所でやりましょうか。

 寧ろ放送部に影で撮ってもらうとか」

 「そういえば、秘書さん知ってました?

 生徒会と委員長の愚行が映ってる監視カメラの映像を編集してまとめている奴もいるそうですよ?」

 「そうなんですか? ならそれを実家にでも送りつけてやればもっと楽しそうですよね。

 上映会でもして、それに親御さん達も呼びましょうか?」

 「秘書さん、それ、ナイスアイデア」

 「ですよね。では――…」

 そうして、私たちはそんな話に盛り上がるのだった。

 通りかかった補佐君も交じって、その後議論を交わした。

 ――生徒会や風紀委員長、それに私の上司のバカな理事長がリコールされたり退職になったり、あと転入生が追い出されたり色々あるわけである。

 その後新理事長になった新しい理事長(理事会から派遣)が意気揚々として、『転入生争奪戦~お姫様の心を手に入れるのは誰だ』の映像を流すのだった。

 リコールされた生徒会と風紀委員長は絶句である。

 あの表情は見物だった。

 その後は、演劇部が劇としてそれをやったりと、見事にあの出来事はネタとなり果てているのであった。





 end

高原哲也

理事長秘書。バカの下につくのはいやらしい。意気揚々と潰す計画を練る。敬語キャラ。

弟はちなみに何処にも出ていません。ただ情報屋の予定。多分立花とも面識ある。


月華

名前出てきてない。華院家・――こむぎとさなぎの家の分家。親戚で年も近いから仲良しです。ちなみに秘書さんの事は恋愛感情で好きです。

微妙に毒舌です。


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