あいつのために俺ができること。
片思い。
王道に惚れている人に恋している親友な人。
あいつのために俺が出来る事はなんだろうか、と考えてみる。
あいつは今片思いをしている。新入生であり、この学園のもの達の心を射止めている、可愛らしい少年に。
この学園は異常で、同性愛者が溢れていて、幼少な頃から此処に通ってる俺は、ノーマルで通ってるけど、好きな奴がいる。
とはいっても、そんな気持ち叶うわけがないけれど。
だって、あいつは、俺の事を親友としか思ってないから。そんなの、ずっと俺は知ってるんだ。
だから、あいつのために出来る事をなにか考えてみようと思う。
――あいつの親友として、俺があいつのために出来る事を。
「あ、悟先輩、こんにちは」
そういって、話しかけられて、黒い思いが、わきそうになる。
そこにいたのは、斎藤杏。
この学園で、入学したばかりにも関わらず人気を既に持っていて、そうして親衛隊がもう出来ようとしている。
―――あいつの、思い人。
「ああ、こんにちは」
正直いって、俺は、こいつが苦手だ。
なんだろう、純粋すぎて、心が綺麗で、眩しすぎて、苦手だ。
愛されて育った、そんな結晶のような男で、本当に純粋な笑みを浮かべるのだ。
―――その純粋さを見るたびに、黒い感情が湧いてくる、そんな自分に嫌になる。
「珍しいですね、信吾先輩と一緒に居ないなんて」
「あー。あいつなら、教師に呼ばれてな」
あいつ―――信吾と俺はこの学園の幼少部の頃からの付き合いだ。
同性愛にあふれたこの学園で、俺は当たり前のように、あいつを好きになった。
俺はどっちかっていうと、優等生で、信吾は喧嘩とか結構する方で、正反対だけど、それでも俺たちは一緒に育ってきて。
そんな中で、信吾はときたま、学園の生徒と遊ぶように――いわゆるセフレっぽいのも作ってて。
性欲を発散してただけなんだろうけど…。
まぁ、それでも嫉妬はしたし、俺はあいつにとって親友で、セフレより俺を優先してくれてたけど、あいつは俺をそういう対象には一切見てなくて。
それでも、いいかなって思ってた。
あいつに特別がいなければ、嫉妬を我慢しさえすれば、俺はあいつの一番だったから。でも、斉藤が現れた。斉藤が現れて信吾は遊ばなくなった。斉藤だけを見ている。
「そうなんですかー。それにしても悟先輩と信吾先輩って本当に仲良しですよね」
俺はあいつにとって一番の親友でしかない。
―――あいつの今の最優先順位は、目の前に居る後輩、斎藤だ。
純粋な柔らかない表情は確かに可愛いとは思う。
だから誰もが、斎藤を好きになるんだろうとは思う。
でも、やっぱり、俺は苦手だ。
「まぁ、昔からの付き合いだから」
「そうなんですかぁ」
会話を交わしていれば、周りから声が聞こえる。
「木田様と杏君がはなしてる」
「絵になるなぁ…」
「木田様も、杏君の事…」
呟く声にうんざりする。
俺はただ、あいつがこいつと一緒に居たいと望むから、あいつがこいつを本当に好きだっていってたから、だから、冷たくしようと思わないだけなのに。
俺には、一応親衛隊ってものがある。
…なんか外見は結構いいほうらしいので、たまに告白される。もちろん断ってるけど。俺は信吾の事が好きだから。
そして、俺は基本的に信吾以外とは仲良くしてなかったから、なんか変な噂立ててくる奴がいて、困っている。俺は斉藤にほかの連中みたいに恋愛感情なんてないのに。俺が好きなのは信吾なのに。
――俺は、あいつに嫌われたくないんだ。
―――あいつは俺の事好きにはならないけど、それでも、親友としてそばに居たいんだ。
だから、信吾の思い人に厳しい態度なんてできない。
「待たせたな、悟って、杏――っ!!」
教師からの呼びだしから帰ってきた信吾は、斎藤を見ると嬉しそうに頬を緩ます。
信吾はいった。
”杏は純粋で可愛い”って、
”綺麗で本当真っすぐで、あんな奴他に居ない”って、
”俺に真っすぐにぶつかってきてくれてるんだ”って。
考えるだけで胸が痛い。
「信吾先輩、こんにちはー」
「ああ、あのさ、今度――」
俺がもっと純粋で、俺がもっと真っすぐで、もっと無邪気だったら、あいつは、俺を見てくれていただろうか?
――そんな事を考えていても仕方はない。
俺はひねくれてるし、誰からも愛されるなんていう、そんな斎藤みたいな生活していない。
―――優しく笑う信吾を見ながら、俺の心の中で、嫉妬と願望と、信吾に幸せになってほしいという気持ちらが、混ざり合って。
何とも言えない気持ちになって、気分が悪くなってくる。
――ああ、でも俺は、ああやって笑ってる信吾を見るのが好きだ。
本当に愛おしそうに、何処までも幸せそうに、斎藤を見ている信吾の笑みをずっと見て居たいと思う。
だから、俺は―――。
*
「え、協力してくれんの?」
「…ああ」
協力する、と言った。
だって、どっちにしろ俺の気持ちは届かない。それならせめて、応援してやりたいから。
―――信吾に笑っていてほしいから。幸せでいてほしいから。
ドロドロとした感情が湧き出てくる。
でも、
「サンキュー、やっぱり悟はいい奴だ」
なんて俺を信頼仕切った笑顔を向けてきて、暖かい気持ちが溢れ出てくる。
――俺は本当、斉藤なんかどうでもいい。
この学園の奴らがどんだけ、斉藤を愛そうとも俺には関係ない。
「気にすんな、俺らは親友だろ?」
゛恋人゛になんてなれない。
ならばせめて、゛一番の親友゛の座を掴んだままがいい。
「俺が協力してやるんだから、頑張れよ?」
そうして俺は今日も気持ちを押し殺す。
願うのは、信吾の幸せだけだ。
―――まあそんな風に協力したとしても、俺はきっと信吾の事好きなんだろうけど。
end
木田悟
結構クールな人間?
信吾に片思いしてかなり長い人。
普通に親衛隊あって結構もてる
信吾好きだけどノーマルと周りに思われてる
ちなみに基本的に誰にでも愛されてる斉藤は苦手
信吾
杏に惚れてるらしい悟の思い人
悟には親友以上の気持ちはわいていない
斉藤杏
なんかまっすぐで純粋で、学園中を虜にしてきてる一年。
愛されて育った。